猿の背中を見て育て!
三大王を倒したのもつかの間、美猴王達の前に数万の兵が押し寄せて来た!
体力限界の美猴王達はどうなる?
俺様は美猴王…
俺様は今、戦場があった場所から離れた陣地にて治療と休養をとっていた。
隣のベットには牛角の奴も寝てる。
あ、獅駝王の奴は既に回復して、飯を食らっていた。
(あいつは化け物だな…)
さてと…
そろそろ気になっていると思うから少し話をしなきゃいけねぇよな?
俺様達は霊気大王三兄弟を倒したまでは良かったが、傷付いた身体と残り少ない体力で、眼力魔王の軍勢を相手にしなきゃならなかった訳だ。
しかも!
俺様達の後方から凄まじい数の軍勢が新たに現れたのだから、たまったもんじゃない!
絶対絶命の全滅大確定まっしぐら的状況に、俺様達は絶望的に覚悟するしかなかった。
だが、後から現れた軍勢は俺様達をすり抜けて、眼力魔王の軍勢に襲い掛かったのである?
牛角魔王「一体、何が起きたと言うのだ?」
美猴王「訳わからねぇよ!これはどういう事だ?」
獅駝王「おっ?俺俺混ぜろ~」
すると後から現れた軍勢の一人が俺様達に向かって叫んだのである。
兵士「魔王様方!本当にすいませんでしたぁ!俺達は貴方達に加勢します!」
そいつ達は牛角魔王や獅駝王、蛟魔王の部下だった者達。俺様の世界征服宣言で逃げ出した奴達だった。
それが今更どうして?
そいつ達は今まで俺様達の戦いを隠れて見ていたのだ。僅か五千の水簾洞闘賊団が数万以上の魔王軍相手にどう戦うのかを…
息を殺し、こっそりこそこそ気配を消しながら…
そして俺様達の勇ましく戦う様を見て感動し、戦う勇気を奮い起こし、ついに立ち上がったのだ!
その後は俺様達の軍の圧倒的な大勝利だった。
そもそも怖じけづいた敵軍相手に、戦う勇気を奮い起こした軍勢で立ち向かえば相手じゃなかった!
と、これも全て蛟魔王の策だったのだから驚きだ。
蛟魔王の奴は最初から遠く離れた場所から隠れて覗き見ていた奴達に気付いていたのだ。
が、世界征服に疑心暗鬼の奴達を戦場に呼び込むためには、大将自ら力を見せつけないといけなかった。
蛟魔王『先ずはお前達の力を見せつけな!そうすれば下はついて来るもんさ!』
これを先に俺様達に話せば必ず拒否する事は解っていた。当然だ!!逃げ出した奴達なんか必要ねぇ!
が、結局はこの援軍の加勢により俺様達は大ピンチ的状況から大逆転勝利したのだ。
俺様は回復した後、外で行われている勝利の宴会場に顔を出す。
その瞬間、大歓声が起きたのである。
今、俺様率いる水簾洞闘賊団はーーー?
気付けば総勢三万以上の大軍団へと変わり果てていたのだ。
美猴王「全てはお前の思惑通りって訳か?流石は頼りがいある軍師様だぜ!」
そこには蛟魔王が細腕で酒樽を担ぎ、飲みながら立っていた。
蛟魔王「ふっ!正直、あいつ達が動くかは半々だったがな?それもお前達が頑張ってくれたからだよ!」
牛角魔王「フン!人が悪い奴だ!」
蛟魔王「竜だよ?あたいは?」
牛角魔王「いや、そういう意味じゃなくて…」
美猴王「とにかくだ!」
俺様達の夢を叶えるに必要な軍団が揃った訳だ。
そして俺様達水簾洞闘賊団は、眼力魔王の待つ城塞へと向かって行く。
その間、幾度かの小競り合いを繰り返して行くうちに、俺様達の水簾洞闘賊団も組織力のある立派な軍団へと変わっていく。
軍師である蛟魔王以外にも作戦会議に参加する者。牛角や獅駝は部下の戦闘訓練に力を入れ始め戦力アップと、己に出来る事を始めたのだ。
更に戦場での数々の死線を幾度とくぐり抜けていくうちに、俺様も力を付けていった。正直、魔王である俺様も前回の戦であれだけの苦戦を虐げられた事を恥じ、このままではこの先、天下を取るどころか生き抜けないと悟ったのである。好都合にも戦場ほど己の神経を研ぎ澄まし、力を奮える場所は他になかった!
そんな俺様達に感化されてか?
部下達の気合いも見て取れたのである。
『うおおおおおお!』
戦場で雄叫びがあがった?
相手の軍団長であった魔王の首を討ち取った奴が自軍から現れたのだ!
