アオイ
大学3年の春、「心機一転、今日から頑張ろうという。」という、毎回恒例の言葉と共に学科のオリエンテーションのため大学へ向かう。
教室にはすでにアオイが座っていた。いつもと同じように彼女の右隣に座る。
「おはよう」
ほんわかした陽だまりのような声でアオイが挨拶をする。
「おはよう。今日は早いね。」
アオイは普段遅刻ギリギリで授業に来るのだ。
「うん。今日はお母さんが家に来てるから。」
その言葉で通じる私達の仲は今年で6年目になる。
アオイも私も地元を離れ一人暮らしをしながら大学に通っている。私達にとって一人暮らしで一番難しいことが朝起きることだ。今日は母親がいるため、起こしてもらったのだろう。また、ご飯も作ってくれたようだ。
「いいなぁ。あたしもアオイのお母さんほしい!」
アオイと私は高校で出会った。部活は違ったが、塾が一緒だったため、自然と一緒にいる時間が長くなり、仲良しになった。
「サッキーもお母さん呼べばいいのに。すぐ来てくれそう。」
「あたしのお母さんはいいや。」
午前中でオリエンテーションが終わり、お昼はどうするかアオイに聞いたら、お母さんがいるからと言って、早々と帰って行った。私は、家にもどこにも待ち人はいないため、一人食堂で食べることにした。
食堂には見慣れた顔があり、こっちに手を振っている。私はそこで食べることにした。