15話 レベルリセット
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泣きやんだ後のアオイちゃんのテンションの上がり方はものスゴくものスんゴくて、もう夜だと言うのに外に出て変形を試したいと張り切ってしまった。
「駄目だってば」
「本物の機神巫女なら、なにがきたって大丈夫!」
「あのね、解放はされてるけど、まだ習得してないからそのスキルは使えないでしょ」
「そうなの!?」
目に見えて落ち込むアオイちゃん。
さっき身体が治ると思った俺もこんな感じだったのかな。
諦めていたことがなんとかなると期待しちゃって、でもやっぱり駄目だったって。
「俺と同じフリートになったことで、3Bのシステムも使えるようになっているからレベルを上げてその時にもらえるスキルポイントを使えばスキルは習得できるようになるから」
「わかった。レベルを上げてくる」
「待ちなさいっての!」
そんなにすぐ確かめたいもんかね?
いつ死んでもおかしくない俺の方がのんびりな気がするのだが。
「夜は危険だろ。巨大なフクロウとか出てきてもおかしくなさそうだ」
「でも!」
「落ち着け! アオイちゃんは大丈夫でも俺は身体が弱いって言っただろう。休息が必要なの」
「あ……ごめんなさい」
ふう。やっとわかってくれたか。
でもこの分だと夜中に一人だけで外に出てレベル上げしてくるかもしれん。
アオイちゃんなら本当に大丈夫かもしれないけど、俺が心配で寝不足になりそうだ。
「一人で行くのも絶対にやめてくれ」
「う、うん」
この反応は考えてたな。
間違いなくそのつもりだったな。
説得しておかねばなるまい。
「安心しろ。俺が協力すれば一晩くらいの経験値はすぐに稼げる」
「本当?」
「ああ。3Bだとフリートブーストってフリートの仲間が近くにいるだけでステータスにバフがかかるシステムがある。自分のステータスをよく見てくれ」
もう慣れたのかステータスウィンドウをあっさり開いて確認するアオイちゃん。
フリートの仲間である俺がすぐ近くにいるから確実にブーストがかかっているはずだ。自鯖設定でもその距離を大きく取っていたし。
「って、数字も読めないか」
「うん」
「ええとな、各能力値の後ろに緑色で+いくつ、って表示されているのがフリートブーストだ」
「これかな」
この数値はなかなかに有用で、シングルプレイ用にNPCもフリートに入れることができるようになっているのもこのため。
さらに3Bには結婚システムがあり、結婚相手が近くにいるとカップルブーストがかかる。このバフはピンク色で上昇値が表示されその値もかなり大きいんで、3Bでは縛りプレイでない限り結婚推奨だ。
リアルの俺と違い、公式サーバーでのプレイキャラもちゃんと結婚していた。
フリート仲間の廃人プレイヤーキャラとの結婚も申し込まれたけど、俺は健康のために徹夜でプレイなんてできないからログインしてない時はお荷物になるんで断らせてもらったんだ。
それに3BのNPCは死んじゃうとイベントキャラ以外はそれっきりだけど結婚相手のNPCだけは復活させることができるから、強いのやお気に入りだったりするNPCを嫁&婿にするのが基本だったりする。
自鯖設定ではMODでちょこっと変更していて、公式サーバーではできなかった重婚や同性婚を可能にしてあるけど、その機能は使うことはなさそうだ。
公式サーバーでの嫁NPCのことはフリートのみんなに託してきた。
彼女には俺のプレイキャラの持っていた装備や愛機を渡してあるから、フリートのNPCとして活躍できるだろう。
母艦の艦長を任せられるスペックぐらいはある優秀なNPCだったからな。
「ウィンドウが見れても、読めないのは不便だな。レベルアップしたらまず日本語のレベルを上げた方がいいだろう」
「でも変形がほしい!」
「両方できるぐらいにスキルポイントは入るから安心してくれ」
