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37話 あの時のことを説明

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 まだガラスをはめていない窓から覗く空が明るくなってきた。結局、徹夜してしまったか。

 そういや今日から教師やらなきゃいけないのだった。

 少しだけでも寝ておいた方がいいかな?

 アオイがきてからの数日、朝起きて夜寝るっていうわりと健康的な生活してたから、寝不足がこたえる。そのちょい前までは不規則なゲーム三昧だったのに。


「ふぁぁぁ。……朝帰りはまずくないのか?」


 すやすやと眠るアオイとシルヴィア。

 俺はずっと洋館建築に勤しんでいたのでやましいことはなにもないのだが。

 彼女たちは遅くまで俺の作業を見ていて、気づいたら寝ていた。

 シルヴィアは疲れているようだし、深夜に出歩かせるのも危険かと判断。クラフトしたベッドに布団をしいてそこに寝かせたのだ。


「今からなら2時間くらいは寝れるか?」


 目覚まし時計をセットして俺も横になる。

 石造りの床がひんやりして気持ちがいいが、これだと風邪を引きそうだな。俺もベッドを使おう。布団は……俺の家まで取りに行くのも面倒だからなしでいいか。

 アイテムボックスから出したベッドの上に移動したあたりで俺は力尽きた。



 ◇



 ジリリリリリリリリという強烈な音で目が覚める。

 あれ? いつもの位置に目覚まし時計がない。

 ……ん、ここか。


 ふぁ。そうか、朝か。

 さっき造りかけの洋館で寝たんだった。

 3Bの拠点建築でも復活(リスポーン)地点となるベッドを真っ先に設置したなあ。

 慣れてくると大型トレーラーのコンテナハウスにベッドがあるから、って油断するようになるのだが。


「……朝?」


「シルヴィアさんも起きたか」


「え? わ、私?」


「よく眠れたようだね。洗面所はできてるから、出発する前に顔を洗っていくといい」


 蛇口がいくつもある横長の洗面所も造った。大きな鏡もつけたので、朝に混雑することもあるまい。


「お、おはようございます!」


「おはよう」


 アオイはまだ寝ている。

 この子、意外と朝弱いんだよね。安全じゃないところでは眠りが浅いが、俺のそばだと安心できるって言ってたな。


「アオイ、そろそろ起きなさい。登校しないといけないんだろ」


「ん……」


 あれ?

 この反応なら眠そうにしながらも起きてくるはずなのに。


「おはよう。起きないと遅刻するぞ」


「……コズミ。昨日大事なことをみんなから聞いた」


「大事なこと? 朝ご飯か? 悪いが今からだと作っている時間がなさそうなんだが」


 栄養ドリンクがたしか残っていたから、それで済ますつもりなのだが。

 アオイとシルヴィアさんにはカップ麺で……。


「がーん。……違う。ごはんはショックだけどもっと大事なこと」


 横になって目を瞑ったまま、アオイは続ける。

 彼女が食事よりも重要視することとは、いったいなんだ?

 あ、マシニーズ関連のことかもしれない。


「おはようのキスをしてくれないと私はおきない」


「は?」


 なんで言ったあとにタコ口になりますかね?

 8組の連中、なにを吹き込んでくれるんだ。


「しないぞ。こっちじゃそういうものかもしれないが、俺の中では新婚さんがやることだから」


「しないの?」


「教師と生徒でそんなことするワケないだろ。いい加減に起きなさい」


「私、だまされた? ……おはよう、コズミ、シルヴィア様」


 こっちだと親子でもするのかな?

 日本人には恥ずかしい風習だ。それに、洗顔もしてない顔にキスするなどあり得ないだろう。


「からかわれたんだろ。洗面所はこっちだ。使い方は俺の家と一緒。今はまだお湯は出ないが」


「あとで出るようになるの?」


「もちろん」


 3Bの湯沸かし器は強力だからな。元々、大浴場に使うためのものだ。銭湯を造ったこともある。

 バニラだと裸にはなれない仕様だから、アンダーウェアで入浴することになるのが残念だったが。


 洗面所では、大きな鏡にシルヴィアまでもが驚いていた。


「こんな大きな鏡があるなんて」


「さすがコズミ。朝から驚かせてくれる」


「そんなに驚くことか? 設置したときは暗かったからちょっと怖かったけど、今は明るいから怖くないだろ」


 暗闇の鏡はなんか怖い。

 自分の姿だけが映らなくても、変なものが映っても、どっちも怖い。俺、両方経験あったりするんだよ。


「霊が映る鏡なのですか?」


「俺がクラフトした普通の鏡だから。こっちにはそんなのがあるのか?」


「普通の鏡はこんなに大きくない」


 むう。ゲームだと大きな鏡ってわりとよく出てきた気がするが、技術的に大変なのか?

 白雪姫の鏡は検索機能つきで便利だよな。あんなマジックアイテムもあったりして。


「2階の個人部屋に姿見をつける予定だが普通じゃないのか?」


「高級品」


 勇者と教皇の二人が頷いた。

 そうか、高級品か。……特に問題はなさそうだな。壁に固定するから盗むことなどできないだろう。

 あとはベッドとクローゼットを設置する予定だ。女の子の部屋だからな。

 他の家具は生徒たちと相談してクラフトしたい。


「今日中になんとか完成まで持っていきたいが、学校に行かないとな」


「私はそろそろ失礼しますね。コズミ様、エリクサーが入り次第、こちらへ持ってきます。アオイ様、試験、がんばって下さい。お二方の幸運を女神様に祈りましょう。それでは」


 身だしなみを整えたシルヴィアは深く一礼して去っていった。

 ううむ。ここで変身していかないのか。

 あのSF機関車どう走るか見たかったのだが。



 ◇ ◇



 アオイと別れ、昨日の学園長室に向かう。

 無駄にでかい学園だ。GPSもないこの世界、3Bのマップ能力がなければ俺は途方にくれていただろう。ちゃんとこの世界にも対応しているようだ。

 まだ白い部分が多いが、行った場所はちゃんと表示される。マップ様々である。


 副学園長に会い、学園長が正式に俺を教師として認めたと報告を受けた。教師に必要な資格とかはいらないのだろうか?


