表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天上天下・美猴王伝説!  作者: 河童王子
19/170

猿が主役?蚩尤の過去!


蚩尤率いる先陣隊の全滅?


だが、蚩尤は生きていた。


この世界は異界より来訪した天と呼ばれる十二神達により支配されている。


だが、それより以前…


この世界は三人の魔神によって支配されていた。


それこそ旧支配者!


神の神!


俺と牛角兄者はその栄光ある魔神の末裔なのだ。


栄光?兄者はそうだが、


俺は違う。


俺は忌み嫌われた異端なる厄介者だ…


俺は産まれて直ぐに殺されかかった。


理由は俺の身体が輝く程白く、目立つ姿をしていたから。俺の父神は予言を信じていたのだ。その予言とは?


《一族に輝く赤子産まれし時、その者は成長した後、一族を滅亡させる運命》


と…


さらに


《その者、やがては光と闇に揺れ動き、やがて光は消えて闇に染まり、世界を混沌へと導くであろう》



そのような馬鹿げた予言を信じた父神は、産まれ出たばかりの俺を消そうと考えたのだ。


『輝かんばかりの白き身体を持つ異端の子!正しく予言の赤子よ!この赤子は必ず我が一族に破滅を巻き込むに違いない!』



父神は手にした短刀を産まれ間もない赤子の俺に突き刺す!


が、それは横から入った剣に止められた。


父神の短刀を止めたのは漆黒の髪と二本角を持つ少年の払った剣であった。


その少年は俺より先に産まれた兄であり、既に戦場にて数々の武勲をあげた天才児であった。


父神も己の後継者として可愛がり、その資質に大いに喜んでいた……


それが兄の軒轅[ケンエン]。


後の牛角魔王兄者だ。



兄者の説得にて父神も渋々俺を殺す事を諦めたのだが、その後の人生も俺は虐待を受け続けていた。


親と一緒の時を過ごした事はない。


俺に与えられたのは城の地下にある罪人を閉じ込める牢屋。鍵こそかかってはいなかったが、そこが俺の生きる場所であった。


後は…


自害のためと手渡された短刀のみ。



暗く狭く臭い世界…


たまに何者かが入って来るなり、幼い俺は暴行を受け続けていた。


俺は何故生きている?


死んだって構わないじゃないのか?


死んでやる!



だが、俺は生きていた。


何故?


俺は生かされたのだ。



未来に絶望しかないと思っていた。野垂れ死にするのを待つだけの人生だと思っていた。だが、俺は解放され救われたのだ…


兄の軒轅によって!



兄者は父上と約束を交わしたのだ。俺を解き放つ代わりに、当時争っていた父上に反逆する一族を全て駆逐すると…


兄者は約束通り反逆者達を全て根絶やしにし、父上に証明したのだ。



軒轅『父上!貴方が蚩尤に何を怖れているかは知らぬが、万が一一族に敵意を示すなら俺が始末する!だから今は蚩尤を解き放ち、お救い下さい!』


父神『それがお前の未来を!運命を狂わす火種にならねば良いがな?』



そして俺は深き闇より光りある世界へと導かれる。兄者によって…


俺は兄者に救われたのだ。


兄者…


それからと言うもの俺は兄者に付き従い。戦場では傍らにて副将軍として腕を振るった。



俺の命は兄者に救われた!だから俺の生き死に人生は全て兄者に捧げる!


俺は兄者のために生きるのだ!



俺は強さを求めた。


兄者を守れるように。兄者を支えられるように…


だが、兄者はそんな俺を突き放すかのように更に上を行く。


羨ましくも憧れの兄者よ!俺の命は貴方に捧げるぜ!


そんな俺を…


父上はまだ許してはいなかった。事件が起きたのだ。


戦場の真っ只中、仲間陣地に父上からの刺客が紛れ込んでいたのである。


まさかの不意打ちに俺は背中から刀で貫かれた!


倒れる間際、その刺客の顔を見た。見覚えがあった。


父上の側近!


(父上よ…そこまで…そこまで俺を憎むかぁ…!?)


確実に死を覚悟した。


いや!嫌だ!


死にたくねぇ!



俺はまだ何も…


何も…


恩を返していねぇ…



あ…兄じゃ…


どれくらい経ったのか?



奇跡的にも俺は生きて目覚めたのだ。俺はそのすぐ後、今起きている衝撃的な状況を知る事になる。


俺が倒れたあの日…


異変に気付いた兄者が戦場の中倒れていた俺を抱き起こし、背負い、襲い掛かる敵軍の猛攻の中をくぐり抜け、安全な場所まで運んでくれたのだ。


そして、それが父上からの刺客だと知った兄者は、怒りを父上に向けた!



