17話 変形! アオイちゃんロボ
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チャットの炎上はまだ続いていた。
というか加速してしまったので放置することにする。なにを書き込んでもヤブヘビになりそうだ。
「それじゃ拠点防衛ができたら軽く新しいスキルを試して、それから他のスキルの習得をしよう」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げるアオイちゃん。すでに昨日の服に着替えていてやる気十分だ。
……洗濯したいなあ。
早く服が作れるように素材とクラフトレシピを集めたい。
だがまずは拠点の防衛が先だ。
アオイちゃんに周囲を警戒してもらいながらクラフトを行う。
まずは柵。トゲトゲしいバリケードをいくつも作って、それを拓けた周囲に配置していく。
空からくる鳥には通用しないので気休めだがないよりはマシだろう。材料の木が硬いので耐久度も高いし。
「これをすぐに大量に作ってしまうなんてコズミはスゴイ」
「ここは素材がすぐに手に入るからね」
「そういう意味じゃない」
続いて重要な換金モノリスのガード。
ここは空からの襲撃にも備えたいので別の物をクラフトすることにする。
本当は昨日のうちに作りたかったけど、大きすぎて家の中じゃ無理だった代物だ。
「……箱?」
クラフト予定のワイヤーフレームを見てアオイちゃんが呟いた。ワイヤーフレームもちゃんと見えるのね。
これはたしかに箱。収納ボックス(小)である。サンドボックスゲームには必需品のあれだ。
収納オブジェクトでは一番小さいが見た目に反して大きなアイテムも収納できる。ただし、収納数は少ない。
「これは準備段階。これの上位がほしいんだ」
今度は解放されたばかりのクラフトレシピである収納ボックス(中)をクラフト。さらに収納ボックス(大)を作る。
「大きな箱」
「まだまだ3Bじゃ小さい小さい」
ここから先はバニラじゃ他の素材が必要なんだけどMOD特盛り仕様の俺ならさらに木でクラフトできる。
あ、バニラってのはMODの入ってないプレーンな状態のことね。アイスクリームの基本形に例えられて、MOD無しをバニラって言うんだよ。
次にクラフトしたのはロッカーだ。バニラだと金属製だけど、MODのおかげで木製ロッカーである。
よくあるタイプのロッカーが木でできている、って見た目だ。ネームプレートがついていて誰が使用しているかわかるようになっており、その人物しか開けられないようになっている。まあ、破壊すれば中のアイテムは出てくるんだけどね。
このロッカーをいくつも並べてフリートのロッカールームを作ったっけ。
だが目的はこれではない。チェスト、大型チェストと収納オブジェクトのクラフトレシピを伸ばしていってやっとできるのがこれ。
「すごく大きな箱……というか家?」
「コンテナだよ」
そう、コンテナである。
いくら収納ボックスがその見た目より大きな物を収納できるといっても、3Bには巨大ロボや巨大建造物のパーツなんかがあるのでそれが入るのは無理がある。
ってことで大型のアイテムはこのコンテナじゃないと収納できないのだ。
このコンテナは大型トレーラーや列車で運ぶことができる共通規格になっており、さらに派生でまさにアオイちゃんの言った家、つまりコンテナハウスが存在する。
コンテナハウスは中における家具に制限はあるが初期拠点としては優秀で、ロボや大型ユニットで家ごと持ち運びもできるため、ベテランにも愛用者が多い。
「これを換金モノリスの左右に並べて天井をつければ飛行生物に襲われても持ちこたえると思う」
「こんな大きな物まですぐ作ってしまうなんてコズミ、やっぱりスゴイ」
そりゃ激ユル仕様だからね。俺もこんな短時間でできるとは思ってなかったよ。
これなら簡易的な基地を造ってもよかったかな?
……ここに長居しそうになるから止めておこう。マキにゃんもチュートリアルって言ってたゆってたし。
「こんなとこでいいか。それじゃやろうか」
「うん」
アオイちゃんがたたたっと開けた場所の真ん中付近に移動する。あそこなら設置したオブジェクトに干渉しないで変身できるだろう。
「マシンナリィ!」
呪文かキーワードかわからないが昨日と同じ言葉で変身するアオイちゃん。
気合入っているなあ。昨日よりも声が大きいのは気のせいではないだろう。
『コズミ、早く乗って!』
「はいはい」
護符から聞こえるアオイちゃんの声に促されて戦闘機の操縦席付近に近づく。
「アオイちゃん、乗り込み用の装置があるかもしれないからそれをイメージして」
『え?』
「梯子か階段かそんなの」
『あ、これかな?』
うおおっ!
