27話 輝く青
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「ぐっ……」
『コズミだいじょうぶ?』
「問題ない」
酷い筋肉痛なのである。
最近鈍った身体がこの数日で急に動いているもんだから、けっこうツラい。
3Bにはこんな状態異常はなかったが、リアルはゲームとは違うということか。
成長ポイントを使い、力の数値も上げているのだが効果はなかったようだ。
見た目でも筋肉がついていないし、そういうものなのだろう。俺より力の数値が強いアオイちゃんもマッチョなワケじゃない。
ちゃんと動かさないと腹筋を割ることはできない、と。
これで〈耐性・痛み〉のスキルを使っていなかったら動くことすらかなわなかったかもしれない。
素材が集まったら修行用の重い服でも作るか。
今日は〈探知〉スキルを使いながらシャイニーブルーで飛行中。
アオイちゃんと相談して変身時の彼女の名前はシャイニーブルーということにした。
アオイちゃんの名前とその輝く装甲の色からそのまんまなネーミングであるが変身ヒロインぽくもあると思う。
「感知に大きな反応があったら、そこは避けよう」
『了解』
このチュートリアルにはボスがいるらしいが、まだ準備ができていないので後回しだ。
まず素材を集めて武器その他をクラフトしたい。シャイニーブルーで使えるような巨大な物をだ。
マップウィンドウで確認しながら飛ぶ。
今はレベルを上げた〈探知〉スキルを意識しながら山脈に向かっていて、そこから目的である鉄鉱石の反応があり、マップにも矢印が表示された。
山脈はどうやら巨鳥の巣があるようで、〈感知〉スキルに反応が多いがそれ以上の反応はない。
ボスだからたぶん大きいと予想して飛行を続ける。
「MPは大丈夫そうか?」
『うん。MP増加や消費MP低減のスキルが効いている』
昨晩は二人で変身中の名前だけじゃなくスキル構成でも悩んだ。おかげで3Bにもなかった有用そうなスキルをいくつか見つけることができた。
俺の方は〈HP増加〉等の身体を強化するスキルを取って、少しでも死ににくいようにしたつもりである。
「っと、この辺か。飛行形態は本当に速いな」
『コズミの操縦もあると思う』
そうなのかね?
高レベルの〈操縦〉スキルによって多少のプラス修正はあってもそこまで変わるものなのか、比較してみないとわかりそうにない。
フリートブーストの効果がマシニーズ時にも発揮されているというのもありえるな。
シャイニーブルーを空中で人型に変形させて着地。
アオイちゃんもこの辺の動作に慣れてきた。操縦席には振動がこないのでわかりにくいが着地時の衝撃も上手く脚部で吸収したようだ。
もっとも、地面が揺れて砂埃が舞い上がる方が重量感を演出できてカッコいいと思うのだが。
「探知スキルによれば、この辺の岩に鉄鉱石が含まれているみたいだ」
『そこまでわかるなんてさすがコズミだ』
いや、スキルがスゴイだけなんだが。
シャイニーブルーを屈ませハッチをオープンして外に出て、拠点でクラフトしておいた物をアイテムボックスから取り出す。
乗ったままでアイテムボックスから出し入れしにくいのがちょっと難点だな。
「これを使ってくれ」
『わかった』
出したのはシャイニーブルーに合わせた巨大なピッケル。
材質は柄が木でヘッドが石。
そう! サイズを除けばサンドボックスゲームでおなじみの石ピッケルである!