うちの鯖は激ユル設定だからね。
あ! そうか。
このままレベルを上げたら今のレベルに上がる分までのポイントが損になるな。
「アオイちゃん、1レベルからやり直そう」
「え?」
「俺と同じシステムが使えるようになったんだから、1レベルから成長しなおした方が同じレベルになった時に圧倒的に強くなれる」
アオイちゃんの前のシステムだと、レベルアップ時に自動的に能力値の上昇が振り分けられ、スキルの習得やレベルアップが行われていたみたいだ。
3Bのポイントを振り分けるシステムに換算した場合、今の激ユル設定より多くポイントを獲得していた計算にはなるまい。
「まず、現在のアオイちゃんの能力値や習得スキルとそのレベルをメモっておこう。スキルの取り忘れも防げるし、強くなったのが実感できる」
「わかった。でも……」
「書くのは俺か。読めないんじゃ仕方ない」
パソコンで3Bをプレイしてた時みたいにウィンドウをスクリーンショットできれば楽なんだけどなあ、と思いつつ使っていなかったノートにアオイちゃんのステータスを記入していく。
「光線ってスキルも解放できるな」
「そのスキルは謎のスキル。機神巫女用だってことしか判明していない。光の線だから線を書くスキルだと推察されている」
「字面だけ見たらそうなっちゃうのか? これはあの巨鳥を倒した攻撃のスキルだよ」
俺が書くノートの文字を興味深そうに覗き込んでいたアオイちゃんがまたビックリした表情で俺の顔を見る。
「光線ってのはビームのこと。光学兵器ってスキル名じゃないのは3Bだと光線技を使う生物もいるからなんだけど、そっちにもいるのかもしれないな」
「コズミはやっぱり賢者かもしれない」
「ちげーよ」
スキル内容はこんなだった。
◎◎◎◎◎◎
〈光線〉スキル
機神巫女専用スキル
光線の威力、命中精度が上がる
人型マシニーズ時にのみ使える必殺技を覚える
◎◎◎◎◎◎
必殺技?
やっぱり人型の方が強いってことなのか。
でも逆にこれを覚えるってことはアオイちゃんが人型になる可能性がさらに高くなったってことになる。
「コズミ、私は早く日本語を覚えたい。その表示を読みたい」
「わかった。本当にレベル1になっちゃうけどいいな?」
「うん。コズミを信じる」
「任せてくれ。それじゃ、言うとおりに操作を……念じてくれ」
3Bでは一キャラ毎に一回だけ、無条件でキャラクターレベルを1に戻して、ポイントの振りなおしができるようになっている。再度振りなおしたい場合は特別なアイテムが必要だけど、今はそれはいいだろう。
1レベルになることでそれまでに使ったポイントは再計算され、そのサーバーの設定にそった数値になるのだ。
「これでいい? なんか身体から力が抜けた気がする」
「うん。ちゃんと1レベルになっているよ。勇者や日本語のスキルはこの時点でもちゃんと持っているな」
ポイントで習得したものじゃないからなんだろうか?
まあいい。1レベルでも能力値を上昇させることができる成長ポイントと、スキルの習得やレベルアップができるスキルポイントがちゃんとある。これを使えばアオイちゃんの願いは叶うだろう。
それにしてもキャラクターレベルが同じ1レベルでも俺の1レベルの時ステータスとは大違いの数値だ。
まさに生まれながらの勇者ってことか。
「経験値もちゃんと残っているから、さっきと同じレベルにまですぐ戻れるな」
「え、またしばらく1レベルのままじゃないの?」
「説明不足だったか。3Bだと経験値が必要な分貯まっていれば、好きな時にレベルアップできるんだよ」
「先に言ってほしかった」
あれ、それじゃアオイちゃんはしばらく1レベルになってもいいぐらいに俺を信用してくれたってこと?
その期待を裏切らないようにしないといけないな。
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