番外編陸~大蛇の王の復活!?
今、この西の地で何が起ころうとしているのか?
それは大蛇の王の目覚めに関わるのか?
俺は那我羅…
俺は白蛇の巫女の目論みに自分の魂に仕込まれた術のせいで逆らえずに従う事になってしまった。
俺は移送されていく蛇神の列を気配を消しながら追った。着いた場所は天界の端にある使われていない北の神殿だった。
那我羅「あの神殿で儀式をやらかすつもりだな?しかし…これじゃあ近付けやしねぇ…」
目の前には3万近くの武神達が整列している。しかも蛇神討伐専門の特殊な訓練を受けた猛者ばかりであった。
那我羅「これは俺一人ではどうにもならんな…」
そう思った時、異変が起きたのだ?
那我羅「!!」
黒い影は床を這いながら武神達の並列している中央に向かっていく?
そして武神達の足下で止まると?
影の中から人影が現れたのだ?突然の侵入者に武神達も対処が遅れた。
一瞬、侵入者を中心に影が伸びて武神達をすり抜ける?突風が吹き、何が起きたか理解した時には遅かった。武神達は影の中から伸びる刃に一閃されて下半身から上半身が滑り落ちていく。突然の事態に被害のなかった武神達はなすすべなかったのだ。
そして現れた侵入者は、
「仲間を返して貰うぞ?」
みるみると化け物へと、蛇神へと姿を変貌させたのだ。突如の蛇神襲来に武神達は武器を構えるが、更なる蛇神が二体現れ武神達を襲った。連携が取れない武神達はなぶり殺しになるだけであった。
那我羅「何が起きてる?白蛇の巫女?お前の差しがねか?」
すると霊体の白蛇の巫女が目の前に現れ答える。
白蛇の巫女「馬鹿者めが…捕らわれた蛇神の仲間であろう。私の計画を台無しにして大蛇の王の目覚めの邪魔をするとは許せん」
那我羅「いや?これは好機じゃないか?奴等が武神達を引き付けていてくれるうちに、俺が儀式の完成を急がせ奪えば良いだろ?」
白蛇の巫女「成る程。なら、任したぞ?良いな?お前の命は私が握っている。馬鹿な真似はするでないぞ?」
那我羅「俺も命は惜しいからな?それより、俺は地上界の魔王らとやり合いたいだけだ!」
俺は戦場と化した表門を避けて、裏門から忍び込む。
俺に気付いた武神達は面倒だから斬った。
城内は意外と静かだった。
殆どの武神達は外に現れた蛇神の討伐に出払い、俺はすんなり中に入った。
その時、この状況を城の中にいる五人の将軍達が姿見の水晶で見ていた。
「飛んで火に寄るナンタラだな?」
「わざと蛇神の移送を晒しながら移動して甲斐があるってものだ」
「隠れ潜み滅多にお目にかかる事が出来ぬ蛇神が三体か…しかし我らの敵ではない」
「我らの役目は地上界からの魔物と蛇神が手を組まされぬように引き離し、この地にて現れた蛇神を一掃する事!」
この者達は蛇神討伐を専門とする武神達を統括する将軍達。その実力は天界を守護する将軍達の中でも選りすぐりの者達で構成されていた。そして出現した蛇神を一掃する計画が行われようとしていた。
五将軍達は各々武器を手にする。宝貝[パオパエ]と呼ばれる選ばれし神族が持つ特殊な力を持った武器。持ち主の神気で解放された力は将軍達の力を数倍に引き上がらせる。
叉刀将軍、士桜将軍、須将軍、将遊将軍、蒼手将軍!
戦場では三体の蛇神が暴れていた。屈指の武神達の骸が既に転がり、血の海と化していた。それでも残っている武神達は逃げもせずに蛇神に挑む。
その時!!
残った武神達は笑みを見せた?それは上空より感じた力の出現によって?蛇神は武神達の様子が変わった事に不可解を感じ再び襲い掛かって来た時、城より飛び降りて来た者の出現に身動きを止めたのだ。
将軍!!
武神達を纏める隊長、更に隊長達を統括する大将を将軍と言った。
士桜将軍、須将軍、将遊将軍が、数多くの武神達を血祭りにあげた凶悪なる蛇神の前に現れたのだ。
蛇神『天界の将軍のお出ましか?ヨカロウ…そこいらに落ちてる肉塊と同じく刻んでやろう!』
蛇神が口を開けると無数の牙が放たれる。飛んで来た牙を残像を残し躱す士桜将軍は、
士桜将軍「残念だね?我ら将軍を倒すつもりなら、本気でくるのだな?」
『宝貝・斬桜』
士桜将軍が宝貝に神気を籠めて解放させると、桜のような花びらが散りまみれて蛇神の身体を覆いながら斬り裂く!
蛇神『グォオエエ!』
更に須将軍の宝貝が発動すると二つの大きな盾が出現し、蛇神の攻撃を受け止める。
蛇神『受け止めるだけでは俺を倒せんぞ?』
須将軍「ならば返してやろうか?」
『宝貝・盾焼射』
蛇神の妖気を受け止めた盾から炎が迸り、蛇神を飲み込んでいく。
更に将遊将軍が空中より宝貝・光浄を発動する。浮遊将軍を中心に光の矢が蛇神に降り注がれる。
蛇神『影の斬刃!』
蛇神は影から刃を出現させ光の刃を弾く。
浮遊将軍「どうやら簡単には殺れそうにないようだな?」
天界の五将軍と三体の蛇神との戦場が始まった時、俺は城の中に足を踏み込んでいた。
だが、城内に侵入し、駆けていく俺の前を叉刀将軍が行く手を止めていたのだ。
叉刀将軍「お前、何者だ?何故ここにいる?」
那我羅「俺は道に迷って…直ぐに引き返します…」
その直後、引き返す俺の背後から斬撃が襲った。俺は振り返ると同時に大剣を抜いて斬撃を受け返す!
