32話 学園にコズミがINしました
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今回は31話のコズミ視点
偵察だけのつもりが、重要そうな施設ごとボスを倒してしまった俺たち。
ゲートを探したかったのだが、その重要施設、巨大な塔が倒れてきたので緊急避難。
倒壊が収まるまで避難することにした俺たちは、いったん我が家へと戻った。
「アオイちゃん、しばらくあの技は封印な」
「強いのに……」
「強すぎるから。周りにも被害が大きすぎる。もっと目標のみに効果がある必殺技じゃないと使いづらい」
「わかった。あれはコズミの許可が出るまでは使わないことにする。名前もまだ決まってないし」
敵味方識別なしどころか、地形破壊効果も大きいマップ兵器だなんて使いどころに困る困る。
リアルなミサイルや爆弾なんてそんなもんかもしれんが。
「わかればよろしい。強さだけを求めたんじゃ巨大ロボとしては二流だからな」
「強さだけでは駄目……」
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ロっキー > コズミん、わかっているネ
ゴっさん > うむ。強さと美しさを備えたドリルがなければ完璧な巨大ロボとはいえん
サったん > そうではないだろう
コズミ > そんなことより、ボスを倒したんだけど塔まで破壊しちゃった
オーどん > コズミんらしくないのう
コズミ > シャイニーブルーの必殺技が無茶苦茶強すぎた
サったん > ほう。それは興味深いな
ゴっさん > 火力バカはこれだから
コズミ > もしかしてリトライ必須?
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条件を満たさなければクリアできないイベントなら、ボスも塔も再生するかもしれない。
そう思って砂漠から離れたのだ。3Bだとプレイヤーキャラが近くにいたり、オブジェクトを配置されたりすると地形が再生しない仕様だからな。
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MK-Inyan > まさかアオイがそこまでとは
MK-Inyan > ボス戦はもうちょい盛り上がると思ったんですけどねー
コズミ > すまん
サったん > コズミんは悪くないのである
ロっキー > そうそう。弱すぎるボスが悪いのダ
MK-Inyan > がーん
MK-Inyan > こんなことなら遠慮せずにあと2体用意しとくんだったー
ゴっさん > コズミんをなめすぎだったな
オーどん > うむ。あと10体ぐらいいても余裕だろう
コズミ > いやいやいや。チュートリアルの難易度上げんでくれ
MK-Inyan > あ、リトライはしないでいいです
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さらにあと2体追加で出てくる可能性もあったのか。
そんなリトライしないですむのは助かるな。
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MK-Inyan > むこうでもちょっと動きがあるから
コズミ > むこう?
MK-Inyan > 学園の方。アオイを勇者召喚しようとしてる
ゴっさん > だがそれでは小娘のみが召喚されるのではないか?
ゴっさん > ワシはそれでもかまわんが
MK-Inyan > そうなの。だからボスのいたとこの塔の中にゲートがあったから、明日はそれを探して付近にいて
MK-Inyan > それでコズミんも一緒に行けるようにしとく
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しとくって……。
勇者召喚ねえ。それで俺も召喚できるとか、どうなの?
俺、勇者なんかじゃないのだが。
「アオイちゃん、なんか明日ゲートのそばにいれば学園に帰れるみたい」
「コズミは本当に物知り」
「いや、情報提供があったんだ」
「コズミが言っていたチャット? 神託も受け取れるなんてスゴイ」
神託じゃない。……とは言い切れないような気がするのが複雑だ。
フリートの仲間に今更その正体を聞くのもなんだし。
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コズミ > それで召喚されるのはいいとしてこっちには戻ってこれるのか?
コズミ > この家じゃないとみんなとチャットできないのだが
サったん > それなら大丈夫なのである
サったん > 表札を外して、その表札を新たに張った場所がこの家となる
ゴっさん > そもそも、換金モノリスを持っていけばよい
コズミ > あ、運べるんだ
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ふむ。家の物を全部アイテムボックスに入れなきゃいけないってことはなさそうなので、一安心か。
でも念のために大事な物は入れておこう。
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MK-Inyan > チュートリアルはあとでこれるようにしてもいいです
MK-Inyan > でもそれよりもコズミんにむこうの状況を説明しておかないといけません
コズミ > アオイちゃんたちが差別されて迫害を受けてるって聞いた
MK-Inyan > 女神の真意を理解できないバカが多くて困りますよ、まったく
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それから、マシニーズ科の教師の情報を聞いた。神官なのだが、あまりにも酷い。
マシニーズ科主任の司祭も要注意、と。
ただし、この二人や、アオイちゃんたちを出来損ないと蔑む神官たちはその力を剥奪するとのこと。
具体的にはアオイちゃんの帰還と同時に、回復魔法やその他のスキルのほとんどを失ってしまうらしい。
簡易鑑定でもそんな連中は偽神官と表示される、か。
向こうに行ったら用心しないといけなそうだな。
アオイちゃんの課題を手伝って、それで終り、ってことでもないのか?
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ロっキー > それなら小娘が変形できるの、ここぞという時まで秘密にしておけばいーんじゃネ?
