43話 救急車に必要な
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相変わらずタイトル迷走中ですみません
救急車形態のシラユリ。
人型時の大きさを他のマシニーズと揃えるためか、かなりかなーり大型だ。
救急車には何度かお世話になっているだけに、未来的なデザインでもここまで大きいと少し救急車に思えなくなってきそうな俺だったりする。
運転席にあるのもやはりハンドルではなく、操縦桿が2本。マシニーズの共通仕様の可能性が高まるな。
「これからこの操縦桿に触りたい。かなり敏感なところらしいから、覚悟ができたら言ってくれ」
『コズミ先生、覚悟はすでにできています』
白い歯車の彫刻が増えた俺の護符からすぐに返事が返ってきた。
アオイとシンクレーンの時の反省から声をかけたのだが。
一応、カウントダウンをかけてからにしよう。
「それではいくぞ。……3、2、1、ゼロ」
『くうぅ』
ほら、そんな声が出るだろ。
だからこれは全員に警告しておいた方がいいな。
俺の精神に入るダメージを少しでも減らすためにも。
「なるほど」
操縦桿から伝わる情報でシラユリ救急車の能力が判明する。
これは予想していなかった。
救急車らしい能力ではあるのだが。
『ど、どうしました?』
「シラユリ、自分の能力はわかるか? 走る以外で」
『……たぶん、シンクレーンのように光と音は出せそうな気がします』
「鋭い。さすが委員長、そのとおりだ。まずはそれから試してみよう。自分でできるか?」
返事と同時に回転灯が光り、サイレン音が鳴り出した。これも光と音を変更できる、と。操作方法、というかその辺りのスイッチ類はシンクレーンと同じだ。スピーカー用のマイクも同じ物がついている。
これ、パトカーなマシニーズがいても同じかな。
パトカーの子、いるかな?
3Bでパトカーロボを造った時はフリートの仲間にアドバイス貰ったな。赤い消防車と白い救急車が合体して巫女ロボになるのだから、白と黒のパトカーがロボになるなら、黒ブルマの体育着しかあるまい、って。
警察関係の服を模したデザインにすることしか頭になかったから、目から鱗だったよ。
そのアドバイスをくれた彼は、ソシャゲに手を出してから公式サーバーにあまり顔を出さなくなってて俺の引退ゲームの時もいなかったんだけど、どうしているだろうか?
基地内の自室にも囲炉裏を設置するのが好きな男だったなあ。彼を懐かしんで囲炉裏を作るのもいいかも……寮は洋館だから囲炉裏よりも暖炉の方が似合うか。
『いかがでしょうか?』
「うん。よく自分だけで出来たものだ。これは次のも期待できるかな」
『まだあるのでしょうか?』
「後方のドアを開けてみてくれ。その中に医療機器がある」
変型機構があるくせに、ちゃんと中の機器も設置されている。
それだけではない。
救急車に必要なものまでちゃんとあるのだ。
『こうでしょうか?』
「そうだ。俺もそっちへ移動する」
車体が大きいだけに運転席から移動するのもちょっと手間だ。途中で変形後のパーツが収まっていたりするしな。
車体後部にあったのは最新の医療機器……というか、未来的な医療機器だった。二つあるベッドなんて片方は液体が満たされた医療カプセルだったりする。
さらに!
「わ、私の内部にこのようなモノがあったなんて」
その声は護符からではなく、俺の目の前からしていた。人間のようなシルエットだがシラユリではない。人型の機械だ。それが三体。
「サポートロイド……いや、ソウルがなさそうだからサポートドールだ。シラユリ、自由に動かせるか?」
「はい。三体同時はちょっと難しそうですけれど」
そう言いながらもその返事は三体同時から返ってきたのだからさすがだ。
「シラユリ、君のこの形態は俺の世界では救急車と言う」
「救急車、ですか?」
「うむ。病人や怪我人の治療や輸送を行う車両だ。そのためには救急隊員が必要。だからサポートドールが設置されているのだろう」
「救急隊員……これも私の一部なのですね」
まさか救急隊員ロボもセットとは思わなかった。やるな、マキにゃん。
形だけじゃなくて機能にもちゃんとコダワリがある。
「俺も世話になることがあるだろうから、その時は頼む」
「は、はい。お任せ下さい」
◇
シラユリ救急車の機能確認後、変形にチャレンジし無事に成功した。
俺の操縦無しでの一人変形はやはり時間がかかるか。変形よりもサポートドールを複数同時操作の方が難しそうなんだがな。
一人につき30分ぐらいは見込んだ方がよさそうだ。今日中に全員変形させたいからどんどん行こうと決め、講習を続ける。
残る3年生のワカナも予想外の姿だったが、家庭的な彼女には似合う……のかな?
