黄砂強風の拳!美猴王散る??
元人間だった黄風魔王の正体!
しかも蓮華の父親だった事実・・・
美猴王はどうするのか?
俺様は美猴王だ!
俺様は黄風魔王の正体を知り、その過去を知った。
黄風魔王は妖怪への憎しみから、奪い得た力を使い全ての妖怪を滅ぼすつもりなのだ。
そこにはもう話し合って和解出来ようもなかった。
美猴王「お前が戦うと言うのなら俺様は戦うまでだ!売られた喧嘩は買う主義なんでな?だが、蓮華との約束もある。もう一度聞くぜ?本当にやり合うつもりなのか?」
黄風魔王「くどい!私はこの世界の全ての妖怪を消し去る!」
美猴王「そうか…なら!」
俺様は再び飛び上がり、黄風魔王に仕掛けた。
同時に動いた。黄風魔王は身体中に圧縮した風気を纏っていた。虎先鋒と同じ防御技のようだ!
だが、その威力は桁違いだった。俺様の殴った拳を弾き、その防御の開いた場所に次の一手が迫る。
俺様は本能的に身を翻して躱した。だが、纏っていた衣が破け散った。
美猴王「凄まじいな?元人間とは思えねぇぜ!」
人の身でありながら、最高級の大妖怪である元黄風魔王の意識を、その強き意思で抑え、全ての力を奪った男…とんでもねぇぜ!
黄風魔王「私から全てを奪った妖怪を許しはしない!この世から滅ぼしてやろう!」
美猴王「少しは同情するが殺されてやる訳にもいかねぇよ?俺様にだって野望があるんだからな!」
地上界を統一し、天上界からの支配から妖怪達を解放するって野望がな!
だが、
何が違っているんだ?
妖怪からの恐怖から人間達を解放させるため、人間である事を捨てて戦おうとしている黄風魔王と?
もしかしたら…
俺様と黄風魔王が同じ種族だったなら、共に酒を酌み交わす仲間になれたに違いねぇな…
だが、今となっては、その思いは平行線を走り、決して交わらないだろう。
俺様は戦うしかなかった。
蓮華…わりぃ…
俺様は闘気を全身にみなぎらせ、構える。
黄風魔王「隙がない。なかなかの手練れだ」
美猴王「ありがとーよ?お前も鳥肌もんだぜ?」
同時に動いた。俺様は印を結ぶと身体が分かれて分身が現れる。
黄風魔王の左右から分身が蹴りを、上段から踵落としを食らわす。だが、黄風魔王の鉄壁の防御にはビクともしない。更に分身の一体が黄風魔王の正面から突っ込んで来て、渾身の一撃を放つ!俺様の妖気を籠めた拳は黄風魔王の風の防壁で止められ分身が逆に消えた。だが、消えた分身の後から立て続けに分身が第二弾の拳を放つ!
黄風魔王「同じ箇所に一点集中の連続攻撃か?」
防壁が押し込まれ再び分身が消える。と、更に消えた分身の後から連続の拳が続く!!
一体、二体!三体!四体!!
美猴王様「どんどん行くぜぇー!!」
次第に風の防壁が押し込まれ、俺様の拳が黄風魔王に届く。俺様の拳は黄風魔王の頬をかすめるが、慌てる事なく黄風魔王は掌を俺様の額に当てる。
美猴王「うぐぅ!」
軽く当てた掌打なのに、俺様は強烈な打撃をくらったかのように弾き飛ばされたのだ!今のは凝縮させた風の気を一点に溜めて一気に放つ攻撃か?俺様は壁際まで弾かれたが、何とか床を踏み込み堪える。
美猴王「力任せは通用しないか…あの風の防御は厄介だぜ…」
あれが五行の力…
風属性の最高峰って奴か?
生きとし者なら必ず持つと言われる五行の力。五行の力に己の妖気を融合させる事で、様々な術を用いる事が出来る。因みに俺様には五行の力を持っていないレアなんだぞ?レアなんだぞ?レア…落ちこぼれなんかじゃないぞ?
しかし、この美猴王様が触れる事も出来ないなんて!
だが、何とかする!
俺様にはこの知能があるから、それで状況ひっくり返す!気合いの知能だ!
