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34話 建築開始

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 担任になるというのに生徒との距離があるのは避けたい。

 なんとかしないと。

 ……これが8組の生徒たちか。

 たしかに粗末な制服を着ているけど全員が美少女なのだが。

 なに? マシニーズになるのは顔面偏差値も影響してくるのか?


 アオイで美少女に慣れたと思ったが、これは緊張するな。

 どうする。俺は怒ってないって説明を……余計に怪しいな。この緊張した状態で「怒ってない」なんて言っても顔がひきつる自信がありありありだ。

 うーむ。


「アオイは悪くなかった。むしろよかった」


 これだ。褒めておけば怒っているとは思うまい!


「よ、よかった?」


 胸部装甲の見事な美少女が反応してくれた。

 たぶんアオイの言っていた8組のリーダーだろう。

 顔に大きな傷跡があるが彼女の美しさを損なうものではなく、凜々しさを増しているアクセントでしかない。


「うん。アオイは凄かった」


「本当、コズミ?」


「ああ」


 どだどーだ。これだけ怒ってないアピールをすれば……。

 あれ?

 さらに距離を取られたような?

 アオイとシラユリ以外の顔が赤いし、どうなっている?


 いや、アオイの顔までが赤くなって……泣いている?


「ど、どうした?」


「コズミがやっと呼び捨てにしてくれたから。子供扱いじゃなくなったのがうれしい」


「俺の生徒になるみたいだからな。アオイ君の方がよかったか?」


「ううん。アオイで!」


 まったく。そんなことで泣くなよ。

 女生徒たち、俺が怒ったなんて、思ってないよな?

 ため息が出そうなのを堪えてアオイの頭をなでる。アオイはこれがお気に入りみたいだからな。泣き止んでくれるといいのだが。


「や、やっぱり」


「まさかアオイに先をこされるなんて」


「不潔っす」


 ん?

 いったいどうなっているんだ。距離はおかれているが視線を凄い感じる。


機神巫女(マシニーズ)とパートナーがそうなるのは仕方ねえけど、他のやつらには手え出すなよ!」


「大丈夫。生徒に手を出すような淫行教師にはなるつもりはない」


 8組リーダーの注意に俺が答えたら、なでられていたアオイが俺から離れた。


「出さないの?」


「当たり前だろ」


 教師になると決めた以上……流されて決めたけど決めた以上、ニュース沙汰になるような真似はできん。

 それにそんな身体に悪いことができるか。俺は身体が弱いのだ。



 ◇



 とにかく建築予定地を決めたいからとアオイたちと別れて場所を探す。シラユリだけが、建てるのを避けてほしい畑の場所を教えるためについてきてくれた。


「なんだったんだ、一体」


「みんなアオイが戻ってきてはしゃいでいるのです」


「そんな感じには見えなかったが……いいか。自己紹介は明日で」


 そんなことならあの子たちが落ち着いてからにすればいい。

 今は建築に集中しよう。

 この辺は植物すらあまりない荒れ地だな。


「ここは大丈夫か? さっきの寮からちょっと離れちゃったが」


「ここですか? 大丈夫ですけど本当にコズミ先生が建てるのですか?」


「そうだ。俺、戦うよりもそっちの方が専門だからな。こっちは地震とか多いのか?」


「いいえ、地震はあまりありません」


 ふむ。ならば基礎は普通の土台で……いや、巨大ロボが近くで歩いたら振動も大きいだろうから、耐震土台にしておこう。

 あとは水周りだが……〈探知〉で調べたらすぐに井戸の設置ポイントが見つかった。残念ながら温泉はなかったが。


「さっき見た川はあっちか。排水や発電を考えるとこれぐらいの距離がいいかな?」


「発電?」


「ああ。こっちじゃまだ電気は使ってないんだっけ?」


 ロボがいるのに中世っぽいのか。

 魔法があるから、科学は発展してないのかもな。照明だって魔法でなんとかなるのだし。

 マジックアイテムの照明があるのなら、それを使うのも面白そうだ。3Bだとテイムした小型発光生物の巣箱照明がよかった。光は弱いけど配線しないでよかったからな。


「ここにしよう」


 選んだのは小高い丘になってる場所だ。

 うむ。樹木が寂しいのがちょっと気になるが、それはあとで植林してもいい。

 ここなら洋館風の建物がよく似合いそうである。ここにくるまでに見た建物とも違和感があまりないだろう。


「方角は……この世界で太陽が昇るのと沈む方角を教えてくれ」


「太陽は東から昇って西に沈みます。……コズミ先生は本当に異世界からいらっしゃったのですね」


「ああ。こっちでは世間知らずだからいろいろと教えてくれると助かる」


 この世界でも太陽の動きは同じか。

 だとするとやはり南向きの方がいいよな。

 3Bではオブジェクトの配置がかなり自由にできて、角度も細かく調整できる。その分、思ったとおりにうまくピッタリに配置するのは難しい。

 だから最初の設置が重要なのだ。


「まずは基礎を作るか」


「え、もうですか? 設計図などは」


「ここにあるから大丈夫」


 こめかみを指先でツンツンしてみせてから、アイテムボックスからマスクと鋼ピッケルを出して装備する。

 クラフトしておいた安全ヘルメットも着けておくか。気分出るし。


「案内ありがとうなシラユリ。あとは俺だけでできるから」


「お、お一人で?」


「もちろん。あ、寮まで送っていった方がいいか」


「あの、少し見学してもよろしいでしょうか?」


 うん、建築に興味があるのかな?

