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被疑者  作者: 曽根悠
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プロローグ

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 プロローグ


 矢嶋久人がその計画を思いついたのは三月の初旬頃だった。

 あの日は七時二十分、久人は前日と同じようにマンションの扉を閉め、鍵をかけた。朝早いので彼の予想通りエレベーター内には他に誰もいなかった。

 久人は一階に降りた後、外の通りに出て大学へ向かい歩き出した。冷風が彼の露出した肌に当たったのを感じて、足を止めた。マフラーを巻きなおし再度足を運び始める。

 不良の溜り場となっていた公園は避けて久人は脇道を通った。公園には滑り台、ブランコ、ジャングルジムが位置していた。ジャングルジムの上に仁王立ちしていた黒ずくめの不良に目をつけた。その不良は前にも何回か見かけたことがあって、久人は密かに黒ずくめの男にカラスという渾名をつけていた。

 カラスの左手には水玉模様の水風船が握られていた。久人は水風船の行方が気になり、歩きながらもずっと男の手を凝視していたを覚えている。やがて風船を包んでいた五本の指は関節を伸ばし、水風船は投下された。

 ジャングルジムの下では三人の不良達が一人の男子生徒を地面に押さえつけていた。久人はそのことに今気づき、落とされた水風船は生徒の頭に命中し弾けるのだろうと理解した。予想図通りに水風船は生徒に当たったのを覚えている。

 そして、男子生徒の悲鳴と水風船が割れる音が同時に耳に入ってくた。目の前の出来事こそが虐めるという行為なのだろう、と久人は悟った。

 その刹那、久人の脳内にその計画が浮かび上がったのだ。

 計画に必要な道具はほとんど八ヶ月の間で用意した。だが一大学生が集められる物などたかが知れている。

 久人が始めて必須品のリストを書き出したとき、自分でもびっくりするような大きさで舌打ちした。到底集めることが不可能に近かったからだ。万一集まっても、この道具を使って上手く作戦成功を実現させることができるだろうか。

 可能性は限りなく零に近かった。

 現実主義者であり、楽観主義者でない久人はこの計画の実現を完全に諦めかけていた。

 



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