35話 閑話・3B実況動画
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今回は閑話です
――とある動画サイトにて一つの動画がクリックされた。
不思議な文字で書かれているそのタイトルを日本語にすると『3B世界を魔神と神が実況プレイ。PART……』となる。
動画が開始されると画面には『BUILDING BASE BATTLERS』の文字が大きく輝いている。通称3Bと呼ばれるゲームのスタート画面だ。
その横にデフォルメされた少女が二人、画面の左右に現れて、ややゆっくりとした人工音声を発した。同時に色違いの台詞が画面に文字でも表示される。
声と文字を日本語訳するとこんな感じだろうか。
『どーも、魔神サったんである』
『神のゴっさんだ』
『今回も3Bをやっていくのである』
『しかと見ていくがよかろう』
画面がスタート画面から切り替わり、サったんのキャラが舵輪を握る姿が正面から映し出される。右側の少女のデフォルメを元に戻したらこんな姿になりそうな美少女キャラだった。
『今日はワシら神魔の校しゃが誇る機動要塞の一つ、スピードカノンからお送りするぞ』
『アスピドケロンなのである。動画では初めて紹介するのであるな。全体像を見せるのである』
海面付近を悠々と泳ぐ巨大な海亀が現れた。その甲羅には戦艦のような砲塔や艦橋が設置されている。
『アスピドケロンはロっキーがテイムしたカメ怪獣を機動要塞化したものなのである』
『テイムした時よりも育ってはるかに大きくなっている。ここまで大きくなるとは思ってなかった』
『コズミんはそれを見越して建設していたのである。さすがなのである』
『そのコズミんについてだが、非常に残念なことに公式サーバーを引退した。この動画はその時のものになる』
左右の少女を除いてセピア加工された画面には学ランミイラが映し出されていく。
作業機械の前でなにか作っていたり、ロボを修理したり、他のキャラとビールを飲んでいたりする。
『我らがコズミんの引退ゲームなので盛大に送迎会でもやろうとしていたのに、ジャスティストルーパーズとかいう不届き者が喧嘩を売ってきたので懲らしめるのである』
『どうやら海外サーバーから日本サーバーに流れてきた大手のフリートらしいが、身の程知らずも甚だしい。これでもかというほど思い知らせるぞ!』
画面左右の少女二人が怒り顔からニヤリと不敵に笑って、セピア色の画面が元に戻った。
『ワガハイらの目標はやつらの拠点の一つ、双子ビル。あいつらの馬鹿の一つ覚えの豆腐ビル基地が二つ並んだとこである』
『よし。どっちが速く壊せるか競争だ!』
『ならばロボ戦であるな。発進準備なのである!』
一体のロボが画面に映し出される。太く長い多目的ランチャーの両腕と何本もの巨砲を背負う異様な姿のロボであった。それがぐるっと一周、ターンテーブルに載せたように回転表示される。
『でんデデデデデデンでん! でんデデデデデデンでんでん! デデンデデンでんか!!』
いきなり歌い出すサったん。
それは人工音声でなくても、調子っぱずれになるであろう歌らしきものだった。
『なんだそれは?』
『ワガハイの愛機、殿下の砲塔のテーマソングなのである。でんデデンでんか!』
『発進BGMと処刑BGMは大事だとコズミんも言ってたけど自分で歌うのか……』
続いて別のロボが画面に表示された。頭部、両肩、両腕、両膝に大きなドリルが装備された機体だ。やはり回転表示される。
『我が無敵の最強ロボ、カイゼルドリルキングⅢ世をとくと見よ!』
『まるで小学生のようなネーミングなのである』
『ネーミングセンスに関してはお互い様!』
画面が左右に二分割されて、殿下の砲塔、カイゼルドリルキングⅢ世がそれぞれ正面から配置された。
『いざ、出陣である!』
『発進!』
左右に並んだ射出器らしき台から二体のロボが双子ビルに向けて同時発射された。途中、バリアに阻まれるが殿下の砲塔は砲撃で、カイゼルドリルキングⅢ世は頭のドリルであっさりとこれを突破する。
