20話 アオイの性格
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昼食後はもっと広い場所を探して魔法訓練を行うことにした。
あとで迷子にならないようにマップにマーキングをしておく。
3B仕様なのでオートマッピングがあってよかったよ。もっとも、方位磁針もGPSもないので現在位置が正確にはわからないのが残念だけど。
……コンパスはともかくGPSは衛星がないからあっても無意味か。
というか、アオイちゃんマシンにコンパスぐらいはあってもよさそうな気もするのだが。
「休憩したおかげかMPも少し回復しているな」
『飛べなくなったらレベルアップしてフル回復する』
「それは奥の手にとっておこうか。なにがあるかわからないから」
キャラクターレベルと3Bでは呼ばれる個人のレベルは、必要な経験値さえ貯まっていれば好きな時に上げられる。
クラフトレシピの解放条件にも必要なキャラクターレベルがあるものもあるがそれは現在、MODで関係なくしてあるので俺にとってはそこまで重要なものではない。
経験値だけならアオイちゃんロボでの二回の戦闘でかなり入ってはいる。
もう10レベルぐらいには上げられるはずだ。入手経験値も大きくなるように鯖設定していたおかげだろう。
アオイちゃんが言ったようにレベルアップすればHPやMPその他がフル回復するんでそこまでは上げないが。レベルアップでも俺の状態異常は治らなかったしな。
それでも俺が病気で死にそうになった時に使えばHPがフル回復できるはずなので、多少は延命できるはず。保険としてとっておくのは当然のことなのである。
魔法を覚えてもっと強くなったら、ゲートを探すついでに薬草も集めておこう。もしかしたら治療薬もクラフトできるんじゃないかという、かすかな希望のために。
エリクサーのレシピと素材が手に入れば一番なのだが。
◇
移動先は拠点である換金モノリスから20分ぐらい飛んだ草原。
かなりの速度で飛んだのでどれぐらいの距離を移動したのか正直不明だ。マップウィンドウには縮尺が表示されていないのでよく分からないのが難点である。
「やはり人型の時よりも戦闘機形態の方が速く飛べるみたいだ」
『でも俊足とかの高速移動系のスキルを覚えれば人型でももっと速く動けるようになるかも』
「ロボの移動速度までスキルで変わるってのはスゴイな」
3Bでも操縦系のスキルがあって、命中率や燃費はスキルで変わったけど最高速度はそこまで劇的に変化しなかった。
アオイちゃんはやっと人型になれるようになったから、というのもあって言ってるのかな。
それとも本当にマッハで地上を走るようなロボがいたりするのだろうか?
3Bでは移動速度を向上したければ搭乗機の速度を上げる方が確実。クラフトの出番なのである。
「素材と燃料があれば移動用の乗り物をクラフトするんだが」
『そんなこともできるの?』
「もちろん。ただ、そのどちらもない現状では無理だ」
あるのは木材だけ。
いくらMODで木材クラフトのレシピが豊富とはいえ、それだけではキツい。せめてゴムが見つからないと。
自転車を作れたとしても木のタイヤでは乗る気にはなれん。
水辺なら3Bの水上移動の入門船であるスワンボートをクラフトするのに。あれなら燃料もいらないからこの状況でも役に立つだろう。
艦艇も造れる3Bだけど、最初はスワンボートからである。
プレイヤーたちかも愛されていて、カスタムしたスワンボートによるレースも行われるほどだ。
シャークマウスや撃墜マークの描かれた、とてもとても白鳥とは思えないボートが並ぶあの光景は楽しかったなあ。
『この辺でいいかな。マシンナリィ解除するからコズミは注意して』
「え? ちょっと待っ」
止める間もなく、俺を操縦席に乗せたままアオイちゃんは元の美少女に。
俺の脳裏によぎったのは、体内に俺が残ってアオイちゃん重傷や、体内には残らずにアオイちゃんは無事、ただし俺は操縦席のあった高さに残されたままなので落下して死亡、等の最悪の光景。
「コズミ?」
「……ちゃんと立ってる?」
ふう、どうやら変身解除する時にはパイロットも地面の上に移動させられるみたいだ。
大きなため息をつきながら俺が心配した内容を説明すると、アオイちゃんは顔色が真っ青になってしまった。
「そんなこと考えもしなかった」
「まあ、図らずもテストできたけど、俺も死んだかと思った」
「ごめんなさい、コズミ。私、考え無しに突っ走っちゃうことがけっこうあって……」
だろうなあ。
俺と会うことになった、この試練に挑戦するのもクラスのみんなが止めたけど聞かなかったようだし。
「勇者らしいっちゃらしい。だけど俺が止めた時は従ってくれ」
「うん!」
今にも泣きそうだった子からの元気な返事につい、よしよしとその頭を撫でてしまった。
あれ、そういや国によっちゃ頭を撫でるのはマズイんだっけ?
でもアオイちゃんも怒ってないようだしまあいいか。
「えへへ」
「どうした?」
「なんかコズミ、お父さんみたいだなあ、って」
ぐふっ。
やはりアオイちゃんも俺のことをそんな年齢だと!
娘のような子の子宮に俺は、俺はぁっ!
……いかん。考えないようにって決めたばかりなのにどうしても考えてしまう。
確認する方法がないでもない。
妊娠中はマシニーズに変身できるか、変身して違和感がないのか聞いてみればいい。
だが! だがしかし! だがしかしなのである!
そんなデリケートな質問をできるワケがなかろう!
年頃の少女を相手にそんな質問ができたらそれこそ勇者である。
勇者はアオイちゃんなのだが。
はあ。再びの大きなため息。
若くして死ぬもんだと思い込んで生きてきただけに、これは意外とダメージが大きいな。いや、喜ぶべきことなのかもしれない?
「コズミ?」
「……俺もアオイちゃんみたいな可愛い娘がほしいよ」
褒めたはずなのにアオイちゃんはぷくぅっと頬を膨らませた。
なにやら怒っているっぽい。
少女の導火線はわからんな。
でもその仕種、ちょっと可愛い。
「コズミ、私は娘じゃなくてパートナー!」
「アッハイ」
「いずれ夫婦となるんだから、そこは娘じゃなくて妻! もしくは嫁! カミさんでも可!」
「なぜそうなる?」
俺の質問にアオイちゃんは過去のスウィートハートはマシニーズと結婚したから、といい笑顔で答えてくれた。
「それって、俺が別のやつでもスウィートハートなら結婚するってことだろ。役職がそれなら誰でもいいと言われて、ハイソウデスカと納得できるか!」
そりゃアオイちゃんみたいな美少女に求婚されて悪い気もしないが、それとこれとは話が別なのだ。
「ごめんなさい」
「いや、いい。アオイちゃん、ああいう台詞は本当に好きになった相手に言ってあげなさい」
うひー。
未婚のおっさんがなに語っちゃってんのさ!
ハズい。ちょーハズい。
この場でゴロゴロゴロゴロと転げまわりたい気分だ。
「うん! コズミ以外には言わないようにする!!」
こっちはわかってないな。
パパと結婚すると言われたお父さんの気持ちにしかなれない。
彼氏ができたら、すぐに態度が変わるんだろうなぁ。それを想像するだけで凹む。凹凹なのである。
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