表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の彼方へと  作者: shakingshook
1/1

さあ進もう

先が見えない。

見えるのは、額から流れ出る汗のせいで見えるぼやけた世界だ。

先の長い、延々と続く道を僕は進んでいた。

ここは砂埃の舞う国【サリバント】

見飽きた風景を颯爽と馬で走る俺!...とは行かず、馬はどこかへ去っていき、走る気力も体力もなくなり、僕はたらたらと歩いていた。

食料はバックパックに入っている、わずかな干し肉と、しなびた葉物野菜、そして生命の泉から汲んできた水のみだ。

次の街まで、おおよそ二日といったところだろうか。

何もない道を歩いていると、自分がいったい何をしているのか、自分は誰なのか?そんな気違いを起こしてしまう。

厳密に言うと、何もなくはない。

そびえ立つ岩々、青い空、乾ききった空気、実に興味深いものばかりではないか。

僕は今、サリバントの南西にある貿易の街、【カトール】を目指している。

別に目的地という訳ではない。むしろ僕の旅に目的地はない。

先ほど...と言っても三日前だが、サカサカ村という場所にある酒場で会った若者に教えてもらって、目指すことになったのだ。

「道中、獣や魔物に気をつけろと言われたが、こんなつまらない乾燥地帯じゃ魔物も寄ってこないだろう。」と笑いながら僕は呟いた。

...途端に右のこめかみに痛みと、頭全体に衝撃がグラグラと駆け巡った。

右から左へ何かが物凄い速さで移動したのを見逃さなかった僕は、左に目を向けると、この辺りに頻繁に現れるという【マサグサ】がそこには居た。

マサグサは、黒い体に、鋭い眼光、鋭い牙と爪を持った四足歩行の全長1.5m程の魔物だ。

魔物図鑑にそう書いてあったから、そのはずだ。たぶん。

動きは、小便を制御する事を忘れるほどの速さだ。つまり驚くほど速い。

...少々盛ったが、素早いことに変わりはない。

―ギャウッ!!!

威嚇の意を表し僕の方に素早く走ってきた!と思ったが、意外にじりじりと近づいてくる。

臆病な性格なのだろうか。後で図鑑に書き足しておこう。

その間に僕は、背中に携えている片手用の剣を抜き、構えた。

僕の使っている剣は一般に流通している剣とは少し違く、長めに仕上がっている。

その分重いが、筋肉鍛錬にいそしんだ青春時代のおかげで振ることが出来る。

斜め下に剣を構え、相手の動きを窺う。

―1分経過

なかなか動かないマサグサ君に痺れを切らした僕は挑発をかけてみる事にした。

いいところに小石がある、投げてみよう!

そう思い屈んだ瞬間、奴は僕に向かって飛びかかってきた。

5mはあったはずの間合いを一瞬で詰めてきた。

気づいた頃には、目の前に鋭く汚れた爪があった。

僕は近づいてきた奴の腕を、開いている左手で掴み、横へ薙ぎ払った。

がら空きになった脇腹めがけて渾身の蹴りをかましてやった。

僕の脚は黒い気を帯び、見事に命中した。

「どうだ!おたんこなすじろう!」

おそらく自信に満ち溢れている顔で、叫んだ。

そして奴は、びくんびくんと震え、ドロドロに溶けていった。

無臭なその液体のような黒いドロドロは、数十秒もすると消えてしまう。

僕は、せめてもの敬意でそれが消えるまで見届ける。

この世界には大魔王、すなわち魔物がこの世に存在する原因が居る。

大魔王なんて、本の中にしか存在しないと思っていたけど、数年前に突如正体を現した。

元から居たのか、それとも本当に突然現れたのかは本人にしか分からないが、僕は元から居たのではないかと思っている。

なぜなら、その事変が起きた時、同時に天使やら精霊やら神様やら、いろんな魔物軍勢とは正反対の存在が現れたからだ。

こんな展開が臨時の出来事で起きるはずがない。

そしてそれと同時に、人類は魔物を倒す為の力を与えられた。

恩恵の強弱は人それぞれだが、僕はその中でも特殊であった。

そう、即席食品を5秒で完成させることのできる能力。

...ではなくて、悪魔から力を貰い受けてしまったのである。

瞬く間に地元の村では話が広がり、追い出されてしまった。

能力としては、悪魔になることができるくらいだが、圧倒的な力により自我を保つことが難しいのだ。

しかしながら基本的に悪魔的な身体能力を持っている訳で、使う必要もほとんど無いから安心だよ。

でも身体能力が悪魔的なだけで、お腹は空くし、喉も乾くし、便意もある。

まだ人間であることを実感できる素晴らしい機能に感謝するよ。

―サシュ

剣を背中にある鞘に納めると、また歩き始めた。

しばらく歩いていると、日も暮れようとしていて、辺りが暗くなっていき、空は橙色を含んだ懐かしさを覚える姿へと変わっていた。

ここらで野営の準備を始めよう。

昼間は暑かったが、夜は涼しいため過ごしやすい。

野生動物の皮で作ったテントを張り、中で干し肉を食べながら1日の日記を書く。

と言ってもここ最近は戦闘日記みたくなっていて、すぐできる武勇伝を書き留めていく本になり果てているような気もするが、事実なのだから仕方ないだろう。

とりあえず明日早朝に出発すれば、日が暮れる前には貿易の街【カトール】に到着するだろう。

日記を片付け、水を一口飲み、羽毛マントに包まり寝ることにしよう。

砂の国サリバントにてサカサカ村から、貿易の街カトールを目指す。

明朝に出発するため、眠りについた主人公。

無事に何事もなくたどり着くことができたら良いが...。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