小さな円盤状の光る物体が発生して、俺の足元に降りてきたよ。
これが搭乗装置? さすがSF戦闘機だ。
ちょっと緊張しながら光の円盤に乗ると、それが音もなく上昇して戦闘機の操縦席へと運んでくれる。すでに二重ハッチは開いていた。
装甲に昨日ついた傷はアオイちゃんが言ったようにもう消えてなくなっているな。
「なるほど、これなら人型になれても乗り降りに困らない」
『早く早くぅ』
美少女――今は戦闘機だけど――に甘えた声で急かされるのはいいもんですなぁ。
そうオヤジくさいことを考えながら操縦席に乗り込むと、俺の指示を待たずにハッチが閉まって壁に外の景色が映しだされる。
「そんなにあせらなんでも」
『あんまり焦らさないで!』
「わかったよ」
左右の操縦桿を握ると再びアオイちゃんから『んにゃんっ』とまた甘い声。
なに、俺を誘惑してんの?
『やさしく、して』
なんだろう。
さっきから俺の精神にダメージが入るんですけど。
狙ってません?
「わかった。ゆっくりやるから」
『ううん、一気にやっちゃって!』
「いいのか?」
『コズミとなら怖くないから』
むう。たしかに一気にやっちゃった方がいいかもしれない。
主に俺の精神のために!
「たぶん空中での変形の方がよさそうだから飛びながら試すぞ」
『わかった』
地面に干渉して変形できないってことはないだろうけど、空中の方が無難だろう。あとでバンクシーンが使いまわしできるし。
アオイちゃん戦闘機が垂直離着陸できてよかった。でなければ滑走路やカタパルトを造っていたかもしれない。っていうか俺なら確実に造る。
失敗して落下した時のためにあまり高度を取らなくていいかな。
「この辺でいいだろう、いくぞ!」
変形のための操作方法もレベルアップしておいた〈操縦〉スキルのおかげでわかっているので、返事を待たずに変形開始。
操縦席にはギゴガゴという音もなくスムーズに変形完了してしまった。しかも飛んだままだ。
『やった! やったよ!』
「上手くいった、みたいだな」
機体の状態を座席付近のパネルに表示させてみると、戦闘機ではなく人型になっている。お、両腕もちゃんとあるようだな。モニターに大きな手が映っている。
『手がある! 足もある!』
「成功だ。どんな形かよく見たいんで、外に出してくれないか?」
『了解!』
変形によって操縦席上部ではなく正面になっていたハッチを開くと、円盤光がスイッとやってきて再び足場になる。
俺が乗ると円盤光は下ではなく上に移動を始め、アオイちゃんロボの頭部のまん前で停止した。
『どうかな? 私の顔』
「カッコイイな。ツインアイなのもいい」
美少女が変身したとは思えないヒロイックなデザインだったが、これはこれで良し!
空中に浮かぶ巨大な青色のロボの周りを円盤光がぐるっと一周する。けっこう自在に動かせるみたいだな、この足場。
「この円盤、もうちょいアオイちゃんから離せるか? 全体が見たい」
『うん』
アオイちゃんロボから離れた位置で円盤が停止した。ここからなら全身がよく見える。
うん、ちゃんとした人型だ。青い装甲が綺麗に輝いている。
全高は17、8メートルぐらいかな。わかってるねマキにゃん!
人型ロボの身長は人間の約10倍というイメージしやすいサイズがいい。
そして操縦席はやはり胴体にあったか。頭部にあれば子宮かと疑わずにすむのにすむのに!
考えないようにするしかないのか……。
っとそうだそうだ、せっかくだから携帯で撮ってアオイちゃんにも見せてあげよう。
こっちでは使えないのについ習性で持っていた携帯電話でアオイちゃんロボを撮影する。スマホではない。二つ折りのやつだ。
こんなことならデジカメを持ってきてればよかった。あとで忘れずにアイテムボックスにデジカメ入れておこう。
カシャカシャと撮影を続けていたら、急に円盤が動き出した。
理由はすぐにわかる。
『コズミ、私に乗って! また鳥がきた!』
昨日のよりは少し小さな巨鳥が襲ってきたのだ。
当然、俺の方を狙って。
アオイちゃんが気づいてくれたおかげで助かったよ。〈感知〉スキルをちゃんと習得してくれたおかげだろう。
無事に俺はアオイちゃんロボに再搭乗できた。
「さすがチュートリアル。テストにはちょうどいい、かな?」
『今の私は無敵! 負ける気がしない!!』
見せてもらおうか。
人型マシニーズの性能とやらを!
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