29話 コズミの職業
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『鉄と鋼の違い?』
「そうだ」
新たな素材の採掘場所を探しながらアオイちゃんに聞いてみた。
鉄鉱石はかなり入手できた。
取りあえずはこれぐらいあればいいだろう。
『鋼の方が……強い?』
「硬さで言えばそうなるな」
会話しながら〈探知〉をアオイちゃんに任せ、鉄鉱石を加工する。
3Bプレイヤーキャラはアイテムボックス内でそれができるのだ。
溶鉱炉があればそっちの方が断然に速いのだが、MOD入りの激ユル設定なのでそれほど時間がかかるまい。
アイテムボックス内の鉄鉱石を〈分解〉する。
要するに精錬だ。鉄鉱石が不純物を取り除かれ、“素材粉・鉄”に変換されていく。
この作業は〈分解〉スキルに一定以上のレベルが必要だが、今後のことを考えて20レベルまで上げたので問題なくできている。
精錬時間も思った以上に速い。3B公式サーバーの溶鉱炉よりも処理時間が短いというのは……これに慣れてしまったら俺、エリクサーで延命できても公式サーバー設定には戻れない身体になってしまうんじゃと不安にさえなってくるな。
「俺の世界では違うのは炭素の量ってことになっている」
『ふーん』
あまり興味はないらしい。
女の子が好きそうな話題でもないしな。
それ以外にも銑鉄や鋳鉄を鉄って区別することもあるんだけど、言っても受けそうにないからいいか。
素材粉・鉄をアイテムボックスでそのまま〈合成〉すると出来上がるのは“純鉄”製の製品だ。
純鉄は錆びないが鋼より柔らかいため、3Bではあまり使われない。
合成時に素材粉・鉄の他に素材粉・炭を〈合成〉することで、鋼製品が出来るようになる。
当初は純鉄製品が存在しなかったが、アップデートにて追加された。
つまり、素材粉・鉄を使うためには素材粉・炭がいる。〈合成〉に使う量は少しでいいのだが絶対に必要なのだ。
素材粉・炭は炭系のアイテムを〈分解〉すれば入手できるから木炭を作るか、石炭を見つければいい。
なのでアオイちゃんには石炭を〈探知〉してもらっている。
見つからなかったら、燃えやすそうな木を探して薪に加工して焼こう。
3Bの溶鉱炉は日本語仕様では溶鉱炉という名称ながら一見竈風の小型な炉で、様々な加工に使える。薪を木炭にすることもできるのだ。
使う素材もそれほど珍しい物が必要なわけでもないのでクラフトしておいてもいい。
……ロボのパーツを造ろうとする時には大型炉が必要になる。そっちはチュートリアルではいらないだろうが。
『コズミ、この反応でいい?』
「ん……うん。石炭じゃなくて木炭みたいだ」
『違った。これじゃ駄目?』
「いや、木炭でもこの反応の量なら問題ない。よくやった」
『えっへん。コズミと一緒なら私も採集依頼ができそう』
アオイちゃんは石炭の実物を見たことがなかったみたいなので、これは仕方がないかもな。
それに木炭でもいいのだし。
「敵の反応もないな。そこに向かおう」
『わかった』
今日はまだ戦っていない。
鉄鉱石の採掘をした山脈は巨鳥の生息地らしく、反応が多かった。
しかし採掘中はかなりの音がしたのだが、逆にそれにビビったのか巨鳥は近づいてこなかったのだ。
おっと、鉄鉱石の分解を一時中断して石ピッケルを修理しておこう。〈修理〉スキルのレベルも上げてあるので、必要な素材があればアイテムボックス内で修理できる。
◇
『この辺り?』
「そうみたいだ。山火事かなんかあったのかな? 熱はもう冷めているけど、そんなに昔のことじゃなさそう」
『ドラゴンのブレスかも』
「ああ、そんな可能性もあるのか」
今までチュートリアル世界で会った敵はモンスターだけど動物の延長ばかりだったからファンタジーな敵のイメージがなかった。
いや、巨鳥なんてファンタジーな存在そのものだが、火を吹いたり魔法を使ったりしなかったから。
『コズミと今の私、シャイニーブルーならドラゴンにも勝てる! と思う』
