独角鬼王の悪夢?猿の子分は辛いよ・・・
美猴王の世界征服宣言!
しかし大丈夫なの?
俺、独角鬼王ッス!
元魔王だったんすけど、今は猿の妖怪である美猴王様に仕えているんす!
その美猴王様と言うのがとんでもなく我が儘で面倒ぐさりで、呆れるくらい傍若無人な呆れた猿なのですが、その美猴王様がおっしゃったのだ!
『世界征服宣言!』
お…俺!付いて行きます!
俺も男だ!
アンタのその夢に便乗させて戴きますぜ!
独角鬼王「で、どの魔王を仲間にするつもりなんですか?」
美猴王「ん?」
独角鬼王「魔王には先刻説明しましたが、七二名現存するんすよ。と言っても、その力の差は天地ほど違うのですぜ?」
美猴王「ふむふむ」
ここで独角鬼王の俺が地上界の戦力図を説明致しましょう。
魔王七二~五〇番の連中は俺並の力量ですね…と、言っても魔王と呼ばれるくらいだから並の妖怪よりは強いのですぜ!
五〇~三〇番の連中らは一癖二癖ある奴らで、主に特殊能力を持つのが多々います。油断大敵ですぜ?
三〇~十番の奴らはそりゃあもう!最強レベルで、マジに魔王と呼ぶに相応しい化け物連中なんすよ!
俺なんか手も足も出ないで恐怖でぶるっちまいます!
美猴王「ふ~ん…で、最後の一桁の奴らは?」
独角鬼王「一桁連中は…神をも震えさせ、この地上界の中心の地にて支配している連中なんですよ。俺のような下っ端魔王には詳しくは解らないですが、天界の神から直々に地上界を任せられているとか…」
美猴王「ちょっと待て?ちなみに俺様の番号は何番なんだ?」
独角鬼王「その話の前に魔王には皆番号が決められていて、それは魔王のみが持つ証たる魔王玉に印されているのですよ!」
と、俺は美猴王様に魔王玉を見せたのだ。
独角鬼王「俺から魔王を奪ったので『七十二番』ですね」
美猴王「一番下っ端じゃねぇか!」
独角鬼王「仕方ないじゃねぇっすか!俺の番号だったんですから!そもそも番号は天界の最高神が力量に見合わせて決めていたのです。それがここ数百年の間変化なく、力の判定も今じゃ定かじゃないですね…その間に俺みたいに世代交代で魔王になれたり、現存する魔王を倒して成り上がる者も現れていたりしてますから…」
美猴王「お前…先代から魔王譲って貰ったのか?」
独角鬼王「えぇ…親父が先代魔王だったんすよ~」
美猴王「なるほど~しかし俺様が下っ端番号てのが問題ありありだ!よし!閃いたぞ!俺様が今の魔王達を倒しつつ、ついでにその魔王玉って奴を全部集めてその天界の神に叩き返してやるぜ!」
独角鬼王「しかし…正直俺達二人だけでどうするんですよ?魔王には数万の妖怪の兵隊がいるんすよ?俺の部下は誰かさんが全員ノシテしまいましたからね?多勢に無勢ですって!」
美猴王「ふふふ…その辺りはぬかりはないぜ?」
すると美猴王様が天井を指差して叫んだのです!
美猴王「さぁ来い!お前達!我が猿の軍勢達よ~!」
さ…猿の軍勢?
軍勢ですって~??
俺が見上げたそこから現れたのは数体の人[猿]影であった。
その者達は着地するなり自己紹介をし始めたのだ!
『俺は水猿!』
『俺は岩猿!』
『俺は気化猿!』
更にもう一匹?
『そんで俺ッチが六耳てんだい!』
独角鬼王「…って、何が軍勢だぁー!たった四匹の猿じゃないですかぁー!?」
美猴王「んなぁ?こいつ達を馬鹿にするなよ!こいつ達は俺様が昔、猿山で面倒みてやった猿達なんだぜ?それが俺様と絡んでいるうちに妖気を大量に浴びて妖猿化した奴達なんだぞ!」
独角鬼王「そういう問題じゃなくてですね…」
美猴王「俺様が世界征服するために、山の猿連中達とはサヨナラしたはずだったんだが…」
六耳「水臭い事言わないでくださいよ!美猴の兄貴!いや?今は美猴王様ですね?美猴王様が世界征服するって言うなら、俺っち達が一緒にいないでどうするんですよ?俺っち達は美猴王様と死ぬも生きるも一緒ですよ!」
猿達『そうだ!そうだ!そうだ!俺達一緒だぁ~』
美猴王「お前達!何て嬉しい事を!すまなかったなぁ?一度はお前達を突き放してしまってよ~!」
六耳「何を言ってらっしゃるんですか?それは兄貴が俺達の身を案じての事!解っていますとも!だけど俺っち達も足手まといにはなりゃしませんよ?見てください!俺っち達の修業の成果を!」
猿達は修業で身につけた術を披露し始める。
水猿『水術・水技主牙手』
※ミズギスガタ
水猿の手から水が湧き出してきて覆うと、その手刀から噴き出す水の刃で目の前の机や台を軽々と斬り裂いていく!
