22話 恐鳥
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魔法訓練中に襲ってきたのは大きな鳥。数は3羽。
巨鳥よりは小さいけど、あれの雛ではないよな?
◎◎◎◎◎◎
ブラウンテラーバード:メス
モンスター:LV17
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◎◎◎◎◎◎
ブラウンテラーバード:オス
モンスター:LV22
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ブラウンテラーバード:メス
モンスター:LV18
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どうやら違うようだ。レベルもこっちの方が高いし。
テラーバードか。恐鳥……たしか恐竜の後に出てきた巨大生物だったよな。リアルチョ○ボとも呼ばれる古代生物。
ただし簡易鑑定の種別ではモンスターってなっているから、その古代生物そのものではないようだ。
体高は2メートル強。頭がでかくて翼は小さく、とても飛ぶようには見えない。脚も太く逞しく、爪も大きくてスピードよりもパワータイプかな。もちろん肉食だろう。
頭に派手な冠羽があるのがオスか。レベルも一番高い。
「友好的ではなさそうだな」
「うん。コズミに会う前に何回か襲われた。意外と賢いから注意」
「魔法の練習台になってもらうしかないか。焼き鳥にしてやんよ!」
「焼き鳥? 美味しそう!」
いや、本当に焼き鳥に調理するわけじゃないからね。ファイアーボールで攻撃するだけで、っと。
「ファイアーボール」
手前を走る、レベルが低い恐鳥にファイアーボールを発射する。回避できずにそいつは火達磨になってそれでも走りながら倒れた。
残りの2羽から怒りの鳴き声がグワァグワァと響く。
「スゴイ! さすがコズミ」
そう褒めてくれながらアオイちゃんは掛け声もなく剣を一閃。
ボトリと冠羽のついたオスの頭が落ちた。
「前よりも身体が軽い。これもコズミのフリートに入ったおかげ」
賢いというのは本当らしく、残った一羽はすぐに方向転換して逃げていった。
ううむ。賢いならテイムして乗ることができそうかも?
でもリアルで生き物を飼うのは餌や糞の始末が面倒だから今はいいか。テイム関係のスキルの解放も面倒だし。
ロっキーがここにいたら迷わずテイムしてただろうが。
それとも卵を探して雛からかな?
「元々アオイちゃんは強いから」
死んでるのを確認して2羽の死体をアイテムボックスに回収する。
俺の倒した方は焼けちゃって羽根が駄目になっていそうだけど、アオイちゃんがやったオスからの方はとれそうだ。
羽根があれば矢をクラフトできるから弓矢も使えるようになる。
弓矢では〈弓術〉だけではなく〈射撃〉スキルも解放される。魔法の方が強そうだけどスキルは習得しておいた方がいいだろう。
アオイちゃんバルカンの命中率やダメージもアップするかもしれない。
「コズミのおかげ。前はもう少し手間取った」
「はいはい。次は他の魔法も教えてくれないか。いろいろ覚えたい」
「うん。コズミならすぐに覚える」
アオイちゃんからの高評価がツラい。だって激ヌル設定やMODのおかげだもんなあ。元からあった俺の力ってわけじゃないから。
まあそんなことはオン・ザ・シェルフ。
俺の命が尽きる前に手を尽くすのだ。
「回復魔法を頼む。俺が死ぬのを少しでも遅らせたい」
「コズミは死なせないから安心していい」
なぜ俺がなでなでされるのだろうか?