サったん > それは面白そうなのであるな
コズミ > サったんまで
MK-Inyan > そーですね。課題はパートナーを見つけるだけではなく
MK-Inyan > パートナーとの力を示すために試合形式で模擬戦を行います
オーどん > なるほど。その時に初めて変形してみせるワケか
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「アオイちゃん、君が変形できることを課題の試合まで秘密にしたらいいんじゃないかって」
「でも、みんなには教えたい」
「そうか。そうだったな」
アオイちゃんの仲間である8組の生徒たちも変形して人型になれれば喜ぶだろう。
「8組生徒たちにだけ教えて、他には秘密でいこう」
「うん。それなら課題最後の試合でみんなが勝てるかもしれない」
「え、パートナーが見つからなくても試合をしなきゃいけないのか?」
たしか8組の生徒はほとんどパートナーが見つかることがないっていう話だったのだが。
「1組のマシニーズに自信をつけさせるためのかませ犬にされている、ってシンクレーンが言っていた」
「パートナーがいればその分強いのに、パートナーなしで戦わなきゃいけないとか酷いな」
「でも、みんななら人の形になれればパートナーなしでもきっと強い」
どうだろう?
1組のマシニーズはマシニーズ同士の戦いも慣れているはずだ。そんな相手に人型になれただけでパートナーなしで戦えるものなのだろうか?
「だからコズミ、みんなも変形できるように力を貸して」
「それぐらいならいいか」
……まさか、この話をアオイちゃんがあんな風に理解しているとは思わなかったが。
◇ ◇ ◇
そして翌日。
倒壊した塔の付近にゲートがあった。塔の上部にあったのが落ちてきたようだ。
横倒れになっていたのを取りあえずアイテムボックスに入れて確認。
「壊れているけど、これぐらいなら直せるな」
「本当? さすがコズミ」
「この付近に落ちている素材が使えるからな。塔は古代文明の物だったみたいだ」
塔の建材だけじゃなく、他にもなにか機械があったみたいでその部品が落ちている。
ゲートを修理してもお釣りがくる量だ。もちろん確保しておこう。
「間に合いそう?」
「余裕だ。ゲート設置したら、合図がくるまで落ちてる物を回収しておこう」
「よかった。さすがコズミ」
マキにゃんの話によれば召喚される際には護符の光が強くなるそうだ。それが合図。
それまでここの貴重な素材を集めまくる!
◇
修理が完了したゲートを設置して、シャイニーブルーで塔の破片や謎機械のパーツ他をアイテムボックスに入れていたら、俺の護符に反応があったので、慌ててアオイちゃんが変身解除。
設置したゲートのすぐそばに移動する。
「召喚の時にはぐれたら困る」
そう言ってアオイちゃんが俺の手を握ってきた。
むう。できればお互いの手を洗ってからにしてほしかった。
って、それもあるが美少女と手を繋ぐなんて緊張する。
……緊張してアオイちゃんの手の柔らかさに意識を奪われていたらいつの間にか景色が変わっていて、アオイちゃんが知らない男と話をしていた。
なに、もう召喚されちゃったの?
って、話している太ったやつの表示が偽神官になっているじゃないか。文字色も敵対するモンスターやNPCの色だ。
手に持っている箱のも“呪いの護符”って表示されている。
それをアオイちゃんにつけろと言っているのか。
もちろん止める。
そうしたらまた偉そうなやつが出てきたがこいつも偽神官。やっぱり簡易表示の文字色は敵対カラーだ。
え、こいつが司祭なの。ふーん。
偉そうな態度ではあるが、司祭というようなオーラを感じないのはもう神官としての力を失っているからだろうか。
偉そうな偽神官は俺にその呪いの護符をつけろって挑発してきた。
馬鹿なの?
そんなのつけるわけがないだろう。
あまりにも高圧的な態度に、辞めた会社の嫌な上司を思い出してムカついたのでアオイちゃんとの特訓でマスターした〈抜刀術〉スキルを使う。
3Bの〈抜刀術〉は手に装備してなくても、アイテムスロットにある刀や剣等の近接武器を瞬時に装備していきなり使うことができる。PVPで活躍するスキルである。
ノーモーションで素早くアイテムボックスから木刀を出すと同時に護符の紐に引っ掛けて、太っている方の偽神官の首に掛けてみた。
うわ!
なにこれ、ブリキのしかもパチもんくさい像になっちゃったのだが。
こんなものをつけろと言っていたのか。
人間を一人殺してしまったかもしれないというのに、俺の心には怒りしかわいてこなかった。
俺だけではなく、アオイちゃんまでこんな姿にしようとしたなんて許せん!
偉そうな方は仲間がこんなになっても、まだ偽神官だって認めないのか。
俺を邪神の信徒だとか言い出すし。
まったく。マキにゃんが困るのもわかるというものだ。
こうなったら、こいつを適当に攻撃して怪我させる。それで「自分の傷を治してみろ」って言おう。
マキにゃんの話どおりなら、偽神官は回復魔法が使えないのだから。
司祭を名乗ったのに回復魔法も使えないなら十分に偽神官の証明になるはずだ。
さて、どの武器を使うかな。死なない程度にしないといけないから……。
一瞬迷っていたら、若い女性に止められた。20代ぐらいだろうか。清楚な感じな美人だ。着ている服はちょっと高そうだが。
え、この人が教皇なのか。
教皇ってもっと高齢じゃないとなめられちゃうんじゃないのか?
そう思ったのは間違いだったようだ。
戸惑っているうちに俺が8組の担任教師になるという流れに持っていかれてしまった。
そりゃ、偽神官を一人ブリキにしちゃったけど、あれが8組の担任だったのか。その責任を取れって言われても。
断ろうとしたら教皇のシルヴィアさんが。
「教会本部からこの学園までマシンナリィして夜も寝ずに走り続けたのですが疲れました」
って本当に顔色悪くなってるし。
ずるい、これ演技じゃない。
身体が弱い俺だからこそそれがわかる。
だからこそずるい。
そんな人に断れるわけがないだろ!
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