18話 初めての共同作業
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アオイちゃんロボ――いい名前を考えたい――に俺が乗り込んだことで獲物を奪われたと思ったかのか、モニターに映る巨鳥はこちらに向かって大きな鳴き声を上げて威嚇している。
「あちらさんもやる気だな。いけるか?」
『もちろん!』
気合十二分のアオイちゃんは俺が操縦しないでも見事な空中機動で巨鳥に近づき、嘴など気にもせずにその顔面に鋭い右ストレート。……勇者だから聖拳突きかな?
『マシニーズ、パぁンチ!』
巨鳥はギリギリで回避する。
むう、まだ空中での格闘戦は早かったか。
当たってないのに大きな羽根が散らばっているのはパンチの風圧によるもの? 当たったら倒せたかな。
というか、とゆーかだね。
「いやお前、スキル使えよ!?」
『あ』
せっかく人型になったんだからその最大の利点であるスキルや必殺技を使わなければテストにはならないならない。
アオイちゃんは武器を使わない〈無手格闘術〉スキルの類を習得していないから今の攻撃では意味がない。
いや、今のでスキルが解放されてたら意味はあるかな?
「まあ、こうなったらスキルの前にこっちを試してみるとしよう」
使用する武装を選択して巨鳥をロックオン。
操縦桿の引き金を引くと、アオイちゃんロボの頭部からバババッと弾丸が発射されていく。
光線ではない。実弾だ。
そう、バルカンである。
ロボットアニメ的な通称での機関砲。「ガトリング砲じゃね?」とのツッコミは無粋の極みに他ならない。
マキにゃんわかってるなあ。ちゃんとコメカミの辺りにつけてるよ。
『こ、これは?』
「バルカン。残弾数があるから注意して。使う時はバルカン! と力強く言うとなおよしだ」
『うん。ブぁルカン!』
ノリがいいねアオイちゃん。
そういや銃弾の補給ってどうなっているんだろ。エネルギー弾はMP消費だから回復できるのはわかっているんだけど。
もしかしたら使い切ったら弾丸をクラフトしなきゃいけないんだろうか?
「弾は使いきらないでね。アオイちゃん、どこか変わった感じとかする? 骨密度が減ったとか」
『骨密度?』
「いや、いい。バルカンの威力はビームより弱いようだ。そろそろ止めておこう」
『了解』
もしかしたら実弾系はアオイちゃんの骨を打ち出しているんじゃないかな、なんてなんて怖い考えになってしまった。違うといいのだが。
威力は弱いと言ったがそれはビームに比べてのこと。ツインアイの視線とほぼ同じ射線で飛ぶバルカンは命中率も高いようで、巨鳥は血塗れで高度を落としていく。もはや戦う気力もないようですでに逃げにかかっている。
「それじゃ、スキルはなにを使おうか?」
『光線スキルをアンロックしてレベルも上げた。それで覚えた必殺技を使いたい』
「わかった。一人でできるか?」
『ううん。これはコズミといっしょにやりたい。出来損ないが使う初めての必殺技だから』
初めての共同作業をイメージしてしまうのは俺が意識すぎだろう、きっと。
アオイちゃんの意思によって、モニタに表示される使用武器の選択が自動的に必殺技に切り替わる。
「トリガーは俺でいいんだな。いくぞ」
『うん!』
ちなみにさっきから使ってるのは右の操縦桿の引き金。左の操縦桿の方も使えば二種類の武器を同時に使うことができる。
武器選択を設定すればもっと多くの同時使用も可能だ。やる必要を今はまだ感じないが。
ロックオンした巨鳥に右トリガーを引くと、戦闘機モードの時と同じように二本のビームが発射された。
『スパイラルブルー!』
力強いアオイちゃんの叫びと同時に二本のビームは寄り合い、ねじれ合って一本の大きな、二本のビームが合わさったよりも太いビームとなる。色も白っぽい色から青に変わったごん太ビームが巨鳥を貫い……え?
巨鳥を上回る太さのビームが一瞬で目標を消し去ってしまった。
ヤバい。これ強すぎる。
これでは素材が手に入らない。ドロップもなしか?
野生動物がなんか持ってるってのはリアルで考えたら変だけど、チュートリアルにならばあっても……やっぱり落ちてこないか、残念。
「MPの消費は……かなり大きいな」
『うん。成長ポイントを多めに割り振ってたくさん増やしてあったのに、もうあと一発を放てそうにない』
「いったん着地しよう。飛んでいるだけでもMPが減る」
すぐにアオイちゃんは換金モノリス付近に着地してくれた。これでMP切れになっても墜落しないで済むだろう。
それとももしかしてMPがゼロになったらロボから戻ってしまうのだろうか?
変身しているだけではMPの消費はなかったようだから大丈夫なのかな。
「順序が逆になってしまったけど、軽く動いて各部の動作確認。まずは歩いて」
『今更な気がする』
そう言いながらも素直にゆっくりと歩き出すアオイちゃんロボ。
やはり振動はないな。巨大ロボが歩いたら操縦席はかなり揺れそうだけど、戦闘機時と同じくその辺を吸収するシステムがあるのだろう。
……少しぐらい揺れたほうが乗ってる感じがすんだけど、俺の貧弱な身体じゃ持ちそうにないから贅沢は言えない。
「続いてその場でジャンプ」
『飛んでは駄目なのね』
軽く膝を曲げてそれからジャンプするアオイちゃん。それだけの動作なのにけっこう高く跳んだ。30メートルぐらいだろうか?
「飛んでないよね?」
『MPは減ってない』
着地も衝撃なし。じゃなきゃ俺が天井に叩きつけられていただろう。シートベルトもないのだから。
本当に操縦席が高性能すぎるな。臨場感が完全に欠如してるけど。
その後も、しゃがみ、伏せ、匍匐前進、体育座り、敬礼、オイッス等の3Bにおける基本動作を試してみた。
各関節ともなかなかの可動域のようだ。
3Bのロボには“バランス”って転倒やその他が発生しにくくなる数値があるんだけどそれも高いな、これは。
「あとはもっと広い場所か、空中でだな。MP回復のためにもそろそろ昼食にしよう」
『うん。コズミのごはん美味しいから楽しみ』
ハードルを上げないでくれっての。インスタントラーメンで済まそうと思っていたのに。
食料の補給もなんとかしたい。
チケットを使ってショップを誘致すればなんとかなりそうだけど、ここはチュートリアル。
また戻ってこれるかわからないから簡単にはチケット使いたくないんだよなあ。
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次回は学園編
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