年寄りを怒らせたら猿も痛い思いするだと?
めでたく空を自由に飛ぶ事の出来る雲・金斗雲を手に入れる事が出来た美猿は?
今日も相変わらず・・・
俺様は美猴!
超レアな猿様だぜ!
俺様は念願の空飛ぶ雲を上手く口車に乗せて手に入れたのだ。
そんで今回の話は?
俺様が手に入れた金色の雲の名前は『金斗雲』と言ってな?今から正式に俺様の雲として契約を結ぶ所なのだ。
須菩提爺ちゃんに言われて、俺様は本来俺様所有の雲を呼び出した。そいつは透明の使えない奴なのだ。
美猴「なぁ?この飛べない雲を出してどうするんだ?」
須菩提「まぁ、見ておれ!」
すると爺ちゃんが印を結び念じると、金斗雲と使えない雲が光り輝きながら交わり一つの雲となったのだ!
美猴「ほぇ~?どうなってるんだ?」
須菩提「融合させたんじゃよ!そもそも他人の雲を所有する事は稀にある事なのじゃ。本来は自分の分身たる雲と魂の力を共有するもんじゃからな~?じゃから他者の雲とは魂の力を受け渡しが出来とらんのじゃ!そこで本来の分身たる雲と融合させる事で、魂の受け渡しを可能にし最契約を行ったのじゃよ!」
美猴「よぉ~解らん!」
まぁ、とにかく俺様の雲になった事は間違いなさそうだな?
ウキキ!
須菩提「さて…仙人の三種の神器を授けた事だし、これからが本当の修業の始まりじゃ!と、言ってもお前は五行が使えないからのぉ?体術と幻術を徹底的に授けようぞ?」
面倒臭い…
が、直ぐに覚えて早く悪戯に使わなければな…
俺様の悪戯心が駆り立てられるぜ!
と、これは秘密秘密。
須菩提「何をぶつぶつ言っておる?」
美猴「いえ!何でもございません!お師匠様」
須菩提「ほぉ?今、何と?」
美猴「お師匠様と言ったんだぞ?」
須菩提「何と!素晴らしい響きじゃ!もう一度言っておくれ!」
美猴「お師匠様!」
須菩提「もう一回!」
美猴「え~~!」
須菩提「お願いします~もう一度!もう一度お願いしますのじゃ~」
美猴「仕方ねぇな~じゃあ猿に物を頼むなら、それなりの頼み方があるだろ?」
須菩提「そうじゃな!その通りじゃ!理にかなっとるな!」
爺ちゃんは何処からか果物や饅頭を持って来て俺様に捧げると、俺様はあぐらをかきながら食らい…
『お師匠様宜しくお願いします!』
と、言ってやったのだ。
既に逆転している事に気付いたのは、次の日の朝だった。
全くボケた爺ちゃんだぜ!
それからは俺様は素直に与えられた修業を熟す日々を過ごした…
そんで、月日が流れ…
天才である俺様は、既に仙術[体術・幻術]で須菩提爺ちゃんを完全に凌駕したのだ。
当然、俺様の悪戯にも磨きがかかり、エスカレートしていったのである。
山の猿達を集めてボスとなり、近くの村々から金品財宝を盗み、盗賊紛いな事を繰り返していたのだ。
そんな俺様を連れ戻しに来た爺ちゃんは…
須菩提「ぜぇ!ぜぇ!お前と言う奴は何故そんなに悪戯ばかりするのじゃ~」
美猴「そりゃ…」
須菩提「?」
美猴「爺ちゃんの困る顔が見ていて楽しいからかな?」
須菩提「バァカ者~!!」
そして堪忍袋の緒がキレた爺ちゃんは言った。
須菩提「流石に今回ばかりは頭にきたわ!極限に怒り沸騰じゃ~!」
美猴「おっ?やるのか?俺様は強いぜ…」
俺様の表情が突然冷たい顔つきになる。
須菩提「!!」
須菩提(この美猴と名付けた猿は、たまに恐ろしく冷たい顔をする…今後どんなふうに成長するのか…はっきり言って…恐怖も感じる。もしや、いずれ世界を脅かす魔物になってしまうのでは?と…ならば今のうちに…)
須菩提『美猴よ!明日の昼に山頂まで来るのじゃ!正式に決闘を申し込むぞよ!』
美猴「おっ?怒ったのか?悪いが、俺様は明日忙しいんだよね~それにお年寄り虐めても哀れなだけだしな~」
が、俺様は爺ちゃんのただならぬマジな顔に黙り込んだ。
須菩提「必ず来るのじゃぞ?年月を重ね修行をした年寄りが、どれほどかお前に見せてやるわ!」
美猴「じぃちゃん?」
次の日
美猴「爺ちゃん来たぜ!」
俺様は約束の時間、約束の場所にやってきたのだ。
須菩提爺ちゃんはそこにいた。てっきり逃げると思っていたぜ…
それにしても、爺ちゃんから醸し出す静まり返った空気は不気味な程だった。
須菩提「よく来たの?美猴よ!」」
その目には決意の色が…
美猴「本当にやるのか?」
須菩提「言ったじゃろ?年月をかけて磨きあげた年寄りの力をお前に見せてやると!儂様の言葉に二言はない!」
美猴「そうか…なら…仕方ないな!俺様はマジの喧嘩じゃ手加減は出来ねぇぜ?」
須菩提「挑む所じゃ!」
俺様は須菩提爺ちゃんに向かって行った!