「できれば準備ができるまでは、そんなのとは戦いたくないな」
もう一度〈感知〉でマップを見て大きな反応がないのを確認して、シャイニーブルーを人型に変形させ着地。
「これだとピッケルよりもシャベルの方が効率がよさそうだ。ちょっと待ってて」
『うん』
表層の炭を集めるだけなので硬さはそれほど求めなくてもいいか。
せっかくだから純鉄でシャベルをクラフトしてみる。もちろんロボサイズの物をだ。
「できた!」
『綺麗』
銀色に輝く純鉄製の巨大シャベルを見てうっとりとした声を出すアオイちゃん。
女の子らしく光り物は好きなのか。あとでアクセサリーでも作ってあげようかな。
「これで地面の黒く炭になっているとこをアイテムボックスに入れてくれ。多少土や他の物が入っても構わないから」
『了解』
シャベルを使って炭化した表層をすくって揺らめく空間に運ぶシャイニーブルー。
生きてる物はアイテムボックスには入れられないので、混じっていた虫や小動物が揺らいでいる空間で漉しとられるようになって落ちていく。
うわ、ミミズやダンゴムシ、イモムシ系が多いけどGっぽいのもいた。あの辺は見ないようにしておこう……。
「お、重くないか?」
『余裕。もっと大きくてもいいかも』
「なら作ってみるか」
アオイちゃんが炭を集めている間に、その炭を素材粉・炭に〈分解〉。
出来た素材粉・炭と素材粉・鉄を使って、鋼の大型シャベルをクラフトする。雪かきで使うような大きく幅広のヘッドを持つシャベルだ。
『いい感じ』
シャイニーブルーは大型シャベルを苦も無く使い、さらに効率を上げながら炭をどんどんとアイテムボックスの炭の量を増やしていく。
「俺がやったらすぐに腰にきちゃいそうだが、アオイちゃんは大丈夫か?」
『へーき。こんなことができるのもコズミのおかげ。人の形にならないとできなかった』
「うーん。人型じゃなくても、こういう作業に向いている子はいるかもしれない」
ショベルカーのマシニーズならば人型じゃなくてもできるだろう。
アオイちゃんの話によれば重機型はいるみたいだからな。
『そうなんだ。コズミは物知り。やっぱり賢者?』
どちらかと言うと俺は、会社を辞めてからは遊び人の方だ。
ん?
そう考えると賢者に転職できるかもしれないのか。
「そっちの賢者って、賢者スキル持ちなんだろ。俺はそんなスキル持ってないよ」
アオイちゃんの〈勇者〉スキルと同じレアスキルで、8組の同級生にもいるらしい。
『コズミならキンちゃんの疑問にも答えられそう』
「同級生の賢者だっけ」
『うん。ダークエルフのキントリヒ』
キントリヒか。
朝鮮、いや、ドイツっぽい名前だな。
そしてダークエルフもいるんだ。どんな子だろう。やはり巨乳なのだろうか。
それよりもドイツ系だとするとマシニーズの時にも期待できる。戦車だったら嬉しいのだが。
あ、でもそれだったら虎の獣人がティーガー戦車になるというベタなのもありえるか?
アオイちゃん以外のマシニーズの姿も早く見たい。
シャイニーブルーが見事なだけに弥が上にも期待が高まる一方だ。
◇
一時間ほど炭を集めた。
鋼の大型シャベルは使い方もあったが、壊れることなく使い続けられたので、その間に俺は素材粉への〈分解〉をかなり進められた。
「そろそろいいか」
『うん。黒いとこがだいぶなくなった』
シャイニーブルーの作業量はとんでもない。
アオイちゃんが言うには俺の〈採掘〉や〈採集〉スキルのおかげらしいが、巨大ロボでなければこの量はありえないだろう。
鋼製品ができるようになったから、さらに採掘効率は上がる。
3Bは使う道具によって入手できるアイテムの量が変わる仕様だ。石ピッケルよりも鋼ピッケルの方が同じ作業でも入手量が多い。
ボス戦の前に素材を集めて準備を整える見通しがついてきた。
シャイニーブルー用の鋼の剣や盾を造れそうだ。
これでソウルが入手できれば、ロボも造れるのだがなあ……。
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