そいつは独角鬼王の奴であった。
さすがは『元』魔王だけあったと言うべきか?それだけの実力は持っていたのだと実感した。
(そもそも独角から魔王の称号を奪ったのは俺様なのだが…)
独角鬼王は敵の魔王から奪い取った魔王玉を俺様に献上しようとしたので、俺様は独角鬼王に言った。
美猴王「それはお前が暫く持ってろよ?蛟魔王には言っておいてやるからよ!これでお前も魔王に返り咲きだな?」
独角鬼王「へっ?魔王に?って、アッ!」
そうなのである。魔王同士の争いは禁じられているが、魔王以外の者が魔王を倒せば、その者が新たな魔王の称号を得られるのだ。
独角鬼王は魔王玉を見詰めて感慨深げにしていた。
今度は譲り受けたのではなく、己の手で掴み取った称号なのだから…
独角鬼王もこの戦場に身を投じて成長していた。
良く言うよな?子分は猿の背中を見て育つと…
そんな独角鬼王を見て羨ましがる六耳と三猿達。
六耳「くぅそ!羨ま羨ま羨ま!次は俺っちが手に入れてやる!」
三猿『生意気きゃ~!』
俺様は知っていた。
独角鬼王の奴は夜な夜な自軍のテントから抜け出しては、一人武芸の訓練を熟していたのを…
そんな姿を見ていたからこそ、俺様達もマジにさせられたのだ。
牛角魔王「直に奴も俺達の義兄弟に加わるかもな?」
美猿王「まだまだハェ~よ!もっと強くなって俺様を納得させてからだぜ!」
まぁ~頑張ってるし…
何か褒美を取らせても良いかなぁ~
と、独角鬼王には一部隊を任せ、『将軍』の地位を与えた。
それから他に大きな手柄を取り、実力が認めてやった奴達にも部隊を任せ、将軍の地位を与えた。
蛟魔王「他に使える奴はいるのかい?」
牛角魔王「そうだな…元々俺の部下だった奴で、狼族の氷炎兄弟が最近力を付けているし将軍に推薦しよう!」
蛟魔王「あの獣臭い奴達か…しかし野蛮過ぎないかい?」
美猴王「良いじゃないか?元気あって?俺様達に従順にしてる分には可愛いぜ!」
獅駝王「がはぁ!従順だって?忘れてないか?美猴兄貴に敵意剥き出しのアイツの事を?気付いてるだろ?」
美猴王「はっ?敵意?あ~アイツかぁ~!まぁ、気付いてはいるが関係ないね!それに俺様に盾突いたらどうなるか解らないほど馬鹿じゃないだろ?なぁ?牛角?」
牛角魔王「まぁな…」
そうだった…
敵意剥き出しに俺様に対して殺気を向けるあの野郎の事を忘れてたぜ。
そいつは目立つ奴だった。
いつも牛角の傍らでサポートしている奴で、その姿は牛角魔王に瓜二つなのである。
その頭上にある二本角さえも…
ただ一つ違う点は、
その姿は漆黒の牛角魔王とは正反対の、白髪白角だったのだ。
聞くにそいつは牛角魔王の弟らしく、似ていて当然なのである。
そいつは兄である牛角を慕い、その兄をたぶらかした[?]俺様に嫉妬ならぬ敵意を抱いていたのだ。
確か名前を?
え~と…
そうだ!そうだ!
蚩尤と言ったな!
とにもかくにも実力は俺様達四魔王には及ばずながら、既に下級の魔王を三体ほど倒し素晴らしい仕事ぶりなので一番最初に将軍に任命したぐらいなのだ。同時に魔王の称号も手に入れてるしな?
そういえば喉が渇いたな?
美猴王『おぃ!お茶!』
「遅れて申し訳ございませ~ん魔王様方!お茶をお持ちしました~!」
飛んで入って来た弱々しい奴は、俺様の新しいパシリだった。流石に独角鬼王をいつまでも小間使いさせておく訳にもいかんし、テキトーな奴を見付けてパシリにしたのである。
ん?
美猴王『何だ?この温いお茶は??もう一度温めなおせ!バカモノ~』
パシリ「申し訳ございませ~ん!直ちにお持ちしま~す!」
と、俺様はそのパシリを蹴り飛ばしたのだ。
全く使えない奴だ!!
あのパシリは…
えっと確か名前は…
混…混?混ちゃんだったけか?確か?
と、まぁ~
水簾洞闘賊団の指揮が高まっている中…
美猴王「ん?何だって?」
蛟魔王が俺様達に眼力魔王の残力を説明していた。
眼力魔王にはまだ付き従う『魔王』や『大王』が何人もいる。
しかも、最強最悪の十番台の魔王まで残っていると言うのだから面倒なのだ。
美猴王「十番台か…」
十一番~三十番クラスの魔王は第二完璧魔王と呼ばれていて、天界により特別に優遇された者達なのだ。その実力は三十番以降の魔王とは別格だと聞く。
ちなみに牛角魔王と蛟魔王も第二完璧魔王なのだ。
と、言っても…
牛角魔王は元一桁ナンバーだったのだが、現在は降格し十八番。
これは、かつての偉業のためらしいが。
が、その後牛角魔王は天界からの命令にも動かず従わず、戦う事を放棄していたために降格したのだそうだ。蛟魔王は現在十四番。
獅駝王は俺様が魔王になる少し前に魔王になったらしく七十一番から三十二番になっていた。
かくいう俺様は七十二番から三十五番へと昇格したのだ!
これも戦う相手との巡り会わせが関係してくるのだがな?
番号が格上の魔王を倒せば魔王玉の数字が昇格するのである。
実際、獅駝王の力量は未知数で俺様にも解らないし、魔王玉の番号が強さの基準なのかと言えば、それもあてにならないのが本音だけどな?
と、そこに!
六耳が慌てて入って来たのだ?
六耳「大変で~す!美猴王様聞いて下さいよ~!大変なんですよ~!」
美猴王「何だよ?騒がしいなぁ?何があったんだよ?」
六耳「それが!眼力魔王の城塞に侵軍したはずの先発隊五千が全滅したと報告が!」
美猴王「のわんだとぉ~?一体何があったのだ?詳しく説明しろ!」
それは先に偵察を兼ねて侵軍させておいた前方軍が、眼力魔王の配下の魔王に全滅させられたとの報告だった。
次回予告
その男は熱い男だった。
兄に報いるために忠誠を誓い、戦い、生きる。
その名は・・・




