小説を書くなんて、マジありえな~い!
サブタイトルの通り私が小説を書くなんて、マジありえないことでした。
小説だけではありません。
私は文章を書くことそのものに、苦手意識を持っていました。
思えば小学生の頃、その苦手意識の元凶になる出来事があったような気がします。
そんな私にとってのトラウマデーの記憶を書き記します。
当時私の通っていた塾の国語の授業、その中で作文をするという宿題が出されたことがありました。
それは私にとって人生で最初の作文であり、それまで簡素な短い文でしか、相手に物事を伝えられなかった私にとって、それは大いなる挑戦でした。
今でも覚えている作文のテーマ。
"好きなように文を書く"
これが当時の私を苦しめました。
好きなようにとは言っても、私には書きたいこともなく、主張することもなかったので、書くべきことを想像することすらできません。
課題を持ち帰り、頭を悩ませた私が出した結論は、今思い出しても顔から火を噴き出しそうなくらい、強烈な黒歴史として、私の中でくすぶり続けています。
当時の思考プロセスを思い出すことは、今の私にはもうできませんが、私がバカであったという事実は、この黒歴史をもってその証明となるでしょう。
私は当時人気だったとあるロールプレイングゲームのシナリオを、丸パクリしたものを、なんの照れもなく全力で書いたのです。
人気作〇ァイナル〇ァンタジーシリーズは、当然私の周囲にもプレイヤーが多く、同じ授業を受けていた学友達も、ご多分に漏れずその多くがプレイ済みでした。
そのことに思い至らず、発表した時のみんなの反応がどうなるかなど、想像もしていなかった私は、発表の当日、国語の授業の間、ワクワクしながら自分の書いた作文を握りしめていました。
あることに気づくまでは……。
一人、また一人と作文が発表されていき、それを聴いていくにつれて、少しづつ私はあることに気づいていきます。
それはボンクラであった私が気付くほど顕著な傾向、というか出された課題の正確な意図でした。
ストーリーを描いてる人間がいない!!
そうですクラスメイトのみんなは、出された課題の意図を正しく理解し、身の回りの出来事や、自分の好きなもの、将来の夢など、作文然とした作文を書いてきていたのです。
普段よくグループを作ってくだらない話などをしていた、仲良しの足立さんも田島くんも、キチンと作文を仕上げてきており、上質な黒歴史を作り上げて来ていたのはその時点では私ひとり。
足立と田島の裏切りにより、私は孤独でした。
その孤独感が私に冷静さを取り戻させ、そのおかげで私は、続いてあることに気づきます。
FFの丸パクリとかアカン! これ絶対アカンやつやん!!!!
私の発表の順番は刻一刻と近づいてきており、私の心臓の鼓動も激しくビートを刻んでいました。
何かしなくては……、予想される最悪な事態をなんとか回避しなくては……。
この時の私の頭はかつて無いほど、高速で回転していました。
既に私の前の席の子が 発表を始めており、残された時間はあとわずか。
一秒一秒時間は過ぎていき、取れる対策は思いつかず、私の社会的死はもうすぐそこ。全てを諦めかけたその時、私はひらめき決断します。
「 宿題忘れました」と言おう。
少し松岡先生に怒られるかもしれないけど、私のヒエラルキーのダメージはその方が抑えられる。
小学生の私がそこまで考えたかは定かではありませんが、当時の私がこれを発表してはいけないと思ったのは、この時の決断からもはっきりとわかります。
前の席の子が発表を終えて椅子に座ると、先生のふたつのeyesが私に合図を送ってきます。
「次はおまえだ!」という死刑宣告にも似た「はい! じゃあ次、KOMO~」という宣言を聞き、私は覚悟決めて大きく息を吸い込みました。
しかし私が発した言葉は、宿題を忘れたことを告げるものではありませんでした。
私は最悪の決断をしてしまうのです。
最後の最後までスカスカの頭をフル回転させていた私は、あることに気づきます。
宿題を忘れたと言えば当然怒られる。怒られるのは嫌だ!
でも作文を読むのも嫌だ!
なんとか作文を読まずに怒られずに済む方法はないものか……。
全く怒られない方法はないかもしれないけど、怒りを軽くすることなら、もしかしたらできるかもしれない!!
そうして導き出された最適解(笑)
それすなわち。
「 途中まで書いてきたんですけど、まだできてません」
まさに悪手でした。
ノータリンの私は、先生の次の言葉を聞き自分の耳を疑います。
「途中でもいいよ。出来てるところまで発表して~」
「!?」
こうして私は死刑を宣告されたのです。
まごまごするだけの私にギンっと眼力で訴える松岡先生。
その力強い眼力に、私は抵抗する気力をなくし、そのまま立ち上がってFFのパクりストーリーを読み始めました。
「 主人公は○○して次に◇◇して次に××しましたその次に△△すると次は□□しました次に※※と戦うとに◎◎を助けてお礼を言われました」
まさに地獄。
田島はニヤニヤしながらこちらを見つめていました。
この日は私が文章を書くことが大嫌いになった日で、文書に対する苦手意識が芽生えた日でもあり、そして後にアマチュア小説家になる私の心に火種が灯った日でもあったのかもしれない。