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黒の無効無双師  作者: 秋 悠理
序章 とある悪との邂逅
3/4

それが欲するものは

「あついよーあおくんーー!」

「仕方ないだろー?ほら、これやるから」

鞄の中から飲み物を取り出し姫愛に渡す。

それを勢いよく飲みほそうとする姫愛の様子を心配そうに見つめながら、ポケットからハンカチを取り出した。

「冷たい物一気に飲むと体に悪いぞ・・・ほら、口の端からこぼれてるから」

全く、といいながらどこか楽しそうに姫愛の口をハンカチで拭いていく。

目をつぶりながらされるがままになっている姫愛の口周りをポンポンと拭きながら、ふと前方に視線を向けた。

見える光景はなんてことはない普通の日常を切り取ったようなものだ。

しかし、碧の目には何かが引っかかって見えた。

その変化に気づける者は相当な実力者か、もしくは・・・。

僅か過ぎる空間の綻びを目ざとく見つけた碧は、辺りに神経を集中させた。

(半径1キロ圏内に怪しい奴はいないな・・・。てことは、常時作動型の魔術トラップってことか。相当な魔力量の手練れだな)

この世界には魔法という概念が存在し、実際にそれを行使しこの世界に多大な影響を与えることも可能だ。

しかし、それができるのは相当な実力者であり、世界に数人いる程度と言われている。

殆どの異能を扱う能力者達は魔術使いと言われ、先程の数人の魔法を行使できる者を、魔法使いと言う。

碧の判断はこのトラップを仕掛けたやつは魔法使いの領域にあと少しで入る実力を持っているというものだ。

(さてさて、これは愉快な状況だな。まあ、敵にトラップを悟られた時点でこいつはまだまだ魔術使い止まり。なんとかなるだろ)

かなり楽観的な思考に落ち着いた碧は、黙り込んで考えていた碧を心配そうに見つめる姫愛の頭を撫でると、目の前のトラップを見つめた。

「姫愛。少し離れててくれ。すぐ終わるからよ」

なんの説明もない碧の言葉にこくりと頷くと、少し距離を置いた。

碧は右手を前にかざす。瞬間、暴虐的なまでの力の奔流が碧の右手に纏わりつき、数秒程で消えた。

そして、碧の手には真っ黒な刀が握られていた。

「通常の理から外れてるもんならこれでなんとかなるはずだけど・・・」

約3メートル前方へ一息に跳躍すると、綻びに向けて刀を振り下ろす。

すると、隠していた力が解けたらしく途端に大きな力を感じすぐに消えた。

(なるほどな・・・術自体には隠密性がなくて、隠形の魔術まで使ってたのか・・・こりゃあ相当なやつだな!)

瞬間的に上がったテンションを抑えつつ、周囲を見渡す。

冷静な思考を保ちながら、とある力による索敵を続ける。

隠密性がないということは、それを欠いてでも狙ったものを壊すことに特化している力ということだ。

そして、目的はそれだけじゃない。

「俺の力量を見ようって腹づもりだな・・・」

右手に持った刀を地面に突き刺す。

「望み通りに見せてやる。見物料はきっちりもらうがーーー」

瞬間、突き刺した刀を中心として円状のサークルのようなものが広がっていく。光を放ちながら広がるそれは、半径10メートル程で止まった。

ニヤリと笑んだ碧は、左手で指を鳴らす。

その音とともにサークルから光がーーー爆ぜた。

とてつもない閃光と衝撃が辺りを覆い、地面は抉れている。

そして・・・。



「ほう・・・細っこい見た目のわりに、とんでもない強さを纏っているな・・・。あれは、楽しそうだ!!」

巨大な体躯の男、王我が隠しもしせずに闘争心を燃やしていた。

先程の閃光が和らいだ場所から碧の姿が伺えることからするに、ちょっかいをかけているのは王我なのだろうか。

碧のいる場所を再度確認し、その場から一息に跳躍する。

巨大な体躯が一つの砲弾のような速度で碧達に迫っていく。



「おいおいおい。正体はこんな感じのやつだったのか・・・使う魔術と似合ってなさ過ぎだろ」

先程の魔術はかなりの繊細さが求められるものだ。それだけに、王我の纏う雰囲気から繊細さから離れた戦闘スタイルに思え少しばかり戸惑う。

(見た目だけで判断して思考停止になるのは馬鹿だ。あらゆる可能性を考慮しとかねーと・・・てことは)

思案顔の碧に対して、にかっと大きく笑む王我。

「強大な力に溺れないか!!いいぞお前!!今回は当たりだな!!」

「ハズレの間違いじゃねーのか?」

両足に力を入れ瞬間的に加速。王我の懐に入りこみ、鳩尾に右拳をめり込ませる。

「ーーーっ!!」

一瞬息が詰まった王我の反応を見ると、左手でとある魔術を発動させる。

左手付近の空間がひび割れ、刀の鞘のようなものが現れる。

それを掴みながら、勢いよく引き抜き王我を斬りつけようと振り切る。

「流石に避けるよな」

すんでのところで避け距離をとった王我に対して、余裕のある笑みを見せる碧。

「舐められたものだが、その勇気は称賛ものだな!中々肝が据わっている。それに・・・」

「あんたもなかなかの反応だ。だからこそ、それは破壊させてもらったぜ」

みると、王我の腰にあった装飾品の一つが破壊されていた。

「それは魔術を遠隔操作で発動する為の触媒だ。おそらくだが、さっき無効にした魔術はあんたが仕掛けたものじゃない」

「やはり勘もいいか・・・!」

獰猛な笑みを浮かべた王我は、壊された装飾品を地面に放る。

その瞬間、底冷えするような冷めきった魔力が辺りに散らばり霧散した。

「碧よ、お前の言う通りだ。あいつは想像を絶するゲスだ。狙いは俺と違うだろうよ!!」

王我の台詞が最後まで碧の耳に入ることはなかった。

瞬間的に感じた王我以外の魔力の危険さを、冷酷さを、異常さを察知したからだ。

そしてその先には何があるのかを理解した碧に与えられた選択肢は一つしかなかった。

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