「コズミ君、あの子たちを頼んだぞ」


「できる範囲で頑張るよ。頼んでいた教科書と制服は?」


「すまん。どちらもすぐには用意できなかった。近いうちに必ず渡そう」


 怪しい。予備くらいあってもよさそうなものだが。


「3日だ。3日以内に用意してくれ。もしそれができなければその代金だけくれ。こっちでなんとかする」


 本当なら他の生徒たちと同じ物を使わせてあげたい。

 だが手に入らないとなれば仕方がない。

 教科書は他の生徒が使っている物をスキャナーで取り込んで印刷すればいいだろう。

 制服はクラフトするか。


 雇用関係上、副学園長は敬語を使った方がいい相手なのだが昨日の流れでそのままの口調になってしまった。

 徹夜で判断力が低下しているな。

 副学園長も気にした様子はないが、そのうち直した方がいいだろう。


 他の科の教師に案内されて8組の教室へ移動する。

 マシニーズ科の教師はドメーロ派ばかりで、俺に協力するつもりは一切ないようだ。引き継ぎなんて考えてないのかね。


「ここが機神巫女(マシニーズ)科8組の教室です」


「ありがとう。助かった」


「いえ。それでは」


 教室の中までは入ってくれないらしい。

 むう。いきなり一人でやらなきゃいけないのか。緊張する。

 まずはドアを確認。トラップは仕掛けられてないな。


 深呼吸の後、教室に入る。

 うわ、見てる見てる。昨日も思ったがみんな美少女だ。まるでアイドルグループじゃないか。

 そんなの、俺は見られる方じゃなくて見る方だろうに。


 教壇に立つ。まだ注目されている。緊張が高まる一方だ。

 あれ?

 起立、礼ってないの委員長さん?


 ……。

 数秒待ったがないようだ。

 ならば自己紹介をしよう。


「コズミだ。昨日も会ったと思うが、アオイに連れられてこの世界に来たばかりだ。こっちのことは全然わからないんでよろしく頼む」


 軽く頭を下げて続ける。


「アオイから聞いているかもしれないが、俺は身体が弱い。それで迷惑をかけるかもしれない」


 せめてこの子たちが卒業するまでは生きていたいものだ。

 寮が完成したらエリクサーのレシピを調べよう。


「他に質問は?」


 なければ生徒の方を自己紹介を、と思ったのだが生徒の手があがってしまった。


「はい。君は?」


「アサギリ。2年生。コズミ先生は強いのだろうか?」


「弱い。スキルはあるが場数を踏んでいないからな。他には?」


 まだあるのか。

 名前と学年を聞きながら質問に適当に答えていく。

 お、〈教師〉スキルが解放(アンロック)された。レベルを上げれば少しは楽になるだろうと信じたい。


「……を聞かせてほしい」


 ん。スキルレベルを上げていたら聞き逃した。

 だが、聞いていなかったとは言えん。どうする?


「それはアオイに説明してもらおう。できるか?」


 これならアオイが説明できることなら任せればいいし、説明できないようならもう一度その質問をアオイに聞かせるという体でできる。

 なんだ、眠いけど判断力は低下していないじゃないか。


「まかせてコズミ!」


 うむ。まかせるぞアオイ。


「初めての時のことを聞きたいのなら教える。まずコズミが私にのって」


 ああ、アオイが俺の前で初めてマシンナリィした時のことか。

 そんなことを聞くなんて、もう8組の生徒たちには変形できることを教えたのかもしれないな。


「コズミが私の中に入った」


 あの時は夢中だった。足場をクラフトして飛行形態のシャイニーブルーに乗って操縦席にもぐり込んだんだ。

 

「私は怖くて」


 アオイは自分が出来損ないで戦えないと思い込んでいて、彼女にしては珍しく戦う前から諦めていた。


「ちょっと痛くて」


 操縦桿を強く握った時かな?

 やっぱり痛かったのか。ごめんな。


「でもコズミはやさしくしてくれて」


 やさしくできただろうか?

 俺も戦闘機の操縦なんて初めてだったのだから。

 ゲームでは慣れていたが。


「私、飛んじゃって」


 戦闘機が飛ぶのは当たり前じゃないか。

 ……本当に飛んでよかった。


「ビュッて熱いのが出た」


 ビームは撃つ方も熱いものなのか。

 火傷なんてしてないだろうな?


「私、頭が真っ白になっちゃって」


 初めてのビームにアオイも混乱していたもんな。


「気がついたら終わってた」


 ビーム一発で敵を撃墜、戦闘終了はあっけなさ過ぎたが、シャイニーブルーでの戦闘はそんなのばっかりだ。

 最強(さいつよ)なのである。


 うん。アオイらしい説明だったけどビームなんて言ってもまだわからないだろうし、こんなものでいいだろう。

 出来損ないなどではなく、ちゃんと戦えるってわかってくれたに違いない。


 ふぁぁぁ……眠い。

 残りの質問はアオイに任せたい。



R18? なんのことですかね?

……まずかったらすぐに修正します(弱気)


読んでいただきありがとうございます

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