操縦席の場所を見つけるのに悩んだ以外はスムーズに進んだ。機能は見たまんまだったのだから。
次は2年生だ。2年生は五人いるが一人はアオイなので、教えるのは四人だ。
アサギリはステルス戦闘機だった。装甲の色は水色っぽい。浅葱色、かな?
眼鏡少女のミレスはやはりSF……でいいのか?
円盤機だった。もちろん飛べた。色はバイオレット。スミレ色だな。
飛行系が続いたので2年生はそういうカテゴリーなのかと思ったら、オトメはダンプカーだった。
引っ越しに活躍したと言っていたが、これならたしかに。ただ、かなり大型のダンプなので荷台に載せるのは大変だったと思うのだが。
色はピンクだ。乙女色?
2年生の残る一人、獣人のミカンヌは狼型だ。色はオレンジ、いや、蜜柑色。
彼女たちの名前と装甲の色には関連があるようだ。マキにゃんめ、名前でマシニーズにするか決めてないだろうな。
俺が教える度に、護符に歯車が増えていく。その色は彼女たちの色と同じだ。
そして、彼女たちの護符には自分の色の歯車と噛み合うように黒い歯車が一つ増えていた。
アドレス登録したってことになるのだろうか。
乗った全員の運転席、操縦席はほとんど同じ仕様だった。
変形できない子もいない。
「やはり、出来損ないは出来損ないではない」
「わかったから、一年生も早くやるのだ!」
「いったん休憩だ。俺がもたない。はやる気持ちはわかるが昼食にしよう」
俺だって残りの子たちがどんなロボになるか、気にならないワケがない。
だが、洋館造りで張り切ったツケが身体に出ている。
操縦桿を握る度にあんな声を聞かされて精神的にも疲れた。ウェットティッシュで拭いてから握るわけにもいかないのが、それに輪をかけている。
「用意はできていますよ」
「ありがとうワカナ」
生徒が一人で練習している間に溶鉱炉を設置したので、それでワカナが昼食の準備をしていてくれたのだ。
「コズミ先生、この竈、火加減が調節しやすくて便利ですよ」
「レンガやインゴットまで作れる優れものだからな」
「そうなんですか。すごいですね」
さすが8組のお母さんだ。この程度では動じない。
怒ると怖いとアオイは言っていたがとてもそうは見えん。
◇
鳥肉入りのスープを堪能した後は、塔がほぼ全壊しながらも奇跡的に使用可能だったトイレを利用する。
瓦礫はだいたい拾い、軽く補強したので崩れる心配はない。
あとでここを拠点として使えるように建築しないとな。
そして1年生の講習である。
「キンちゃんからお願いするのだ!」
「わかった」
「キンちゃんの姿はたぶん一番異様だから困らないでほしいのだ」
「問題ない。俺に任せなさい」
異様ね。そう言われても俺には楽しみでしかない。
マキにゃんのデザインはなかなかに俺好みのものが多いからだ。わくわくわくわくなのである。
キントリヒはいったいどんな……。
「マシンナリィなのだ!」
……ふむ。
なるほどなるほど。そうきたか。
「金字塔ってわりには金色じゃないんだな」
キントリヒの変身したのは金字塔。つまりはピラミッドである。
一番小さな彼女だったのに変身後は他の生徒たちよりも一際巨大な四角錐のその姿。それも俺が名前から予想した金色ではなく、石の色だ。
これまで見たマシニーズが未来的なものばかりだっただけに、その巨石を積み上げただけに見える姿はたしかに異様である。
むう。
困らないと言っておきながらいきなり困った。
これ、どこから乗ればいいんだ?
操縦席はどこなんだか。
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