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13話 アオイの秘密

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 風呂からあがると、アオイちゃんはじっとテレビを見ていた。

 電気ガス水道だけじゃなくてテレビもちゃんと映るようだ。異世界って感じは薄れるけれどありがたい。


「面白い?」


「よく、わからない。でも日本語が聞けるのは嬉しい」


「そうか」


 アオイちゃんの父親は日本人らしいからな。アオイちゃんの名前も日本人みたいだけど、あっちの世界でも珍しい名前ではないそうだ。

 タロウとかハナコが一般的な世界なんだろうか。

 ま、そんなことは置いといて、さっきの話を進めよう。


「アオイちゃん、俺のフリートに入らないか?」


「フリート?」


「ええと、パーティって言えばわかるか? 同じチームに入らないかってこと。と言っても今はまだ俺一人しかいないフリートなんだけどね」


 フリートに入ってくれれば、アオイちゃんのステータスも確認できるし成長率もアップするはずだ。

 アオイちゃんのMPがわかるようになれば、マシニーズモードでも動きやすくなるだろう。

 さらに、俺と同じMOD3B仕様になれば強くなるのは確実。


「うん。コズミは私のスウィートハート。同じフリートに入るのも当然」


「あ、ありがとう。じゃ、申請を送るから……ウィンドウ、出てる?」


「ウィンドウってこれ? なんて書いてあるか読めない」


「ああ、そっか」


 会話はできても日本語は読めないのか。

 3Bの言語設定にビッゲスト大陸語はないだろうしなあ。

 あ、でも「はい/いいえ」は平仮名だから紙に書いて……その前に試すか。


「とりあえず、了承するって念じてくれないか?」


「こう?」


「おっけおっけ。フリート勧誘申請が承認されたよ。これでアオイちゃんはうちのフリートのメンバーだ」


 文字が読めなくてもなんとかなるのか。

 スキルポイントが余ってたら〈日本語〉スキルをレベルアップしてもらえばいいな。


「よろしくお願いする、コズミ」


「よろしく、アオイちゃん」


 フリート名は初期設定のコズミフリートってままだからアオイちゃんが〈日本語〉レベルを上げる前に別のものに変更したい。


「今からアオイちゃんのステータスを見るけどいい? プライバシーの侵害だって嫌なら断ってくれていいから」


「ううん。コズミには私の全てを知ってほしい」


「ありがとう。アオイちゃんもステータスウィンドウを出してくれ。一緒に見よう」


 アオイちゃんに許可をもらったのでステータスを確認。

 フリートのメンバーは仲間のステータスを自由に見ることができる。3Bのステータスには200文字分のフリースペースがあって、そこに自由にキャラ設定を書き込めるようになっていた。それを見るのも楽しかったなあ。


 アオイちゃんはさすが勇者というべきなかなかの数値で、スキルも戦闘に向いたものを覚えている。

 ん?


「池袋葵? これがアオイちゃんの本名だね。池袋さんか」


「イケブクロ……そう、たしかにお父さんはそんな姓だった! ありがとうコズミ。私は読めなくて忘れていた」


「むこうでもステータスは見ることができたんだな」


 そうじゃなきゃ〈勇者〉スキルの持ち主だってこともわからないもんな。ウィンドウはなくてもどうにかステータスを知る手段があるのだろう。

 その〈勇者〉スキルもちゃんとアオイちゃんは所有していた。スキルレベルは4か。


◎◎◎◎◎◎

〈勇者〉スキル

 勇者のみが所有するスキル

 各ステータスにプラス補正

 レベルアップにより専用の魔法を覚える

 聖剣を使うことができる

◎◎◎◎◎◎


 うん。よくある勇者っぽい。特定の相手への特効はないのかな?