俺様は再び分身を出現させると、一体一体の拳が石化し、更に振動させると発火し燃え盛る。これは石猿の俺様の特技の石化と、摩擦熱から発した炎なのだ。
「猿仙闘技・火流手!」
俺様の分身はまだまだ増えていた。その数百体!!
「百人一手・火流手!」
黄風魔王を囲み、四方八方から燃え盛る炎の拳で総攻撃する分身達!これが俺様の知能の集大成、数打ちゃ当たれだぁーー!!
黄風魔王「数で圧倒すれば私に勝てると思っているのか?学習しない妖怪だな?」
黄風魔王は四方八方から襲い掛かる俺様の分身を一体一体風の刃で消し去っていく。
これでは時間の問題だ…時間の?
黄風魔王「…ん?」
違和感を感じる黄風魔王。俺様の分身が次第に黄風魔王の攻撃を躱し始めたのだ?
黄風魔王「まさか!?」
黄風魔王も気付き始める。俺様がただ数だけ増やした分身だけで戦っていたわけではなかったと…
黄風魔王「分身を戦わせながら、本体は隠れて私の動きを観察しているのだな?」
動きの癖や行動パターンを観察し、分析をする。たったそれだけの事が戦局を大いにひっくり返すのだ。
黄風魔王「ならば本体を引きずり出してやろう!」
『渦巻!』
黄風魔王を中心に疾風の刃が竜巻となって俺様の分身を一瞬にして消し去った。
すると俺様の本体が動く!
俺様の本体は床に身体を同化させていたのだ。
起き上がると同時に再び黄風魔王に向かって飛び上がった!
黄風魔王の疾風の刃を紙一重で躱し、僅かな竜巻の隙間に飛び込んだのだ。
美猴王「見極めた!」
俺様は竜巻の中心に入り込むと、黄風魔王目掛けて殴りかかる!
黄風魔王「恐ろしき観察力…戦いの中で成長しているのか?このような者を生かしていたら後々厄介になるのは目にみえている!ここで必ず始末する」
美猴王「出来るか?俺様は後々天下を取る猿だ!否、世界を手に入れる猿様なんだぜ?」
俺様は落下しながら拳を突き出す!
俺様の拳は黄風魔王の胸に突き刺された…
美猴王「馬鹿な!?」
俺様の拳は黄風魔王の胸の出前で、両手を挟み白羽どりされたのだ。
黄風魔王「残念だったな?もしお前が本調子なら私も危うかった」
美猴王「何!?」
すると黄風魔王は俺様の拳を手放すと、疾風の刃が俺様の衣を切り裂いたのだ!
胸元が開かれる。
美猴王「………」
黄風魔王「よくもそのような状態で戦っていたな?」
俺様の身体は虎先鋒との激闘で、既に戦える状態じゃなかったのだ。
身体にはまだ完全には塞がっていない穴が開き、血が垂れ流れていた。
それでも戦えていたのは…痩せ我慢!
いや?
蓮華との約束があったから・・・
出来るなら、俺様は黄風魔王を救ってやりたいのだ。
黄風魔王「だが、私は手加減は出来ぬ。そしてお前に容赦はせん!」
美猴王「馬鹿野郎…」
その直後、俺様と黄風魔王は打撃を繰り出す。激しいぶつかり合いに一歩も退かない意地。虎先鋒に食らった土手っ腹の傷が痛む。だが僅かにでも引いたら、黄風魔王の打撃で致命傷を受けるだろう。
美猴王「俺様は負けられねぇーーー!!」
俺様の拳が黄風魔王の掌打を弾き、そのまま黄風魔王を捉えた。このまま…
が、俺様の拳は止まった。
黄風魔王の顔面に当たる直後、蓮華の姿が被って見えたのだ。
僅かな躊躇…
黄風魔王はその隙を見逃さなかった。
黄風魔王「戦いで私情を挟み、勝てるチャンスを逃すようなお前に夢は掴めぬ。夢を語るなら非情にならねば全てが無駄になる!お前は今、失ったのだ!」
黄風魔王の腕が沸騰するように脈だち、緑紫に変色していく?その腕から発する瘴気が俺様を囲むと身体が痺れ身動き出来なくなったのだ?
黄風魔王「お前の野望は私の夢には儚い物だったのだ!だが、ここまで戦った主に敬意を示し、私の究極奥義で終わりにしてやろう!」
『黄砂強風の拳!』
それは毒手!!