那我羅「何をするんですか?将軍?」
叉刀将軍「やはり曲者か?お前から感じるんだよ?うっすらと蛇神の気配がな!」
…恐らく白蛇の巫女の気配を察知したのだろうな?
那我羅「どうやら…簡単には通れそうにないようだな?」
俺は覚悟を決めた…
将軍を相手に俺が何処まで太刀打ち出来るのか?
面白い!
腕が鳴る!身震いが止まらない…今にも血が沸騰しそうだ!
俺は大剣を振り上げ、叉刀将軍に降り下ろす。受け止める叉刀将軍は、
叉刀将軍「何者か知らぬがお前を討伐対象とする!」
互いの斬撃が火花を散らせた!
那我羅「将軍と戦えるなんて願ってもねぇぜ!」
叉刀将軍「未熟ぅー!」
叉刀将軍の剣に俺の大剣は弾かれた。だが、俺の口元が笑む?
叉刀将軍「?」
すると叉刀将軍の胸鎧に亀裂が入り割れたのだ!
那我羅「どうやら俺の刃も将軍の域まで届いていたようだな?」
叉刀将軍「届いただと?将軍は天界の強さの象徴!キサマのような小物が届ける境地ではないわ!」
叉刀将軍の神気が高まり宝貝・斬刃が解放された。
高貝・斬刃は叉刀将軍の意思で伸び縮みし、枝分かれしながら向かって来た。
那我羅「どうやら本気になったようだな?そうこなくては面白くねぇぜ!」
俺も神気を高め大剣に集中させる。
俺の大剣が向かって来た無数の斬刃を弾き返す!一撃でも弾き漏らせば両断されるだろう。命ギリギリの中で俺は更に高まる。
叉刀将軍「あれは!!」
俺が斬刃を弾きながら神気を大剣に籠めて、叉刀将軍に向けて放ったのだ!
その一撃は叉刀将軍に向かっていき、吹き飛ばした!
壁際にまで衝突した叉刀将軍は驚いていた。
叉刀将軍「い…今のはまさか、覇気の力か?神気を一点に集中させ爆発的な力を放つ覇気を?あの者が?」
俺は一呼吸すると、
那我羅「こんなもんじゃないんだろ?もっと俺を楽しませろよ?」
起き上がる叉刀将軍は本気の顔付きになる。
叉刀将軍「良かろう。俺の誇りにかけ、全身全霊をかけてお前を倒そう!」
互いの神気が高まり、目の前にいる敵を倒す!
これは意地と誇りに対し、欲求と快楽の戦い!
俺と叉刀将軍の戦いに、外門での三蛇神と三将軍の戦い。その状況を一人城内にて残った蒼手将軍は捕らえた蛇神の前にいた。
蒼手将軍の目の前には弱りきった蛇神が幾つもの楔に身体を貫かれた状態で拘束されていた。蒼手将軍は印を結び強力な結界を張る。
蒼手将軍「天界に災いをもたらす蛇神よ?お前を奪い返しに来た蛇神共々、我らが駆逐してやるぞ」
だが、蒼手将軍は外の蛇神の状況を把握しつつ、叉刀将軍が戦っている曲者の存在に不快を感じた。
蒼手将軍「あの者は一体何者だ?報告にあった予言には、あの者の存在はなかったはず?」
蒼手将軍は天界の未来予知を司る武官より、この計画の全てを知らされていた。捕らえた蛇神を囮に、奪い返しに来るであろう三体の蛇神をも一網打尽にする。
蛇神は全て駆逐せねばならない…
さもなければ、予言の先に恐るべき未来が待ち構えていると言うのだ。
それは今起きている地上界から現れた六大妖魔王との大戦争とは比較にならない災いが地上界、天上界を巻き込み、世界滅亡危機の戦乱が起きるであろうと…
それが蛇神の王の出現!
蛇神の王が数千万の蛇神を率いて世界を滅亡させる。それを阻止するために今のうちに蛇神は全て駆逐せねばならない。それを行うために蛇神の躯を使い、蛇神因子を呼び覚ます石を造り上げ、全蛇神を早々に駆逐する計画なのだ。
そして、今日、この日に!
蛇神の王が出現すると予言されたのだ。
蒼手将軍「蛇神の王の出現は必ず阻止せねばならない。いや、本当に予言通り出現するのであれば我らの手で早々に始末せねばならないのだ!」
その時、拘束されていた蛇神の瞼が静かに開く。
《天界の…下等種共…今に見ているが…良い…今に…この手で…》
そして離れた場所よりこの地で起きている戦いを見ている者がいた。
「大蛇の王の目覚めに天界の者達もまた動き出したようだのう。このままでは王の目覚めに支障が出るかもしれん…」
それは隠れ洞窟にて見ていた白蛇の巫女であった。
白蛇の巫女の背後には七人の白衣を纏った者達が仕えていた。
「巫女様。我々が出ますか?」
白蛇の巫女「確かに、このまま天界の好きにさせて置くのは気にくわぬな?だが、我らは状況を見定めなければならない。我らの王が目覚めるその時まで!」
大蛇の王の復活祭
今、この地で何が起ころうとしているのか?
次回予告
天界の将軍と蛇神との戦い!
迫る大蛇王の復活!
巻き込まれた那我羅の運命は?
※次話、完結のため、いつもより長くなっています。
天上天下・美猴王伝説と邪神編のラストをお見逃しなく。