軒轅『例え父上であろうと許せん!俺との約束を破り、俺と蚩尤の忠義をも無視した所業は絶対に償って貰うぞ!』



兄者は付き従う己の軍を率いて、父上に反旗を翻したのである。


兄者は既に軍の中枢たる存在にまで上り詰めていた。それに父上に不満を抱く者や、戦局を見通し父上より兄者に付いた方が得策だと考えた者達がぞろぞろと配下にくだり、今や父上の軍と二分する勢力になっていたのである。



だが、父上は太古より世界を支配して来た最強最古の魔神!勝ち目はあるのか?


否!


例え兄者が強いと言っても勝てる相手ではない…


不可能だ!


俺は傷付いた身体で兄者と父上の争う戦場へと向かったのだ。



俺に出来る事はただ一つ!


俺の首を父上に献上し、兄者との戦いに幕を下ろし許しを請う事だけ!


構わねぇ!


俺の命は兄者のために使うと決めたのだからな!



俺は敵軍と自軍の争いの中をくぐり抜けて、まさに今!二人が争っている城の中へと向かった。


俺は二人が戦う扉の前にまで来ると、覚悟を決め深呼吸をし、その扉を開いた。


『!!』


そこで俺が見たもの…いや!見てしまったものは?



恐怖におののき倒れ逝く父神の姿と、兄者の…兄者の?あの異端とも思える変貌した姿だった!


あの魔神炎帝とまで呼ばれた父上を恐怖させ、それ以上の圧倒的なる力で屈服させた兄者の力!


その力は神外[ジンガイ]の力であった…


俺の知る優しい兄者とは別の存在?


神々しい力と威圧感…


それは超越した者の姿に思えた。



兄者は…兄者なら世界をも取れる!世界を牛耳る器を持っている!


まさに覇王と呼ぶに相応しい!



俺はその兄者の『力』に魅取れると同時に、


『兄者には決して逆らえない』


と言う恐怖のトラウマをも植え付けられた。




だが、その直後…


兄者は力尽き倒れ伏したのである。俺は兄者を抱え、戦場中の兄の軍に勝利を叫んだ。


その後、兄者は長い間寝たきりになった。


次に目覚めた時には、あの出来事を全て忘れていた。そう!兄者の記憶が完全に消えていたのである。


それ以降、俺はあの兄者の変貌した姿を見てはいない。まさに夢のような出来事だった。


しかし、俺は知っている。


あの日の兄者を!



あの俺だけが知る兄者の力を!


そして消え去る父上が最期に残した言葉を…



『呪われし力を持つ世界を滅亡へと導く破壊者は蚩尤ではなかった…それは軒轅!お前の方だったのだ!』


兄者が破壊者?


構いはしねぇ…


俺は信じている!いずれ地上界だけでなく天界の神々を引きずり落とし、兄者が世界を手に入れるのだ!まさに覇王たるに相応しいと!破壊神?上等な肩書きだ!アハハハハハ!



ハハ…ハ…はぁ…


だからこそ…


断じて、


あの猿野郎なんかと対等に馴れ親しむなんてヘドが出るんだ!



そりゃあ~


あの一件以来、兄者は前線へ出る事もなくなり、配下の兵士達も他の魔王へと寝返る中…


周りからは臆病者呼ばわりされ、父神の政権も天に奪われ、新たな天界の制度より与えられた魔王の称号も年々ランクを下げられた。


兄者の過去の栄光も影を潜め、今では名ばかりの魔王とまで言われる始末。


それが猿野郎の口車から世界へと!新たな戦場へと重い腰を上げて動いたのだから、今は泣く泣く従うしかないのだ…


だが、俺は信じている!


兄者はいずれ…


世界を支配する覇王になると!覇王になると!


(なって貰わないと困る)


ここは大事だから二回言わせて貰ったぜ?フフッ…


フフッ…


そんな兄者の姿を俺は一番身近で見ていたい…


見ていたいのだけど、


無理かもしれねぇ…


俺は今、眼力魔王の配下に捕らえられて、他の仲間共々城塞の麓に両腕両足を拘束された上、見せしめの如く並べられていた。


後ろには刀を持った敵の兵がニヤニヤしながら見下ろしている。


時間を見て、首を切り落とすつもりなのだ。


時間とは?


眼力魔王は水簾洞闘賊団に伝達を送っていた。仲間を助けたかったらリーダーである美猴王に一人で来るようにと…



一人で来るようにと?


あの猿野郎に?


一人で…?



無理無理ぃ!


来るはずねぇ~!



俺の命運もここまでか…


おわた…


兄者…すまねぇ~


次回予告


仲間を捕えられた美猴王。


仲間を救いたければ、美猴王を差し出せとの伝令に美猴王の取る行動とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