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25話 アオイの属性

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「コズミの、大きくてかたい」


「もう少し小さい方がいいか?」


「これぐらいでいい」


 俺のクラフトした木剣を軽く振る勇者様。

 どうやら満足してもらえたようだ。

 いくら木製といえど、どう見ても両手剣サイズなやつを片手で軽々と振られると、本当にゲームしているんじゃないかと勘違いしそうになるな。


 さっきは誤魔化せたかと思ったが、アオイちゃんはしっかり覚えていたので剣の訓練をすることに。

 と言っても素振りだけだが。

 もうかなり昔の話だが、学校の授業で剣道の経験はあるのでこれぐらいならばできる。


「素振りして剣術スキルを解放(アンロック)、レベルを上げてからの方がアオイちゃんの言っていることがわかるはずだ」


「そうかも」


 アオイちゃんの教え方は実践的というか実戦的。いきなり「構えて」とか言われて俺も困ったよ。

 俺は身体が弱いので理論先行じゃないと身がもたないのだ。


「ふうぅ。もういいだろ。今日はこれぐらいにしよう」


「……まだ20回しか素振りしていない」


「夕食の準備をしなきゃいけない。あの鳥をさばきたいから時間がかかるんだよ」


「わかった。ごはんのためなら仕方がない」


 以前は健康のために少しは身体を動かすようにしていたのだが、余命宣告(カウントダウン)を受けてから、もはや無駄なことだと散歩すらしなくなって身体が鈍っている中年には20回でもキツイ。


「鳥がでかいからアオイちゃんにも手伝ってもらいたい」


「うん。切ればいいの?」


 手伝ってくれるようなのでよかった。

 あんな鳥をさばくのは俺一人じゃ無理だ。〈解体〉スキルが解放(アンロック)できればなんとかなるかもだが。



 ◇ ◇ ◇



 汚れてもいい服。エプロンとゴム手袋、さらにマスクを装備した俺は一心不乱に大鳥の羽根を毟る。


「アオイちゃん、もう少し持っててくれ」


『……うん』


 屈みこんでテラーバードの足を持っているアオイちゃんロボ。

 羽根毟りと同時に血抜き中なのである。

 これはアオイちゃんが首狩りした大鳥なのだが、大きい分血抜きも時間がかかりそうということでこんな感じになっている。


 時間短縮のために足にも切り込みを入れて血管に空気が入るようにした。プリンをぷっちんする時と同じ理屈だ、たぶん。

 血はクラフトした大きなタライで受け止めている。あとでなにかに使えるかな?


「血のニオイでモンスターもくるかもしれないから注意していよう」


『うん。でもこの姿を見たら襲ってこないと思う』


「そうかも」


 巨鳥みたいな特大のモンスターでもない限り、アオイちゃんロボには喧嘩は売らないか。

 巨鳥の他にもまだいるのかな。マキにゃんはボスがいるって言ってたが。


『これで私も料理スキルがアンロックされる?』


「これだと解体スキルだと思う。アオイちゃんは料理は?」


『食べるのは好き』


 あまり得意じゃないようだな。

 ふむ。


「俺がアオイちゃんを操縦してこの大鳥を料理すれば解放(アンロック)できそうだけど、そのサイズの包丁がない、か」


『残念』


 ロボでの調理も面白そうだけど、まずそのための道具をクラフトしないと。

 でもそれには木材だけではちょっとツラい。

 石材も手ごろな岩を見つけ次第アイテムボックスに収納してはいるが、もっとほしい。

 素材さえあれば基地だって造れる。リアルでの基地建造はかなりかなーり楽しみだったりするのだ。


「料理を覚えたいなら切り身にした肉で教えてあげるよ」


『……簡単なのを』


OKOK(おけおけ)


 そろそろ血は抜けただろうか?

 まだ鳥はアイテムボックスに残っているけど、これだけあればしばらくはもつ。アイテムボックス内は時間経過しないようだし血抜きはまた今度でいいだろう。

 解体用の作業場も造りたい。

 洋画で出てくるようなチェーンとフックで獲物をぶら下げるアレ。流れた血が床に溜まらないように排水設備も必要か。温度を下げるためにエアコンもいるな。そうなると発電機がほしい……。


◎◎◎◎◎◎

ブラウンテラーバード:オス

モンスター:LV22

死体

血抜き済み

◎◎◎◎◎◎


 お、血抜きが終わったようだ。

 簡易鑑定でもわかるのはありがたい。

 3Bの場合はこの手の死体があると吸血モンスターを用心するんだが。


 あとは解体だけど、適当にバラせばいいか。どうせ売り物にするワケじゃない。

 我が家の台所から持ってきた出刃包丁を片手にどこから手をつけるか考える。

 内臓はあまり見たくないのでまずは手羽からかな?