 もう1セット、マスクと安全ヘルメットを出して。


「いいけど、俺のは参考にならないぞ。見るならこれを着けて、もう少し離れてくれ」


「は、はい」 


 制服にマスクとヘルム装備の美少女って……。

 シラユリが離れたのを確認してから、狙った地面に鋼ピッケルを振り下ろす。その一撃で、空間切削の大きさと同じサイズに地面が消えた。破片が飛び散ることもない。行き先はもちろん俺のアイテムボックスだ。


◎◎◎◎◎◎

土×8を入手しました

◎◎◎◎◎◎


「ええ!?」


「どうしたシラユリ? あ、地鎮祭とかした方がよかったのか?」


 シラユリは聖女だって話だからなにか必要な手順があったのかも。


「地鎮祭?」


「家を建てる前の宗教的儀式なんだけど……しないでよさそうだな」


「はい。でも、無事に建つように女神様にお祈りしておきますね」


 無事に建つに決まっているのだが、そう言うのも大人げない。


「頼む。マキにゃんによろしく言っておいてくれ」


「マキにゃん?」


「俺のとこじゃそう呼ぶんだ」


「そうなのですか」


 なんか疑っているような目だ。

 だが嘘ではない。自分でそう名乗っているのだから。


 視線を無視して地面を掘り続ける。

 自分でやるのは疲れるが、空間切削より速く済むし手に入るアイテムの量も多い。……今回は土なのでそれほど重要ではないが。

 明日は筋肉痛だろうがそんなことなど気にならない。


 とにかく建築できるのが嬉しい俺はテンションが上がりまくる。

 もう地面の整地が終わってしまった。地下室も造るつもりで少し深く掘り下げたから30分ぐらいかな?

 ちゃんと考えて掘っているので、足場がなくて上に戻れなくなるということもない。

 ちょっと暗いので、ヘルメットをライト付きのと交換。クラフトしておいたランタンを置いて作業を続ける。


 次は土台だ。耐震土台を並べるように設置していく。ここは地面の下で隠れるから、金属製の頑丈なやつにしておこう。

 ふんふんふん~♪

 3BのBGMが鼻歌で出てきてしまうな。


「こんなもんか」


 きちんと面一(つらいち)で出来たので気持ちがいい。

 多少段差ができても上の構造物には影響は出ないのだが、こういう見えないところにも気を使わんとな。

 それから土台の上に地下室の壁を設置していく。釘などは必要ない。ただ、クラフトした壁材を置くだけだ。それだけでがっちりと土台に固定されてしまう。

 オブジェクトの上や隣に配置したオブジェクトが結合するという、サンドボックスゲームでよくある仕様だ。これのおかげで、かなり建築時間は短縮される。


 リアルなのでゲームとは違うかもしれないと一応、壁を押したり揺らしたりしてみたがしっかりと固定されていた。これならば問題あるまい。

 3B仕様のおかげで絶対に土台上面は水平に、壁は土台から垂直に配置されるのも有り難い。

 アイテムボックスから水平器と直角定規を出して調べてもみたがこちらも正確にできていた。なお、この二つはクラフトした物ではなく私物である。処分してなくてよかった。


 念のために太い柱もつけるけど、いらないかもな。

 まあ、外見のためにも必要か。


「コズミ先生、そろそろ私戻りますね」


「一人で大丈夫か。送っていこうか?」


「慣れてますのでだいじょうぶですよ」


「そうか。気をつけてな」


 地元民ならそんなに心配はいらないか。

 聖女だから俺より強いのかもしれんし。

 それでも暗くなる前に帰った方がいいだろう。


「それでは」


「またな」


 マスクとヘルメットを返してくれたシラユリを見送ってから作業再開。

 危うく大失敗をするところであった。

 ゲームとリアルの違いを失念していた。

 真っ先に造らなければいけない物があったのだ。


 地下室の完成を後回しにして、急いで用意しなければいけない。

 まず井戸を設置して給水パイプを延ばして、仮設でもいいから用意しなくては。


 そう。トイレである!

 そこらでするなんて考えられないのだから。



読んでいただきありがとうございます

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