猿、万歳!水簾洞闘賊団の宴じゃ!宴!
意味も解らずに眼力魔王に勝利した水簾洞闘賊団
今は勝利に酔いしれる。
俺様は美猴王だ!
なはははは!
水簾洞闘賊団は見事、眼力魔王率いる妖怪軍をぶっ倒したのだ。
俺様達は奴達の残党に情けをかけ殲滅はしなかった。そのためか眼力魔王の配下だった者から俺様達の軍に志願する者も現れ、その数は二十万近くになっていたのだ。
まぁ~それはそれとして、俺様達は今、勝利の宴の最中なのだ!イェーイ!
俺様は酒を飲み、肉を食らい、仲間達とどんちゃん騒ぎを楽しんでいた。
牛角魔王の奴は酒を飲みながら裸踊りをしていた。
肉を両手に騒ぎ雄叫びをあげているのは獅駝王。
蛟魔王は…
あれ?何処に行った?
六耳「美猴王様ぁ~楽しんでますか~?」
六耳は今回の戦では大きな手柄を立てた。眼力魔王の率いていた五魔王の一人の首狩魔王を倒し、見事に独角魔王の仇を討ったのだからな。
六耳「独角ぅ~見てるかぁ~?俺っちはやったぞ~!やった~あわわわわん!」
あ、泣き出した。
こいつは泣き上戸だったんだな?
五魔王を倒したと言えば牛角魔王の弟の蚩尤って奴も手柄をあげたんだっけ?
蚩尤は子分の炎狼と氷狼を脇に従えさせていた。
蚩尤(俺の邪魂の飴の事は秘密にしないとな…それに、)
蚩尤は自分の手を胸に置くと、
《俺の事もだろ?》
蚩尤にしか聞こえない声が聞こえて来た。
蚩尤「黙っていろ!」
魂喰魔王《そう言うなよ?相棒!どうせお前にしか俺の声は聞こえねぇよ?》
そいつは蚩尤に寄生した魂喰魔王の声だった。
蚩尤「チッ!」
と、俺様達の知らない秘密を抱えた蚩尤は置いておいて、
「少し良いか?美猴王よ!」
俺様の前に眼力魔王に操られていた剛力魔王と怪力魔王が近寄って来た。
剛力魔王「…………」
怪力魔王「美猴王よ!俺達を眼力魔王の呪縛より解き放ってくれた事を心より感謝する。お前には返せぬ程の恩がある!」
剛力魔王「…………」
怪力魔王「この恩義は今後の働きで返そう!」
そうなのだ。
剛力魔王と怪力魔王も水簾胴闘賊団に加入したのだ。
これは大きな戦力だぞ!
にしても、剛力魔王も何か喋れよ!……ん?
剛力魔王の視線は俺様の後ろを見て頬を赤らめていたのだ?
その視線の先は当然、牛角魔王の裸踊りだった。
あ~なるほど!
俺様は剛力魔王に言ってやったのだ。
美猴王「またキスしてもらえば?」
…アッ!
その瞬間、俺様は剛力魔王に殴り飛ばされて壁に衝突したのだった。
イテテ…
顔を真っ赤にして走り去って行く剛力魔王を追いかける怪力魔王。
いつものクセだ…
口は災いのもとだな。
そんなこんなで宴は朝まで続いた。食って飲んで、騒いで、歌い、ハメを外す。
『今夜は無礼講だぁ~』
この宴は死んで逝った仲間達に捧げる供養でもあるのだ。
そして夜が明けようとした時、俺様は登り始めた太陽を背に立ち上がると…
まるでそれが合図かのように、今までどんちゃん騒ぎしていた部下や酔って寝ていた奴達まで整列して、俺様の言葉を聞いていた。
俺様は目の前に整列する数万の軍勢を前にして再び宣言した。
美猴王「この戦いは俺様が始めた戦争だ!
俺様を信じて着いてきた仲間達だけでなく、敢なく夢半ばで死んだ仲間達!
俺様は死んで逝った仲間達のためにも、もう後戻りはしない!」
俺様は更に大声で皆の前で叫んだのだ!
美猴王『俺様の前に集いし仲間達よ!俺様とお前達は運命共同体だ!だから今一度己で決めよ!
これから先は命の保障は出来ねぇ!自分の命は自分で守り抜け!
立ち去る者は去れば良い!誰も責めはしない!
だが、それでも俺様と共に来る馬鹿者であれば、これから始まる更に険しい戦いに俺様と共に立ち向かおう!この水簾洞闘賊団には!そんな馬鹿者だけ残れば良い!』
俺様の前に集まりし数万の兵達が熱い眼差しで、一人たりとも逃げ出さず、身動きしないで聞いていた。
その眼差しは決意に満ちていた!こいつ達は既に覚悟を決めていたのだ!