 飛べないのだろう、大きな身体の割にはそこまで大きくない翼の付け根に包丁を入れていく。


 うむ。よく切れる。

 念のために砥いできたんだけど、〈クラフト〉スキルや解放(アンロック)してレベルを上げておいた〈修理〉スキルがいい仕事をしてくれたみたいだ。

 思ったよりも簡単に手羽を両方切り分けることができてしまった。


『さすがコズミ』


「いや適当だから。これからお腹を切るけど、苦手だったらもういいよ」


『だいじょうぶ』


 仕方ない。マスクの奥で一回深呼吸した俺は胸から腹にかけて縦に包丁を走らせる。

 ……思ったよりも平気だな。グロいっちゃグロいけど耐えられないほどではない。〈耐性・精神〉スキルのおかげだろうか。


 内臓はあまり食べる気はしないので肋骨をよけながら適当に切り分けて桶に入れていく。

 うわ、レバーがでかいでかい。これと心臓(ハツ)ぐらいかな、内蔵は食べるとしても。



 ◇ ◇ ◇



「おつかれ」


 元の姿に戻ったアオイちゃんを労う。

 あの巨大ロボがこの美少女になるなんて、やはりやはりマシニーズってスゴすぎる。


「持ってただけだから疲れていない」


「そうか? それだけだから退屈したり気疲れしたりしそうだが」


「コズミを見ていたから」


 それはどういう意味だ?

 俺ってそんな面白い顔をしながら解体していたんだろうか。

 いやでも、マスクしてたしなあ。


「次はなにをする?」


「どんな味かわからないから、取りあえず焼いて食べてみよう」


 試すのはモモ肉と胸肉だ。量が多い。ブラウンテラーバードはかなり立派な脚をしていた。

 あの脚についている凶悪な爪で獲物をおさえつけたり、切り裂いたりして大きなクチバシで啄ばむのだろう。

 たぶん。実際に見たわけではないし、獲物になるつもりもないので本当のところがわからん。


 時間があれば罠と定点カメラを設置したり偵察ドローンを飛ばすのだが。……どれもクラフトしたいなあ。

 くっ、素材さえあれば!


「モモ肉は脂がスゴいな」


「いいニオイ」


 フライパンで焼いているのだが、かなり脂が出ている。

 アオイちゃんの言うように鳥の脂の焼けるいい匂いがキッチンに漂う。うんうん、食欲をそそる香りだ。


「もういいだろ」


 寄生虫がいないか心配で細かく切ったモモ肉を、しっかり焼いて試食。

 味は軽く塩胡椒を振ったのみだが、臭みもない。鶏肉よりも力強い旨みといい脂の甘さを持つ肉だ。硬さは鶏肉よりもちょっとあるが、それもいい食感になっている。

 あれ、野獣肉(ジビエ)ってもっと癖の強いもんだと思っていたのだが。

 もしかして解放(アンロック)してレベルも上げておいた〈料理〉スキルのおかげだろうか?


 ふむ。

 ならば全く同じ手順でアオイちゃんに焼いてもらおう。比較ができるはずだ。


「これを切って焼けばいいの?」


「うん。コンロの火加減もさっきと同じでいい」


「わかった」


 だいたい同じ大きさにアオイちゃんがモモ肉を切り分け、分量の塩胡椒を塗し、コンロの点火に苦戦しながらもなんとか焼き始めることに成功する。

 そして、俺が焼いた時の時間に達する前にそれは起きた。フライパンから煙が上がったのだ。


「焦げ付いちゃったか」


「ゴメン」


「いや、見ていたが手順に特におかしなところはなかった。俺がやったのと変わらないはずだ。おかげで料理スキルの効果がわかった」


 切る作業は刃物に慣れているせいか無難にこなしていたので、そこはまかせてもいいようだ。

 ま、〈料理〉スキルを習得すればいいだけの話だけなのだがな。


「もうアオイちゃんの料理スキルも解放(アンロック)されたんじゃないか?」


「アンロックはできた。でもスキルレベルがおかしくなっている。マイナス3レベル?」


 ……そうか。

 アオイちゃんはメシマズ属性だったのか。



読んでいただきありがとうございます

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