 聖剣ってのはどんな武器だろう。アオイちゃんは装備してないが、俺がクラフトすることができればいいのだが。

 他のスキルは〈剣術〉〈魔法〉〈火魔法〉〈頑丈〉……〈耐性・空腹〉ってのが泣かせる。まさか8組生徒の全員が持っていたりしないよな。


 で、〈機神巫女〉ってのがマシニーズのスキルか。


◎◎◎◎◎◎

〈機神巫女〉スキル

 機械の女神デア・エクス・マキナが与える女性専用スキル

 マシンナリィすることでマシニーズになることができる

◎◎◎◎◎◎


 あんな変身するなんてよくわからんスキルだよなあ。

 んん?

 あれ、このスキルって!


「アオイちゃん、解放(アンロック)されてるスキルで変形ってのがあるんだけど」


解放(アンロック)? 変な形って、わかっているけどスキルでまで表示されるなんて……」


「ちげえよ!」


 思わずツッコんでしまった。いくらなんでも変な形ってのはないだろう。変な形って!

 む?

 それって日本語でスキル名を認識しているからこそのボケだよな。

 本名の時も読めなかったって言っていたのに。


「アオイちゃん、もしかしてスキルの表示ってむこうでもコレ?」


「うん。同じ。ただ、これみたいにスキルの効果までは詳しくわからない」


 なに、漢字でのスキル名しかわからないってこと?

 それじゃあんまり役に立たないような。経験則でこのスキルはこんな効果って判断しているのだろうか。


「それじゃ読んであげるからよく聞いてくれ」


◎◎◎◎◎◎

〈変形〉スキル

 機神巫女専用スキル

 マシニーズ時に変形することができる

◎◎◎◎◎◎


 俺が読み上げた内容によくわからない、といった表情のアオイちゃん。首を傾げるそのアクションは、あざといが可愛い。


「へん、けい?」


「そう、変形。ちょっと待ってて」


 アオイちゃんをリビングに残し、俺はある物を探す。たしかまだ捨てずに取ってあるはずだ。

 っと、これだ。

 子供の頃に買ってもらった変形玩具。戦闘機からロボットに変形する物で、かなり売れた人気の品だった。

 これを戦闘機形態でアオイちゃんの前に持っていく。


「これは?」


「おもちゃだけど、変形ってことの意味がよくわかる逸品だよ。よくよくよーく見てて。これが!」


 カチャカチャとパーツを可動させ、戦闘機形態からロボット形態へ変形させる。

 アオイちゃんは「え? え!?」と、驚愕で目を大きく見開いた。


「こうなる!」


「出来損ないが……人の形になった!」


「出来損ないじゃないっての。さっきのは空を飛ぶ形。アオイちゃんと同じ、ね。これでわかったでしょ。変形ってのは変な形じゃなくて、形を変えられるってこと」


「形を……変えられる?」


 渡した玩具をまるで宝石かのようにそっとさわりながら震えるアオイちゃん。

 相当ショックだったのだろう。ぶつぶつとつぶやきながら熱心に玩具を観察している。


「こ、コズミ! ということはまさか、もしかして!?」


「そう。アオイちゃんも変形できる。断言はできないけれど、たぶん人型に」


 あのSF戦闘機が変形するとしたら人型だろうってデザインだったもんな。

 手首と顔を上手く隠していたから、あれの設計をした人はよくわかっている。あ、人じゃなくて女神なんだっけ。


 アオイちゃんは感極まってぽろぽろと大粒の涙を落とす。

 泣かせてしまったけど、これは慌てることはないよな?


「出来損ないは……出来損ないじゃない」


「それどころかむしろ、変形というアドバンテージを持っている優れたマシニーズだよ」


「あり……ありがとうっ、コズミ!!」


 アオイちゃんが俺に抱きついてきて、そのまま声を上げて泣いた。

 美少女に抱きつかれて俺は内心焦りまくっていたが平常心を装って胸を貸し、やさしく背中をぽんぽんし続ける。


 ……ああ、いい匂いだな。



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