俺様の言葉を牛角魔王と獅駝王が笑みを見せて聞いていた。
それは『今更』という顔だった。
へへへ!
テンションをあげ、俺様は天を指差し叫んだのだ!
美猴王『俺様がまだ見ぬ道を切り開いてやるぞ~!』
それをキッカケに、数万の仲間達の歓声が津波の如く響き渡ったのだった。
アハハ…
力強い仲間達だ。
もう怖い者なんてない!
が、その後に俺様は知る事になる。 唯一、あの中で立ち去った者が一人いた事を…
「あんた達との時間は楽しかったよ…だけど、もう終わりにしようか…」
それは蛟魔王!
蛟魔王の前には、かつて蛟魔王を誘いに来た第四魔王の使いがいた。
使い「では、参りましょうか?蛟魔王殿!我が主、第四魔王様がお待ちしております。あのお方は貴女の力を高くかっております。是非とも主は貴女を我が軍の軍師にと考えられているとの事!」
蛟魔王「軍師ねぇ~」
蛟魔王を呼びつけた第四魔王とは何者?
だが、蛟魔王は第四魔王の使いの者と共に消えて行ったのだった。
『さよならだよ?…義兄弟』
それを知ったのは、宴三日目突入した後だった。
獅駝王「俺俺!信じられねぇ!姐御が裏切るなんてよ!」
牛角魔王「美猴王…どうする?連れ戻すか?」
俺様は言った。
美猴王「待つさ!蛟魔王は必ず戻って来る!だから俺様達は信じて待つだけだ!」
信じるには理由があった。蛟魔王の部屋には俺様達の魔王玉が残して置いてあったのだ。
裏切る奴が魔王玉を置いて行くはずがねぇよ!
何故なら魔王玉は俺様達魔王を一度だけ自由に操る事が出来るのだからな…
それに置き手紙が…
手紙には今後の俺様達水簾洞闘賊団が成すべき事がずらずらと書かれていた。
手紙には俺様達が進む地の事や相手軍の情報…
牛角魔王「蛟魔王らしいな…」
美猴王「ありがてぇ!そんじゃあ~俺様達は蛟魔王が戻って来るまでに、次の地を制覇しとこうぜ!」
更に手紙には更なる軍の戦力アップのために、ある魔王を仲間に引き入れる事が書かれていた。
そのため牛角魔王、蚩尤、炎狼、氷狼の別動隊が蛟魔王の残した手紙に記されてあった地へと向かう事になった。その相手とは蛟魔王に匹敵するほどの水術師らしいのだ!
そして俺様率いる本隊はと言うと、人間が住めぬ辺境の地!
『八百里黄風嶺山』
そこには一桁ナンバーの十魔王の一人にして、五行四魔王の一角である黄風魔王が待ち構えているのだ!
因みに五行四魔王とは十魔王の中でも五行[炎、水、雷、風]に秀でた者達からなる地上界最強の妖魔王の事。因みに地属性の魔王は現在追放されているとか?何故?
本来、この地上界は七十二魔王が土地を分別し支配しているのだが、その中で中心にある最も広大な土地を最強の妖魔王が任されるのだ。それが一桁ナンバーの第一魔王である。地属性の魔王は数年前まで第一魔王であったのだが、別の妖魔王に権利を奪われ追放されたのだそうだ。
つまり魔王界も弱肉強食ってわけだな?
で、話を戻すが五行四魔王は第一魔王に匹敵する力を持ちながら、第一魔王を守護する役目を担っているのだ!噂では新たに第一魔王に成り代わったのは五行四魔王の何者かとも言われているが、それは謎のまま。
で、俺様達が次に落とす魔王軍が、その五行四魔王の一角!風を支配する黄風魔王なのだ!
とりあえずこの勢いのまま地上界を制覇するぜ!
また、そんな俺様達を狙う者達もいた。
『ふふふ…水簾洞闘族団か…おもしれ~!少々、この世界をつまらなく感じていた所だった。楽しませろよ?』
そいつは雷を身体中に纏った獅子…いや?虎?
五行四魔王の一角!
雷獣王・雷我であった。
雷我率いる雷獣紅蓮団が水簾洞闘族団を殲滅するべく動き出していたのだ。
だが、一桁ナンバーの魔王もまだ残っているよな?眼力魔王並みの連中が…いや?それ以上の化け物連中が俺様達の前にふさがるのだろうな?前途多難の今後の展開に、
俺様!めちゃ面白くなって来たぜ!
次回予告
水簾洞闘賊団は黄風魔王のいる『八百里黄風嶺山』に向かう準備をしていた。
だが、そんな時!
最凶最悪の襲撃者に襲われた!