『戦闘はあまりにも作業だったのでここでコメント返しを行うのである』
破壊されていく防衛側のロボットや双子ビルを背景に前回の動画へと送られたコメントへの返事が始まる。
◇ ◇
『以上でコメント返し終了なのである』
『コメントありがとう』
更地となりロボットの残骸やアイテムが散らばる双子ビル跡地に二体のロボが立っていた。
もちろん、殿下の砲塔とカイゼルドリルキングⅢ世だ。特に目立った損傷はない。
『何度見直してもビル消滅はほぼ同時か』
『だが敵ロボの殲滅数はワガハイの方が圧倒的に多いのである。やはり砲撃戦仕様こそが最強のロボなのである』
『雑魚の数を自慢されてものう。1機しか出てこなかったギガンタスをしとめたのはこのドリルだ。ドリルこそ最強にして至高!』
『あの程度の木偶を倒したぐらいででかい顔をするなである!』
一触即発の雰囲気にピロンと効果音。
画面右のサッたんがスマホを確認する。
『コズミんに決闘を申しこんだ若造がいるのである』
『あれって幸運の、のお気に入りだよな?』
『あの後頭部ハゲ女はワガハイたちの3Bを児戯だと軽視していたが、そのお気に入りはコズミんに手も足も出なかったのである。ザマミロなのである。しかもどうやらロボ子にお気に入りを寝取られそうなのである』
『いい気味だ。我らのナワバリを荒らすとどうなるか思い知ったであろうよ』
お腹に手を当て大きな口を開けて笑う画面左右の少女たち。
二人ともとてもいい笑顔だ。
『それよりもコズミんの方が心配なのである。引退の理由は余命宣告を受けたとか』
『うむ。だがワシらの見立てではもっと命数があったはず』
『誰かがチョッカイをかけたのであろう』
『ワシらの愛し子にか?』
画面には大きなハートマークが描かれ、その中にデフォルメされた学ラン眼鏡ミイラの姿。
『だからこそであろうな』
『赦せん!』
『全くなのである』
二人のデフォルメ少女のこめかみに浮かぶ大きな♯マーク。
グラフィックが瞬時に切り替わり、少女たちの手には武器が握られていた。右の少女は両手にバズーカ砲を、左の少女は大きなドリル槍を掲げている。
『話は変わるがコズミんが形見分けにとくれたロボ、もちろんいい出来なのである。神級と言っても控えめに思えるレベルなのである』
『悔しいが我がカイゼルドリルキングⅢ世以上にドリル力がギュンギュン滾っておる……』
『ワガハイの殿下の砲塔よりもDPS(秒間ダメージ)が遥かに上そうなのである……』
がっくりと膝をついて項垂れる二体のロボット。その背後にはシルエットのみで別に二体のロボットが表示されていた。
『さらに気になるのは表示されている特殊能力にリンクがあることである』
『我のにもあったぞ』
『たぶんこの二体は合体するのであろう』
シルエットの二体が重なって大きなクエスチョンマークとなった。
『サったんと合体!?』
『うむ。他のフリートメンバーの形見分けのロボも見せてもらったがリンクがセットされていたのはワガハイのとゴっさんのだけだ』
画面にはまた数体、ロボットのシルエットが追加された。神魔の校しゃフリートのメンバーの機体のようだ。それぞれの頭上に『オーどん機』や『ロっキー機』等と持ち主が表示されている。
『むう。気に入らんが気にはなる』
『全くなのである』
『そろそろ時間か。それでは今回はこの辺で』
『コズミんのその後はまた動画で説明する予定である。期待して待つのである』
少女以外の画面が真っ黒になって、『またね』と少女二人が手を振った。
『ご視聴ありがとうございました
チャンネル登録をおねがいします』
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サったんのテーマソングは適当に作ったので元ネタはありません
それでももし似すぎている曲があるとの指摘があればすぐに変更します