「シャイニーブルーのパワーで全力で振るわれると簡単に壊れるかもしれないから、まずは軽く振ってくれ」
いくら硬いとはいえ、柄は木製でヘッドは石。ロボが使うには強度が不足しているかもしれん。
再び操縦席に戻ってシャイニーブルーを操作。赤っぽい岩石に向かって軽く巨大ピッケルを振るう。
「嘘だろ」
大きな岩はたった一振りで粉々に砕け散った。3B公式サーバーの石ピッケルではありえない光景に俺は驚きを隠せない。
いくらプラス補整のついた良品でも一撃なんて。シャイニーブルーのパワーあってのことだろう。
『コズミ?』
「……この調子でやっていこう」
あとで細かくなった岩をアイテムボックスに入れていけば空間切削よりも早く採取できるはずだ。〈掘削〉スキルも解放できる。
『この岩でいいの?』
「ああ。簡易鑑定で見てみればいい。よく見れば解説が現れるはずだ」
『出てきた』
◎◎◎◎◎◎
鉄鉱石
鉄の原料になる石
◎◎◎◎◎◎
これは精錬する必要があるが間違いなく鉄がとれる。
3Bでは簡単に作れる炉で精錬するのが一般的だが、実際にそれをやると熱くて大変そうなので、貧弱な俺の身体のためにも別の方法を使うつもりだ。
「これをあとで鉄にするから今は集めておこう」
『うん』
巨大ロボがピッケルで露天掘りという未来的なんだか古臭いんだか微妙な光景を見せながら、シャイニーブルーは大きな岩石や岩壁を砕き、削っていく。
用意していた石ピッケル3本が全て壊れるまでの30分もその作業を続けたらちょっと地形が変わってしまった。
シャイニーブルーの足元には鉄鉱石の欠片が積もり、粉塵が舞っている
「シャイニーブルーから出ないとアイテムボックスに入れられないけど、粉塵吸うと身体に悪そうだよな」
『そうなの?』
「ああ。だからまだアオイちゃんに戻らないでくれ」
買い置きのマスクは持ってきているが、口と鼻を布で覆うだけの普通のマスクだ。こんなことならガスマスクみたいなゴツイのを買っておくべきだった。
3Bには毒ガス地帯もあってガスマスクもクラフトレシピがあるけど、素材がないから作れない。
まあ、ガスマスクなんてなくても宇宙服みたいなパイロットスーツとヘルメットで毒ガス防げたりするんだがね。
◇
のんびりと粉塵が落ち着くのを待っていたら、アオイちゃんがこんなことを言い出した。
『アイテムボックスってどうやって使うの?』
「アイテムボックスを使うってイメージするとできる」
いかん。これではアオイちゃんを脳筋と言えないではないか。
けど、実際深く考えずに使っているんだよな。
『わかった』
「はい?」
あれでわかったの?
直感型はこれだから……。
『アイテムボックス!』
アオイちゃんが叫ぶとシャイニーブルーの近くの空間が揺らめく。
これはまさか、アオイちゃんがアイテムボックスを使ったのか。
『できた! のかな? これでいいの?』
「これは……?」
『これはコズミのおかげ。機神巫女は心の通じたパートナーのスキルを使うことができるから』
「そうなのか?」
『うん。だから機神巫女はパートナーがいて一人前なの』
なるほど。マシニーズのパートナーって操縦や指示を出すだけかと思ってたけど、そんな効果もあるのか。
それならたしかにパートナーがいた方が強い。
「そうか。ならその揺らめいているとこに鉄鉱石を突っ込んでみてくれ」
『こう? ……入った!』
足元に転がっていた手頃な大きな鉄鉱石の塊を掴み、揺らめきに入れるシャイニーブルー。
すると、メッセージウィンドウが立ち上がった。
◎◎◎◎◎◎
鉄鉱石×40を入手しました
◎◎◎◎◎◎
ふむ。俺のアイテムボックスに入るワケか。
本当に俺のスキルみたいだな。
「ちゃんと俺のアイテムボックスに入ってる」
『よかった。これですぐに鉄が溜まるんだね』
シャイニーブルーがひょいひょいと鉄鉱石を拾ってアイテムボックスに入れていく。
◎◎◎◎◎◎
鉄鉱石×64を入手しました
鉄鉱石×81を入手しました
鉄鉱石×58を入手しました
鉄鉱石×39を入手しました
◎◎◎◎◎◎
さすがロボサイズ。自鯖の採集量アップ設定も相まってすごい勢いで鉄鉱石が増えていく。アイテムボックスの容量も設定変更していなかったら、すぐに一杯になって持てなくなるとこだ。
「精錬すれば減るだろうけど、それでもかなりの量が採れたよ、ありがとう。これで金属製品のクラフトに近づいた」
『コズミが喜んでくれたら私も嬉しい』
いい子だ。
この子のためにも頑張らねばねば。
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