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28話 賢者の考察

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今回は学園編

8組の1年生の視点です

 ふっふっふ。

 8組の頭脳、キントリヒなのだ。

 愛を込めてキンちゃんと呼ぶのだ!


 キンちゃんは1年生なのだ。

 ん?


 ちっこい?

 とても高等部の生徒には見えない?


 し、仕方ないのだ。

 キンちゃんはダークエルフだから成長がちょっとだけ遅いのだ。

 あと数年もすればシンクレーンよりも背も胸も大きく、ボン! キュッ! ボーン! になるのだ!!


 ダークエルフはこの学園があるビッゲスト大陸じゃなくて、魔王様が治める南の魔大陸に住んでいるのだ。

 キンちゃんのお爺ちゃんたちは約300年前の怪獣大戦の時にこの大陸にやってきて怪獣どもと戦った英雄なのだ。

 ビッゲスト大陸のエルフの国は怪獣大帝に真っ先に襲われたせいで被害が大きく、エルフの数も激減していたのだ。

 お爺ちゃんは仲がよくなったエルフたちのために魔大陸に帰らずにエルフの国の復興の手伝いをして、この大陸で暮らすようになったのだ。

 キンちゃんはビッゲスト大陸生まれで、魔大陸にはまだ行ったことがないのだ。


 さらに!

 なにを隠そう、キンちゃんは〈賢者〉なのだ。

 とっても賢いのだ!


 今日は8組のみんなと山菜取りに来てるのだ。食べられるかどうかわからないのを調べるのはキンちゃんの役目なのだ!


「ねえねえ、キンちゃんこれは?」


「これは食べられるのだ。でももうちょっと小さくないと硬くて食べづらいのだ」


「わかった」


 本当は自室でゆっくり研究したり、図書館で読書したりしたいけど、キンちゃんがいないと危険なのだ。食べて試そうとされたら大変なのだ。

 お腹が空いていると、判断力が低下して、食べられそうに思ってしまうのだ。前にキンちゃんがいない時にアオイが試そうとしてヤバかったらしいのだ。


 アオイはキンちゃんと同じ8組の出来損ないで、学年は一つ上の2年生なのだ。

 そして、キンちゃんの〈賢者〉よりもレアな〈勇者〉スキル持ちの本物の勇者様なのだ!


 機神巫女(マシニーズ)科の教師は出来損ないを「信仰心が足りない」って差別対象にしているけど、それってなんかおかしいのだ。

 だって、アオイの〈勇者〉とシラユリの〈聖女〉、それにキンちゃんの〈賢者〉、レアなスキル持ちが3人も8組に揃ったってことは女神は出来損ないを、出来損ないって思ってないのではないかと見ることができるのだ。


 聖女シラユリの話によると、機神巫女(マシニーズ)科主任のドメーロ司祭が諸悪の根源。

 ドメーロは以前は女神教の次期教皇候補だった程の男。他の上位の司祭たちの推薦も揃えて、教皇の座も間近と見られていたのだ。

 けれど当時の教皇、上位の司祭たちの多くに女神様の神託が降りて当時無名の神官が新たな教皇となってしまった。これが現教皇のシルヴィア様なのだ。


 ドメーロ派が隠すのであまり知られていないが、シルヴィア様は出来損ない。

 これって絶対、女神様は出来損ないが信仰心が足りないなんて思ってないのだ!


 それで教皇になれなかったドメーロにも神託があって、学園の機神巫女(マシニーズ)の教師となったのだ。

 ドメーロは以前から出来損ないを敵視していたけど、出来損ないに教皇の座を奪われたのでさらに憎むようになってしまったのだ。


 キンちゃんはドメーロが受けた神託が怪しいと思うのだ。出来損ないに嫌がらせをするために嘘をついている可能性が高い。


 機神巫女(マシニーズ)科は元々、女神教の神官が教えていたんだけど、今はドメーロ派の教師ばかりなのだ。

 8組担任のベドロはドメーロの親戚で好き放題している。まあ、シンクレーンに殴られたばかりでビビっちゃって、今日も自習だったのだ。



 ◇



「キンちゃんが探していたの、この花かな?」


「そうなのだ。ありがとうなのだ!」


 キンちゃんは自分が賢者になったのは、アオイのためだとも思っているのだ。

 勇者が出来損ないとして差別されたままにするわけにはいかない。だから機神巫女(マシニーズ)としての真価を発揮する方法を調べているのだ。


 出来損ないは、信仰心が不足しているってのは絶対に間違い。

 そうではなくマシンナリィが機能不全を起こしているのかもしれないとキンちゃんは睨んでいるのだ。


 だから、特殊な薬で正しくマシンナリィできるようになれるか試す予定なのだ。

 本当はエリクサーで試したいんだけど、とても高くて手が出ないのだ。

 材料さえあればキンちゃんにも作れそうな気はするんだけど、材料も入手困難。こんな山じゃ見つかるわけもないので困っているのだ。


「このコケ、いいやつだよね、キンちゃん」


「おお! 珍しいやつなのだ。キンちゃんは使わないけど高く売れるのだ」


「高いやつ売る時はカードマネーで取引しろよ。誤魔化されないで済むからな」


 出来損ない相手だと詐欺をしても女神様が怒らないなんて馬鹿なことを思って、不当な取引をしようとする商人もいるのだ。商品を受け取った後で相場の額を払わないとか。

 だけどカードマネーだと、そういうことはできないのだ。どんなに誤魔化そうとしても取引時の額は絶対に支払われるのだ。


 カードマネーはアイディーカードにしまわれている特殊な通貨。

 アイディーカードは女神教の教会で発行しているカードで、本人以外が使うことはできず、身分証明にも使われるのだ。

 アイディーカードはみんな持ってるけど、偽造もできないすごいアイテムなのだ。これを作れるのは女神教だけなので、どこに行っても女神教の教会があるのだ。


 アイディーカードには犯罪歴すら記録される。

 ドメーロたちは「出来損ないは信仰心が足りないから女神に罰を受けている」と言うけど、そのワリにはアイディーカードの記録内容にはそんなことはないのだ。

 キンちゃんのには賢者ってしっかり記録されているのに。


 これから考えても女神様は出来損ないに罰なんか与えていないのだ。ドメーロ派のヘイト行為なのだ。


 キンちゃんが調べた限りではこんな短い期間に勇者、聖女、賢者の3人――モーブのやつは数に入れないのだ――が揃うなんて、今までなかった。

 なにかに備えて女神が準備していると考える方が自然なのだ。

 それをドメーロは隠そうとしている。都合が悪いのだ。


 ドメーロは試練にアオイが挑戦して、追放できたつもりなんだろうけどアオイが戻ってきたらどうするか楽しみなのだ。

 アオイは絶対に戻ってくるのだ。

 だって暴走女勇者と呼ばれるアオイだけど、勇者の()はスゴイのだ。賢者のキンちゃんが考えるよりも、結果的に正しい答えを導いてしまうのだ。


 今回も試練に出たからには、予想以上のパートナーを連れてくるとキンちゃんは確信できているのだ。

 希望的観測ではないのだ。経験則なのだ。


 その時のためにもキンちゃんは賢者としての知識を高めておくのだ。



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