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36話 洋館建築中

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 なんとか間に合った。

 クリエイトハイになっていて気づくのが遅れた。

 シラユリの見送りで集中が切れなかったらギリギリまで便意を無視してトイレの仮設が間に合わなかったところだ。


 日も落ちてきたことだし、作業には気をつけないといけないいけない。

 地下室の大きさは取りあえずこれぐらいでいいか。あとでも大きくできる。今はまず外側だけでも形を作らないと今日は寝れない。


 表札を着ければ俺の家になるとのことなので、それが本当なら適当に表札張って俺の家で寝ることはできるがそれはできない。俺のクラフト魂が満足しないからだ。

 目標は洋館の()()ができるまで。それまでは寝ない。というか気になって俺が眠れない。

 建築やロボ製作は時間泥棒だからな。今日中に終わらなくても仕方がないだろう。


 洋館だから地上階は2階建てにするとして、問題は洋館というとレンガのイメージがあることだ。

 レンガはまだクラフトしてないんだよなあ。

 3Bのレンガは溶鉱炉で粘土を焼くと作ることができる。もはや溶鉱炉ではないという気もしないでもない。ピザまで焼くことができるし。

 そのうち日本語版のフォージの名前が変わるかもしれん。


 溶鉱炉をクラフトしてもいいが、MOD大量導入の激ユル設定でも、洋館を造るとなれば必要な量のレンガができるまでには時間がかかる。

 ここは石造りでいくことにしよう。レンガよりも高級感があるかもである。

 石はチュートリアル世界で各種石材をゲットしてあるので足りないということはない。〈分解〉してあった石系の素材粉を〈合成〉して石床や石壁、石柱に石天井等のパーツをクラフトしていく。


 こんなもんか。

 さっそく石床を地下室の天井の上に並べる。3B標準のサイズでクラフトしたパーツなので、壁を設置する時もピッタリと組み合う。

 注意するのは壁の裏表だ。石壁は裏表がわかりにくいが、微妙に違うのできっちり揃えていないといけない。


 出入り口は正面に大きな玄関ドアを設置。裏口はこの辺に、と。

 正面玄関の先は吹き抜けにして、やはりオーソドックスに大きな階段が必要だろう。手すりは滑り台ができるくらい頑丈にしておくか。


 個人の部屋は2階に造るとして、大きな部屋を1階に造る。

 キッチンと食堂、浴場に脱衣所、図書室と学習室あたりか。工作室や裁縫部屋(ソーイングルーム)もほしい。

 来客用に応接間も造ろう。

 スプリンクラーも各所に設置しておかなければ。洋館といったら火事はつきものだからな。

 あとは……トイレも忘れちゃいけない。トイレは1階だけじゃなくて2階にも用意しよう。掃除が大変になるが、人数が多いのだから文句は出るまい。


 水周りの配管を考えながら設置。

 井戸はこっちに設置したから……3Bの井戸はパイプを繋げると、ポンプもないのに水を自動で汲み上げてくれる謎仕様なのだが、さっきの仮設トイレでもちゃんと水が流れたのでこちらでも同じようだ。