もしかして死に怯えていると思われてしまったか。
「って、もしかして回復魔法使ってるのか?」
「うん。精神異常を癒すマインドキュア。落ち着いた?」
「ああ。効果はイマイチ実感できないが」
そうだよなあ。回復魔法は怪我してたり状態異常じゃないと成功したかどうかもわからん。焦っていたな。
3Bだって実際に怪我人を治療しないと医療系のスキルが解放されなかったじゃないか。
だからといってワザと怪我をするのは俺の寿命を削る行為にしか思えない。
回復魔法は後回しにするか。
◇ ◇
その後、アオイちゃんが適当に選んだ魔法を真似していくつかのスキルを解放した。
「こんなにたくさんすぐ覚えるなんてコズミはやっぱり伝説のスウィートハート!」
「魔法は取りあえずこれぐらいでいいのかな? 次は採集スキルだ」
「採集?」
「そう。アオイちゃんは冒険者ギルドの依頼も受けていたんだろ、薬草を採集とかしたことがないか?」
回復魔法が駄目ならば自分で回復薬をクラフトすればいい。そっちの方が俺向きだ。
自鯖の激ヌル設定によって、アイテムボックスに入れたアイテムが傷むことはないから、ここでも集められるだけ集めておきたい。
けっこういろんな草が生えているから、薬草になるのもあるだろう。
「そういうのはちょっと苦手で……討伐依頼は得意」
「そうか……」
「採集よりも剣の方が教えられる」
んなこと言われても。
そりゃスキルポイントも豊富だからいずれは〈剣術〉スキルもほしいのは確かだ。
「俺は病弱だから直接戦闘は避けたいんだが」
「身体を動かした方が健康にいい」
「程度による」
だがもう既にアオイちゃんの中では、この後の予定は剣の特訓に決まっているように見える。
なんとか誤魔化したいところだ。
「ここは敵が出やすい。剣の練習なら家の付近の方がいい」
「そう?」
だからその首を傾げるアクションはズルい。可愛すぎる。
思わずアオイちゃんに従いたくなってしまいそうだ。
「コンテナの中なら安全にできる。照明の魔法も覚えたから暗くなってからでも問題はない。今はまず採集だ」
「……わかった」
渋々ながら納得してくれたようだ。そんなに採集が嫌か?
それなら俺が採集する時の護衛をしてくれればいいだけだ。
「アオイちゃんも使って」
「うん」
アイテムボックスにしまっておいた軍手を取り出して両手に装備。アオイちゃんにもつけてもらう。
3Bの場合、プレイヤーキャラクターは素手でもいろんな物を採集していたけど、俺はやりたくない。
リアルでそんなことをすれば指を怪我したり、カブレたりと大変になることはわかりきっている。なにより不衛生だ。
「まずは草からだ」
足元に生えている長めの草を鑑定もせずに手で毟り取っていく。
うーん、サンドボックスゲームをやってる感じが盛り上がるなあ。
だからといって素手で木を殴ったりはしないけど。
「それ、薬草?」
「いや、採集関係のスキルを解放するためだ。希少な薬草が見つかる前にこうしてスキルを入手して、見つかった時に綺麗にたくさん取れるようにしておく」
「なるほど。さすがコズミ!」
理解してくれたアオイちゃんも足元の草を力任せにブチブチと引き抜き始めた。
俺より力があるからそのスピードも速い。これなら彼女もすぐに〈採集〉スキルが解放されるだろうう。
「気になるようだったら鑑定スキルを取っておけばいい。それがあれば毒キノコも見抜ける」
「うん。絶対に取っておく」
3Bの毒キノコってグラフィックは普通のキノコと一緒なんだけど、採集しようと触っただけで毒状態になり兼ねない猛毒なんだよな。
そういうのもあるから〈鑑定〉スキルは必需品だ。高レベルになれば敵対している相手もわかるようになるし。
「抜いた草は適当にまとめておいてくれ。あとで収納するから」
「使えるの?」
「まあね。たぶんだが上手くいけば役に立つ」
抜いた草も無駄にはならない。3Bでは雑草からでも繊維が取れて布製品の素材になるのだ。麻布みたいな生地が作れる。
繊維は布だけじゃなく、ロープや建築資材等、いろいろなクラフトで必要になるので集めておいて損はない。アイテムボックスの容量は気にしないでいいのだから。
「そりゃ虫も出てくるか」
「なにかに使える?」
「蜘蛛とかイモ虫の糸出すやつならね」
雑草抜きの最中にピョンピョンと小さな虫が跳ねて逃げ出していく。さすがにこの大きさの虫は襲ってはこないようだ。
虫糸は上質な素材なので確保したいけど、繭でも見つけない限りすぐには入手できないだろう。確実なのは糸を出す生物のテイムだけど、もしもそんな生物がいたらどうしようかな?
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