30話 チュートリアルのボス
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鉄鉱石採掘から数日、チュートリアル世界のマップ埋めをしながら素材集めを行った。
それでわかったのだがマップの端っこは見えない壁のようになっている。
壁は非常に柔らかく、シャイニーブルー飛行形態が高速で激突してもダメージを受けることはなかったが押し戻されてしまい、それ以上いけなくなっていた。
この世界はここまでなのか、チュートリアルをクリアしたら壁がなくなるのか気になるところだ。
横の限界はわかったので、今度は上。シャイニーブルーの最高高度を調べようとした。
しかし、途中でMP切れが怖くなって断念した。
帰りにMP切れをおこして墜落はしたくない。レベルアップすればフル回復するとはいえ、用心のためだ。
「パラシュートを作っておいた方がいいな」
「パラシュート?」
「落下傘だ。凄い高いところから落ちる時に大きな布を広げ、空気抵抗で落下速度を遅くするアイテムだ。作ったら訓練しよう」
3Bでも、スタート時やランダムリスポーン時はプレイヤーキャラクターが空中に出現し、初期装備であるパラシュートで着地する。
説明書を読まなかったり、事前情報を集めないタイプの輩はまずこれでいきなり死亡するのだ。
3Bのパラシュートは一度使うと壊れてしまうアイテムだけど修理できるし、〈分解〉すればゲーム開始当初は貴重な布素材を入手できる便利アイテムだ。
そのため、わざと何度も死んでパラシュートで布を集めるというテクニックもあったりする。無駄死には好きじゃないので俺はやらないが。
「アオイちゃんと俺用のをクラフトして……それとも、ロボ用のパラシュートをクラフトしておけば、シャイニーブルーで使えるか」
こんなことを言えるようになったのは、〈探知〉スキルによって油田を発見したのが大きい。
クラフトした採掘機によって油井が完成し、今も原油を汲み上げている。
3Bは精製機があれば原油をガソリンにするだけでなく、プラスチック等の合成樹脂まで作れてしまうのだ。
さらに時間はかかるがアイテムボックス内で加工することも可能。
つまり、今の俺なら各種石油製品も作れてしまうということ。
「訓練……そろそろ戦闘の準備も本格化する」
「お手柔らかに頼む」
俺が直接戦うことは少なそうだから特訓は必要ない気もするが、アオイちゃんの話によればマシニーズのパートナーのスキルも使うことができるし、双方が持ってるスキルはレベルが加算されるらしい。
「コズミが作ってくれた武器もスゴイから試したい」
鉄鉱石と原油だけじゃなく、各種鉱石も大量に収集したので調子に乗ってクラフトしたのだ。
剣、斧、槍、ハンマー、弓、ブーメラン、他にいろいろ。3Bにはなかったが、MODで追加された武器もである。
「いい感じのがあったらシャイニーブルーサイズのを作ろう」
「マシニーズアームを作れるの?」
「マシニーズアーム?」
「マシンナリィした時にいっしょに大きくなる武装」
そんなのがあるのか。
人間が巨大ロボになるぐらいだから、武器が大きくなるぐらいあるのかもしれないが。
「いや、ずっと大きいままの武器だ。マジックアイテムはまだクラフトできない」
「そうなの?」
魔法のあるワールドもMODで追加していて、クラフトレシピにマジックアイテムもあるはずだがまだ解放できていない。
「マジックアイテムのクラフトにはなにか特殊な素材が必要みたいだが、それがなにかわからないから探知もできないんだ」
「ごめんコズミ、私はそっちの方はあまり詳しくない。たぶんキンちゃんなら知ってると思う」
「それは楽しみだな」
ダークエルフの賢者が知る方法が俺に使えるかわからないが、ヒントになるかな。マジックアイテムもクラフトできるようになれば面白い基地も造れるようになる。
「でも、たくさん飛んだけど次元門は見つからなかった」
「たぶんゲートはボスのそばにある」
「ボスってあの強い反応の?」
「そうだ。あいつを倒さない限り、この世界からは出られない」
マップの空白はほとんど埋めたが、中央部の砂漠地帯はまだだ。あそこには遠目にからでも目立つ超巨大な塔があった。
しかし、塔の付近には〈感知〉にビンビンに強烈な反応を持つ敵がいる。
アオイちゃんは戦いたがったが、まだ準備不足と避けていたのだ。
「コズミは物知り」
「情報提供者がいてね」
同じフリートなのにアオイちゃんはチャットウィンドウを見ることができない。
ロっキーたちとのチャットは神魔の校しゃ専用のフリートチャットということなのだろう。
「一度ギリギリまで近づいて様子を見てこよう」
「今日は積極的だね。そういうコズミも素敵」
「アオイちゃんの課題に間に合わないと困るだろ」
一番の理由はそれだけじゃなくて、食の問題なのだがそれを言うのはまだ早いとちょっと見栄を張る俺。
実はそろそろアイテムボックスの野菜フォルダが心許なくなってきているのだ。
容量がほぼ無限のアイテムボックスなのだが、さすがに口に入れるものとそうでない物を一緒に入れておきたくはない。
混ざったりニオイがうつったりはしないだろうが、主に精神的な理由だ。
なのでいくつかのフォルダを作り、分別している。
アイテムボックスのおかげでいつまでも新鮮な状態で保存できるようになったけれど、育ち盛りの子と二人で食べていれば、2倍以上のスピードでなくなるわけで。
塩鮭は既に終わったので、魚もなんとかしたい。残っている魚は出汁用の煮干しと缶詰だけだ。
チュートリアル世界の行ける範囲には海がなかった。海があれば塩も作れるようになるのに。
長期滞在はできないようにしているのだろうか?
まあ、川や湖はあったので釣りはできるか。
チケットでショップを誘致すればもっと長居はできそうだが、そのためには拠点を本格的にクラフトしたくなるのが俺だ。
しかし学園に行くことがわかっている以上、時間がかかりそうな基地建築をするのは我慢するしかない。
「ボス次第では迎撃拠点を造ろう」
我慢しているんだが、やはり建築もしたい。
せっかくリアルに建築ができるようになったのだ。基地を造りたいのである。
攻撃を避けるための塀、落とし穴や電磁ワイヤーで動きを封じるトラップ、無理なら塹壕だけでもいい。とにかくとにかくなにか造りたい。
「コズミがついているから、それはいらないと思う。武器もスゴイのがあるし、今の私は強い」
「慢心はいかん。用心するように」
「了解」
ゲームと違って、死んでも復活することはできないのだ。
……俺に3Bキャラの能力があるといってもさすがに復活はできないよな?
あれはクローンのボディにプレイヤーキャラのソウルが宿って復活、って設定だったのだし。
◇
チュートリアルのボスは5、60メートルはある超巨大な怪鳥であった。
その巨体でありながら高速で襲ってくる強敵……だったのかな?
疑問形なのはシャイニーブルーの必殺技で一撃だったからから。
「見るだけって言ったのに」
「襲ってきたから戦ったまで」
「ワンショットキルとか……」
「えっへん。コズミがいれば私は最強。さすが伝説のスウィートハート!」
さいですか。
なんかアオイちゃん興奮しているので今はなに言っても無駄のようだな。
問題があるとすれば、あまりにも強力な必殺技の余波が塔にもぶち当たっちゃって半壊してることなのだが。
ここにあると思われるゲートは無事なのだろうか?
ボスのイメージがわかった方
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