爺ちゃんは目を見開き…
腕を前に出して、素早く左右に振りながら…
須菩提「まっ!待つのじゃ!慌てるでない!お前とやるのは儂様ではない!この者じゃ~!」
俺様は勢いあまり、ズッコケテしまった。
そして立ち上がり!
美猴「爺ちゃんじゃないのかよ!」
ツッコミを入れたのだ。て、今までのマジな緊張感は何だったんだよ~!
美猴「で?誰が俺様の相手をするんだ?」
須菩提「ほれ?お前の後ろに既に来ておるぞ?」
えっ?
すると、そこにもう一人の老いた仙人がいたのだ?
気付かなかったぞ??
そいつは爺ちゃんと同じ仙人らしく、背中に『太白』と印した白い仙衣を纏い杖をついた老人だった。
須菩提『友人の太白金星仙人じゃよ!その者がお前の相手をするのじゃ!』
太白金星仙人「フォッフォッフォッ!」
美猴「爺ちゃんが戦うんじゃないのかよ!」
須菩提「バカモン!儂様がお前に勝てるか!年寄りを労らんかぃ!」
美猴「この友人たって、年寄りやないけ!」
須菩提「気にすんな…」
美猴「気にするわ!」
太白金星「儂を年寄り扱いしていると怪我するぞい?猿小僧!」
美猴「あん?何だ?やけに自信たっぷりだな?泣かしちゃうぜ?爺ちゃんよ?」
太白金星「泣かせられるなら泣かしてみんしゃい!」
美猴「にゃろめ~」
何だか解らないが、とにかくこの爺ちゃんをぶっ倒せば良いのだよな?
楽勝だぜぇ!
俺様は仙気を集中させて力を籠める。
一発で終わらせるぜ!
俺様は懐から出した刀を握ると、太白金星に襲い掛かったのだ!
美猴「泣いてから後悔しろやーー!」
太白金星「いでよ如意棒!」
俺様は突き出された如意棒名付けられた棒を躱した…
美猴「そんなもん!」
太白金星「いくぞい!伸びろ如意棒!」
美猴「なっ!?」
はずだった…
太白金星の持っていた如意棒が突然伸び出し、突っ込んで来た俺様の顎にヒットしたのだ!
美猴「あがが!」
すると、すかさず太白金星は俺様の背中に周りこみ
太白金星「ぬおおお!」
バックドロップ?
なる大技で、俺様は頭を地面に叩きつけられてノビテしまったのだった。
美猴「はにゃほれ~」
気絶している俺様を見下ろした太白金星は言った。
太白金星「のう?須菩提祖師よ?」
須菩提「なんじゃ?」
太白金星「こやつ…儂に預けてみんかい?」
須菩提「そりゃ構わんが…どうなっても知らんぞ?」
太白金星「安心せい?フォッフォッフォッ!儂ならこやつを真っ当に育て上げて見せるぞい」
須菩提「無理無理!」
太白金星「まぁ~任してみんしゃい!」
須菩提「どうなっても……わしゃさま…知らんぞぃ…」
そんな訳で、俺様は太白金星と呼ばれる仙人に預けられたのだった。
次回予告
さて、今回登場の太白金星仙人
転生記シリーズの第一章でも登場しております。
この美猴王伝説には他にも転生記のキャラが登場しますので、暇があれば転生記もお読みになられると物語の流れがより楽しめ・・・
美猴王「宣伝かよ!!」