身近にいた最強?これは喧嘩祭りだぁああ!
雷獣王、暴食の雷我の襲来に絶対ピンチの美猴王を救ったのは、今まで眠っていた獅駝王だった。
蛟魔王の手紙に書かれていた事があった。
雷獣王・雷我には手を出すな!と…
もし目の前に現れたなら、即座に逃げるように書かれていたのだ。
雷獣王・雷我…
蛟魔王が恐れる程の魔王とは?
かつて二匹の獣王魔王がいた。一方は獅子の獣人の大妖怪。かたや一方は大虎の大妖怪だった。
両者共に一桁ナンバーの実力を持ち、与えられた各土地を縄張りにしていた。
魔王には天上界の神より定められた秩序により、魔王同士は争う事を禁じられていた。だが、この両魔王は縄張りの土地も近かった事、互いに獣王を名乗っていた事から度々因縁をかけあっていた。
そんなある日、両者の魔王がついに衝突する事になったのだ。これには天上界の神々も止めに入ったが、一桁の魔王クラスの両者を止める事は叶わなかった。
獣王・獅牙!
獣王・爪虎!
壮絶な戦いが三日三晩続いた。辺りは草木が生えない荒れ地となり、大地は震え、空は荒れ狂う嵐となった。そんないつまで続くか解らぬ戦いにもようやく決着が来た。
戦場の中心に残った一本の大木を中心にお互いを追って回り始めたのだ?獅牙は爪虎を!爪虎は獅牙を!その回転は次第に竜巻を起こし、天にまで昇っていく。
その時だ!
突如、天より雷が落ちて大木を貫き、その真下で互いを追い続けていた両者の身体をも焼き焦がしたのだ。だが、両者は回転を止める事はなかった。
やがて静まり返った焼き焦げた大木の下には、ねっとりとした大量のバターが残っていたという不思議な話?いやいや!まだ終わってはいなかった。
獅牙と爪虎の魂は回転しつつ雷の高熱の中で混ざりあい、なんと融合してしまったのだ!その獅牙とも爪虎とも解らぬ魂は大地に散らばったバターを吸い込むと、新たな肉体が構成されていく?
その姿!身体に獅子と大虎の頭が半々に残った融合妖怪であった。しかも、落ちて来た雷をも取り込み、両魔王の力の他に雷の力をも纏った最強最悪の大魔王が誕生したのだ!
それが雷獣王・雷我であった。
つまり一桁ナンバー二人分の力を持っていると言うのか?
俺様は美猴王!
危機一発の俺様を救ったのは眼力魔王の戦いから負傷し眠っていた獅駝王だった。獅駝王は目覚めるなり目の前にあった肉を食らった後、騒がしい声に誘われるかのように…いや?強い力に導かれて現れたのだ!
獅駝王は戦場に現れた雷獣王・雷我の匂いに惹き付けられて目覚めたのだ!
獅駝王「なぁ?美猴王兄貴?こいつ強いよな?強いよな?だったら俺俺に喧嘩させてくれよ?なぁ?」
俺様は呆気に取られて頷いた。
だが、こいつ解っているのか?雷我はマジに化け物だって事に?
俺様も無理はしていたが奴の妖気に押し潰されそうでいたくらいなのだから…
まさに、ハッタリ!
突如割り込み、自分の腕を掴んで、訳の解らない事を喋りだす輩に苛立ちを感じていた雷我が、
雷我「何だ?こいつは?気安く俺の腕に…」
すると獅駝王は掴んでいた雷我の腕に力を入れる。
雷我「!!」
動かなかった…
獅駝王の掴む雷我の腕がびくともしないのだ?
雷我「お前、俺の腕を離しやがれぇ!」
雷我の逆の拳が獅駝王の顔面をとらえると、獅駝王は吹っ飛んで崖に直撃し、落下する岩石に埋もれた。
美猴王「獅駝王!」
チッ!
俺様は直ぐに雷我に向かって立て直す!
やはり俺様がヤるしかないのか?
だが、直ぐに岩石が盛り上がって来て、獅駄王が飛び上がって来たのだ。そして再び俺様と雷我の間に割って入り自分の顎を擦る。
獅駝王「効いたぁ~お前、強いよな?マジに痛かったぞ?」
雷我「お前!」
俺様も驚いたが雷牙も驚いた。そうだった。忘れていたぜ!
獅駝王は超頑丈の…馬鹿だった!
獅駝王「そんな訳で俺俺と喧嘩するぞ~!!」
今度は獅駝王が雷我に襲い掛かる。が、獅駝王の攻撃は雷我には当たらなかった。雷我の裏拳で再び殴り飛ばされたのである。
が、今度は空中で回転し勢いを殺して体勢を整えながら着地し、直ぐに速攻をかける!猛攻撃の拳の連打!
雷我「無駄だ!」
雷我は微動だにせずに雷を纏った強烈な拳を放つと獅駝王に直撃した。獅駝王の身体に拳の痕がめり込み、血を吐き白目を向き落下する。
くそぉ…
俺様と獅駝王が二人がかりなら?
だが…
俺様はぶら下がる自分の両腕を見つめる。
俺様の両腕は雷我の雷の咆哮を防御した時に、完全にイカれちまったのだ。再生し動くようになるまでに時間がかかりそうだ。正直、戦いに出ても足手まといにしかならないだろう…
周りを見ると、仲間達は皆奮えながら硬直していた。身動き出来ないのだ!
