留念ウロボロス
━━━これは自らの尻尾を噛み繰り返しの象徴となったウロボロス(邪蛇)と留年の象徴ジャジャとの奇妙な話である。
1.疑う事を知らないジャジャへ
駅前の雑踏の中、頼りないほど青く透けた春空を睨みながらに駅のホームへと向かう。
「なんで俺が卒業式に出なくちゃいけねーんだ…。」
小声で文句を言いながら改札を通り、7時28分発の電車に乗り込む。
「オッス!ジャジャ!騙した事まだ怒ってんのか?」
ドアに近い席に座ったタイミングでモンブランの様な髪型の男に話しかけられる。
「おう、俊か。怒ってないと言えば嘘になるだろうな。」
何故俺が怒っているのかというと、俊こと松下俊介は昨日の夜、『お前も卒業出来るぞ』と甘い言葉を囁き俺を騙したのだ。
「ごめんて、缶ジュース奢るから許してちょ笑」まったく悪びれる様子のない奴だ。
「約束だからな。」
2.単位は全て教師次第
「どういう風の吹き回しですか。黎子先生。」
学校に到着し、直ぐに職員室へ向かった俺は冷たい声色で黎子先生に問いただす。
「貴方は留年する。そのままの意味よ。」
そう言い下卑た笑みを浮かべる。
「そうですか、今までありがとうございました。俺は絶対に留年しません。」
そう吐き捨て足早に職員室から退室する。ドアを閉める直前黎子先生、いや単位黎子は無表情でこちらを眺めていた。
4.缶ジュース
職員室から教室へ戻った俺は思わず目を瞬かせる。目の前にはファンタグレープの缶を持った俊介と肉塊━━いや、元クラスメイトの変わり果てた姿が在った。
「ヒィッ!た、助けてくれジャジャ!」あの奔放な俊介が恐怖に支配されている。俺は得体の知れぬ状況に恐怖を覚え思わず1歩後ずさった。
「何があった!」俺は震える声で咄嗟に説明を求める。
「グレープ、缶、ファンタ…。そう、缶ジュース買いに行ったら皆がこんな…こんな……。」恐怖で混濁した俊介の説明は要領を得ない。
「俊!しっかりしろ!誰だ?誰が━━」
「私よ。」
後方からの冷酷な声が教室に響く。
「黎子、貴様ぁあああああ!!!」
怒りに任せ黎子に突進する。
瞬間、黒板にぶつかり肺の空気が抜けていく。
「アハハハハハハハハハ!!!!!」状況を掴めず苦痛に顔を歪めていると女の甲高い笑い声が脳に響いた。
どうやら、吹き飛ばされたらしく、俺と黎子の力の差は歴然としているらしい。
途方に暮れていると、力強い声が聞こえた。
「ジャジャこれを!!」
ガランゴトッと固い何かが近くに落ちる。拾い上げてよく見るとそれは缶ジュースだった。
「俊ッ!?これはな━━」
「ジャジャ、よく聞け。これを使って黎子をふうい………」
力強い声は段々とか細くなり、そして途切れた。
「そうか、よく分かったぞ。俊、いや俺の大親友…。松下俊介!!」
「ふふ、その子も死んだようねぇ?」
その、まとわりつく声に静かな怒りを燃やす。
「あぁ、だが無駄話してる場合かな?」静かに言葉を告げると黎子は理解しかねるなと囁いた。
「俺自身が邪蛇になることだ!!」
俺は声帯が壊れて無くなる程叫ぶ。それに呼応するかの様にファンタグレープの缶が七色に輝き出す。
「俺は繰り返さない…。決しては再演しない。」
5.繰り返される日常の中で
俺は俊介の留念の篭ったファンタグレープを触媒に邪蛇を召喚し繰り返す世界に単位黎子を閉じ込めた。しかし、単位黎子の呪いだろうか…。俺は7時28分の電車に乗っても5限にしか高校に付けないくなってしまった。
・・・まぁ、俊介との日常を守ることが出来るなら5限から高校に行って留年するのも悪くないな。なんて、俺はセンチメンタルな気分に浸りながら今日も5限のチャイムを聞いていた。
じゃじゃがRTされる度タイムリープして留年する物語書きたかったけどいつの間にかバトルになってた。