黄風魔王の毒手が俺様の顔面をとらると、強烈な熱?刺激?何とも言えぬ痛みが俺様を襲った。
美猴王「うぎゃああああああああ!!」
俺様は落下しながら床に叩き付けられ、動かなくなっていた。
黄風魔王「私の黄砂強風の拳の毒は、妖怪の身体を侵食し確実に死にいたる。お前はもう終わりだ!!」
黄風魔王が倒れて動かない俺様に降りて来る。
その時、城を支えていた柱が黄風魔王に向かって飛んで来たのだ?
そこに虎先鋒が飛び出し柱を拳で粉砕する。
虎先鋒「黄風魔王様!」
黄風魔王「心配ない。邪魔が入ったようだ」
そこには怪力魔王と剛力魔王が俺様を庇うように立っていた。怪力魔王は刀剣魔王と六耳を担いでいた。
剛力魔王「この、男は、殺させない、まだ生かす!」
すると城の床に向けて打撃を放ったのだ?
その直後、床がひび割れ城が揺れだし崩れ始める。
城の床が崩壊し崩れると、そこにはもう剛力魔王達は消えていた。
虎先鋒「逃げられたようです。追いますか?」
黄風魔王「深追いは危険だ。それにあの美猴王はもう助からん。時間の問題だ」
そして、
俺様達水廉洞闘賊団は敗北した。
場所は変わる。
ここは水廉洞闘賊団の隠れ家、本拠地。
俺様は寝かされ、周りには治癒術を施す者達が手を子招いていた。
怪力魔王「どうなのだ?」
怪力魔王は己も重症なのに俺様の安否を心配し見に来ていた。
治癒班「怪力魔王様!それが…」
治癒班が言うには外傷も重症なれど、時間はかかるが再生力と治癒術で回復は可能だと言う。
しかし!
その目に受けた外傷は強烈な猛毒…違う。この毒は呪いに近い魔力が感じられたのだ。呪毒!本来なら呪毒に犯された直後に身体を蝕まれ死にいたる。
怪力魔王「なら、美猴王は助からないのか?」
治癒班「それが、美猴王様は攻撃を受けた直後、全身を石化させる事で呪毒の侵食を抑えているようなのです」
そう。俺様は全身を石化した状態なのだ。
治癒班「しかし、いつまでもつものか…」
怪力魔王「何か手立てがないのか?あるなら言え!」
治癒班は言った。
呪毒をかけた主…つまり黄風魔王の命を奪う事のみ。呪いはかけた本人の呪縛を解かせるか、強制的にその繋がりを断つしかないのだ。
怪力魔王「解った…」
怪力魔王は覚悟を決めた。例え己の命と引き換えてでも、黄風魔王と刺し違える覚悟を決心した。
だが、
もう既に動いていた者がいたのだ!
その者は単身、黄風魔王の崩壊した居城に向かっていたのだ。
「俺ッチが寝ている間に美猴王様が…俺ッチのせいだ!俺ッチのせいだ!美猴王様?必ず俺ッチが救ってさしあげますからね!」
それは六耳だった!
六耳は先に治癒班から助かる理由を聞いて、考えも無しに駆け出していた。
六耳「残兵は…あの虎先鋒って奴だけッチ!そんで黄風魔王!俺ッチが必ず仕留めてやるッチ~!!」
正直、無理の話だ。
力の差は六耳自身が一番知っている事。これは我が身と引きかえの特攻なのだ。
そして六耳が黄風魔王の城にたどり着いた時、
六耳は見たのだ?
燃え盛る黄風魔王の城を!
六耳「城が燃えてるッチ?どうなっているッチ?」
六耳は状況が解らないまま、黄風魔王の燃え盛る城の中へと入っていく。
黄風魔王が崩壊寸前の城を焼き捨てたのか?
それとも何か別の理由が?
六耳「!!」
六耳の六つの耳に話し声が聞こえて来た?
それは黄風魔王と虎先鋒の声?
それに別の何者かの声?
黄風魔王と虎先鋒は侵入者らしき者と交戦中だったのだ!
六耳「何が起きているッチ?」
そして六耳が声のする部屋の扉を開けると、そこには!?
次回予告
美猴王が敗れ、単身で黄風魔王の城に向かった六耳が見たものとは?