圧倒的な強さを前にして身体が、精神が折られてしまったのだ。
これが一桁クラス最強とも言える雷我の圧倒的な暴力の恐怖?
もう、どうしようもないのか?なすすべないのか?
と、そこに…
獅駝王「いたた~」
獅駝王が立ち上がったのだ。しかも笑みを見せて?
獅駝王「こんな強い奴は初めてだぞ?俺俺、滅茶苦茶楽しいぞ!ウガァ!」
雷我「驚いた再生力だな?それに頑丈だ…だが、次はそうはいかんぞ?次はお前の喉元に食らい付き、お前の頭と身体を咬み千切ってやろう!」
獅駝王「ニヤニヤ」
雷我「何を笑っている?気でも触れたか?それとも状況も解らない馬鹿なだけか?お前は何も出来ずに終わるのだ!」
すると獅駝王は雷我の身体を指差したのだ?
雷我 「?」
が、直ぐに気付く。己の身体に拳の痕が残っていたのだ?正しく獅駝王が先に放った拳が命中していたのだ。雷我は己に残る痕を見て怒るどころか冷静になっていく。
雷我「俺の身体に触れる者がいようとは?いくひさしい…何年ぶりか?この沸き上がる気持ちは?怒りではないな?これは喜びか?」
獅駝王「お前、楽しいか?でも俺俺は全然足りないぞ?もっと楽しみたいぞ?お前との喧嘩!!」
その直後、二人の身体から凄まじい妖気が噴出した!凄まじい覇気が放たれて二人の戦いを見ていた周りの連中が一人一人倒れていく。今、この場に立っていられたのは俺様と…
戦闘中の二人だけだった!
凄まじい雷の覇気を帯びた雷我に、妖気の覇気を纏った獅駝王。
二人は同時に動いた!
雷我の雷の爪を躱しながら獅駝王が殴りかかる!その動きは俺様の動体視力からも捉えられなくなっていた。
獅駝王の奴?
いつの間にか雷我の動きに付いていってやがる?
戦いの中で強くなってやがるのか?
俺様の中で少し変な感情が沸いてきた…
これは嫉妬?
強さへの嫉妬!
俺様は二人の動きを少しでも追っていく。
獅駝王「面白いぞ~!」
雷我「お前、認めてやろう!お前は強い!」
獅駝王「まだまだ俺俺は強くなる!俺俺最強!俺俺最強無敵になるのだから~」
お互い拳の連打を放ち、相手の拳を躱しながら攻撃を繰り出す。二人の攻撃の余波で大地が揺れ、身体中に激痛に似た気当たりが襲う。並みの連中なら魂を持っていかれるだろう!
だが、俺様は動かなかった。動けない訳じゃない!
俺様は二人の動きを見ながら自分自身が戦っているイメージを繰り返していた。
何度、殺されただろう?
俺様のイメージでは既に雷我に七回は八つ裂きにされちまった。
それでもイメージを繰り返して何度も立ち向かう…
くそぉ…
俺様はまだまだ弱い!
それにしても獅駝王の奴はあんなに強かったのか?
度々、俺様達の常識を破る強さを見せたが、馬鹿だから?馬鹿だから?馬鹿だから気にしないようにしていた。最も身近にいて、最強を求め、最強に近しい獅駝王に俺様は思った。
いずれ俺様は獅駝王を越えてやる!
そのためにも、今は…
必ず、その雷我の野郎をぶち倒すんだ!!
雷我「…強くなってる?マジに強くなってる?この野郎!お前、俺を熱くさせてくれるわ!」
獅駝王「俺俺は最初から燃え燃えだぞ?」
獅駝王の拳が雷我の顔面にフルヒットした。そして今度は雷我の方が殴り飛ばされたのである。
地面に倒れた雷我の上から飛び乗って来る獅駝王はすかさず殴り掛かる!
獅駝王の拳が雷我の顔面に幾度とヒットした。
雷我「重い…拳だ…並みの野郎なら終わりだろうが、俺には物足りん!」
雷我の身体から雷が拡散し、乗っていた獅駝王の身体を貫く!
獅駝王「フンゴオオ!」
堪らず雷我から距離を取り、血だらけの自らの身体を見る。そして流れる血を指で舐めると、
獅駝王「燃えて来たぞぉおおお!喧嘩祭りだぁああ!ウォオオオオオオオ!」
獅駝王の身体の傷が塞がり更に力を増したのだ!
そんな獅駝王に対して雷我も同じく武者震いしていた。対等に殴りあえる奴がいる!しかも相手は自分と同じく獣妖怪。
雷我「良かろう!今から俺はお前に対して本気を見せてやろう…この力を見せるのはお前が初めてだぞ?光栄に思え?」
獅駝王「なぬ?お前はまだ強くなるのか?それは楽しみだ!俺俺はもっと最強になったお前を倒して、更に最強になってやるぞ!」
…はっ?
何を話してるんだ?あの二人は?
獅駝王…まぁ、こいつは馬鹿だから今更何を言っても驚かないが、雷我の野郎はまだ本気じゃなかっただと?まだまだ強くなるだと?
冗談だよな?
だが、それはマジだった。
俺様の目の前で雷我は妖気を高めて唱えたのだ?
『獣神変化唯我独尊!』
それは獣族の秘奥義最強の変化だった。
次回予告
美猴王の目の前で行われている最強対決!
獣神変化を唱えた雷我に獅駝王は勝てるのか?