 排水は井戸とは反対にパイプを回して……。


「コズミー!」


 外から声が聞こえてきたので玄関から外に出ると、アオイと教皇が待っていた。

 もう真っ暗だけど二人で来たのだろうか。


「シルヴィア様がコズミに挨拶したいって言うから送ってきた。それにコズミ、ごはん食べにこないから心配になった」


「ああ、そういや飯食ってなかった」


 言われてみれば腹が減ってる気がしないでもない。

 だが、衣食住のまず住をなんとかしないと食の方に取りかかれん。

 衣、8組生徒たちの制服は副学園長がなんとかしてくれることに期待だ。


「コズミ様、私は明日の朝早く女神教本部へと帰ります」


「大丈夫か? 本部は遠いんだろ。疲れは取れたのか?」


「ありがとうございます。8組の生徒たちに元気をもらいましたので大丈夫です」


 教皇は8組の寮で夕食をとったようだ。

 彼女も出来損ないとのことだから、積もる話もあったのかもしれない。


「はいこれ、コズミの分!」


 アオイが手に持っていた串を俺に渡してくれる。

 あの鳥肉を串焼きにしたのか。


「私が焼いた!」


 ふむ。焼き鳥というには大きな切り方の肉だ。

 だが簡易鑑定では生焼けという表示にはなっていない。表面がかなり焦げているが、生よりマシだろう。

 もう冷めているけど、かすかに漂う香りが忘れていた食欲を思い出させる。


「どれ、いただきます……うん。美味い」


 塩だけの味付けのようだが、焦げの香ばしさも悪くない。

 なにより、以前の腕を知っているだけにちょっと感動してしまう。


「料理スキルがマイナスじゃなければこうなの!」


「そうですね。私もいただいたのですか本当に美味しかったですよ」


「えっへん」 


 マイナスだったアオイの〈料理〉スキルもスキルポイントを消費することでマイナスがなくなりメシマズ属性が消えたので、料理を自慢したくてたまらないのだろうな。

 だからさっき、大目に鳥肉を欲しがったのか。





「ごちそうさま。美味かった。これでまたがんばれる」


「ここなんにもなかったのに、もうこんなにできているなんてコズミはスゴイ」


「こっちこそが俺の得意分野だからな。何度も言うが、身体が弱いから戦闘は向いていない」


 死ぬまでに自鯖に基地群を造りたいけど、この寮も俺が生きた証として残ると思えば気合いも入るというものだ。


「コズミ様、女神様からコズミ様に万能の霊薬(エリクサー)を渡してくれとの神託もあったのです。ですが申し訳ありません。現在本部にエリクサーの在庫がなく……エリクサーの補充を急いでいます」


「そうか……」


「エリクサーがない場合はこれを渡すように、と」


 教皇から一本の巻物(スクロール)を受け取る。

 古そうだが高級感のある表装だ。


◎◎◎◎◎◎

エリクサーのレシピブック

◎◎◎◎◎◎


「おお! これでエリクサーがクラフトできるようになる!」


 マキにゃんも約束を守ろうとしてくれたか。

 エリクサーそのものがなかったのは残念だが、クラフトレシピを入手できた方が嬉しいかもしれない。

 材料さえあれば何個もエリクサーをクラフトできるようになるからだ。たった一つだけよりありがたいだろう。


「ありがとう教皇」


「コズミ様、お礼は女神様に。それと私のことはシルヴィアとお呼びください」


「わかったよ、シルヴィアさん」


 役職で呼ぶのは失礼だもんな。俺だってスウィートハートと呼ばれるのは嫌だ。役職関係なしに恥ずかしいのもあるが。


「そういえばシルヴィアさんはマシニーズとなって走ってきたって言ってたが、どんな姿なんだ?」


「出来損ないの私の姿が気になるのですか?」


「興味はある。俺は建築だけじゃなくて、大きな機械を造るのも大好きだからな」


 長距離を高速で走ってきたということは車か、それとも動物型だろうか?

 神託によって選ばれた教皇ということは女神のお気に入りなのだから、いったいどんな形態なのか興味深い。


「わかりました。……変な形なので笑ったり軽蔑しないで下さいね」


「もちろんだ!」


「少し離れて下さい。……はい。い、いきますよ! ……マシンナリィ」


 シルヴィアが変身の小声でかけ声をかえると、その姿は一瞬で変わった。

 やはり物足りないな。バンク変身がほしい。

 機神の護符(アミュレット)からシルヴィアの緊張した声が聞こえる。


『ど、どうでしょうか?』


「なるほど。機関車か! カッコいいじゃないか!」


 そこにあったのは大きな機関車……どこか未来感の漂うSF機関車だ。銀色の装甲がランタンの光を反射して輝いている。


『え? ……この形をご存じなのですか?』


「もちろん! コズミは物知り」


 なぜかアオイがドヤ顔で胸を張った。

 8組の子たちに俺をどう紹介しているか不安だ。


 やはり変形しそうなデザインでどう変形するかを見極めようとしたら、シルヴィアが変身を解除してしまった。


「私のあの姿にも意味があったのですね」


「あれは多くの人を遠いところへまで運ぶ乗り物の姿だ。本来なら客車を何両も引っ張るほどの力強さを持っている」


 客車はないのか?

 わかっているマキにゃんならそんなことはあるまい。


「コズミ様……ありがとうございます」


 げっ。シルヴィアが泣いてしまった。

 嬉し泣きでいいんだよな?

 それほどまでに変身時の姿を意味のない形だと思い込んでいたのだろうか。

 ど、どうすれば……?


 結局どうしていいかわからず、俺はアイテムボックスから出したハンカチを渡すことしかできなかった。

 無言でだ。なにか気のきいたことでも言えればカッコよいのにな。


「コズミは出来損ないを変えてくれる。シルヴィア様、課題の試験の時にもきてほしい。みんなが変わるのを見てもらいたい」


「はい。このシルヴィア、コズミ様に会いに絶対に参上いたします」


 いや、俺じゃなくて8組の生徒を見てほしいのだが。



読んでいただきありがとうございます

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