岩猿『土術・岩張手』
※ガンバッテ
岩猿の手に岩が張り付いて来て、その岩手の張り手で城の壁を粉砕する!
気化猿『風術・波飛風屁放!』
※ハヒフヘホー
最後の奴は尻から強烈な屁をかますと、凄まじい勢いで天井に穴が空けた。
独角鬼王「はぁ………?」
六耳「よし!最後に俺っちが…!」
独角鬼王「待て待て待て待て!もう良い!もう良いから城を壊すなぁ~!」
六耳「え~?邪魔すんなって!」
俺は無理に何かをやらかそうとしていた六耳って奴を取り抑えたのだ。
美猴王「アハハ!賑やかになって来たなぁ~」
独角鬼王「何を楽しんでいるんですかい!誰が後で城を片付けると思ってるんですよ?」
六耳「そういえば美猴王様?この雑用は誰です?」
独角鬼王「誰が雑用だぁー!この下等な猿野郎がぁ!俺は美猴王様の一番の部下だぁ!」
美猴王「俺様も猿なんだけど…」
六耳「何だと??こらぁー!誰が一番だって?一番は俺っちだぁ!ふざけんな!雑用野郎!」
独角鬼王「何だと?小賢しい猿がぁ!」
美猿王「…えっと、独角君、君は俺様が猿と知っているのかな?」
独角鬼王「美猴王様は小賢しくない立派な猿だから良いのです!キッパリと!」
美猴王「そぅかぁ!俺様は小賢しくない立派な猿だったのかぁ!ウム。納得!」
六耳「納得しないでくださいよ~!それに俺っちのが付き合い長いのですよ?俺っちイジケマスよ?」
美猴王「イジケるな!猿なら猿らしく胸を張れ!」
独角鬼王「意味わからな~い!」
六耳「雑用!それも全てお前のせいだぞ!」
独角鬼王「何だとぉ??」
再び取っ組み合いになる俺と六耳。更に六耳の加勢に三匹の猿達も合わせて、城の中で大暴れが始まった。城はどんどん目茶苦茶になっていく。
美猴王「アハハ!お前達もっとやれ~!うん!何か楽しくなって来たぞ?今日は無礼講だぁ~お祭りだぁ~!ついでに酒持って来~い!」
もう、どうにでもなれ~
数時間後…
俺は顔中傷だらけにしながら、部屋掃除を終えて一息つく。
あ、とりあえず元魔王のプライドにかけて、猿子分達には勝ちましたぜ?
でも奴達、思ったより手強かった…
六耳「くそぉ~雑用!いつか追い抜いてやる~くそぉ~くそぉ~ウキィ~キィ!」
あ~煩い…
すると酒を飲んでいた美猴王様が俺を呼び付け、城の中で目茶苦茶硬い柱がないか聞いて来たのだ。俺の城[今は美猴王様の城]を支えている四本の柱に案内したのだ。すると、何を思ったのか?美猴王様は城を支えている四本の柱全てを引っこ抜いてしまったんす!
目の前で崩れ落ちる元俺の城…
独角鬼王「あわわわ…」
美猴王「気にするな!どうせ世界に出るなら、こんな小さな城なんか無用だからな?」
この方には無用でも、俺には幼い頃からの思い出ってもんが…
せっかく掃除して片付けたのに…とほほ。
その後、美猴王様は柱に何やら刻み込むと…
美猴王「よし!準備は出来たぞ!」
美猴王様は座禅を組みながら意識を四方に飛ばす。自分の体毛から同時に四体の分身を出現させたのだ。
美猴王「よし!行け分身達よ!」
分身達は引っこ抜いた柱を抱えて、散るように空高くにまで飛び去って消えて行く。
独角鬼王「分身に使いを頼んだのですね?他の魔王達に仲間になって欲しいと?でも何故に柱が必要だったんすか?」
すると美猴王様は首を振り、俺に「はぁ~?お前何も解っちゃいねぇな~?」と、自分の肩に手を置くように言って来たんす。
すると…?
俺の視界に美猴王様の分身達が見えている光景が見えて来たのでした!
独角鬼王「これが仙術って奴ですかい?」
美猴王「黙って見てろ!今に面白いもんを見せてやるからよ!」
独角鬼王「へ…へい!」
その後、俺は後悔した…
見なきゃ良かったと…
そして、今直ぐにでも荷物をまとめて逃げ出したいと思ったのでした。
次回予告
美猴王はどんな魔王に使いを送ったのか?
独角鬼王は・・・ただ、奮えます。