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天上天下・美猴王伝説!  作者: 河童王子
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番外編伍~地上界からの魔王侵略!


大蛇の王を呼び覚ます宿命を持たされた天界の武神・那我羅の運命は?



俺は那我羅


俺は蛇神討伐で生き残った。その時に起きた出来事は俺しか知らない…


蛇神討伐の功績から俺は武神となり、天界に出現する魔物討伐の日々を過ごしていた。


だが、あの日、俺は知ってしまった。


この天界に出没する魔物は実は天界が蛇神因子を持つ者を選別するために行われている産物だと…



那我羅「俺には関係ねぇかぁ?」


そうだ。


関係ない。化け物が何であろうと、俺のオヤジがどうしたかったろうと、今の俺の生き方を変える理由にはならない。俺は今まで通り化け物を斬って、報酬を手に入れて生きていくだけだ!それに武神となった俺は生活も環境も目覚ましく変わった。これを手放して馬鹿な事をする道理がない!

俺は自分の部屋[武神には相当の邸を与えられる。]で酒を飲みながら横になる。その時、俺に声が聞こえる?その相手とは?


「お前には大蛇の王を呼び覚まして貰わねばならぬ。さもなくば甦らせてやったウヌの命を再び消してやっても良いのだぞ?」



物騒な事を言うのは白髪の女…白蛇の巫女であった。だが、俺の前に現れた巫女は透けとおる幻影。恐らく本体は何処か離れた場所で俺を見ているに違いない。


那我羅「俺に付きまとっても、その大蛇の王は見つけられねぇぜ?そもそも俺にそんな人探しの能力なんてないからな?」


すると、白蛇の巫女は薄ら笑いをし、俺に向けて指をさした?


那我羅「何だ?俺をヤル気か?」


俺は傍らに置いた大剣を掴むと白蛇の巫女に向かって構える。幻影にも関わらず肌身が凍てつく感覚に陥った。だが、殺意はなかった。


白蛇の巫女「安心するが良い…お前は大蛇の王の道標の運命を持っている。そして間違いなくお前は大蛇の王を目覚めさせるであろう」


那我羅「俺が大蛇の王の道標で?その王様を目覚めさせる?馬鹿言うな?腐っても俺は武神だぜ?」


だが、正直武神の誇りも意地を張る理由も俺にはなかったが、好き勝手に操られる事に対して反発したくなったのだ。


那我羅「その大蛇の王を俺が斬れば、遊んで暮らせるだけの報酬も手に入る。いや、待てよ?蛇神一匹でも多額の報酬が手に入るのだから、その王を始末すれば界層を任される将軍に抜擢も夢じゃないな?」


これは挑発でもあったが、白蛇の巫女は俺に向かって呟く。


白蛇の巫女「器の小さい者よのう?」


那我羅「何だと!?」


白蛇の巫女「そんなのがお前の生きる目的か?」



生きる目的だと?


俺は言い返せなくなる。


俺の生きる意味…


それは何だ?


今まで俺は生き残るためだけに戦って来た。魔物討伐の日々。それは狩人から武神となった今も同じだ…これが俺の生きる目的なのか?武神になる夢は既に叶った。


これから先、俺はどうする?どうなりたい?


本当に将軍になりたいのか?俺に未来には何がある?



那我羅「………」


気付くと白蛇の巫女は俺の前から姿が消えていた。


正直、今を生きる事だけで精一杯で、俺は自分自身について、俺の生きる目的なんてのを考えた事がなかったのだ。


那我羅「苛立つ!」


俺は目の前にあったベッドを蹴りつけると、つま先を痛めてしゃがみこんだ。




それから間もなく、天界が騒がしくなる事になる。


俺はその日、遊郭で女を集めて酒を飲んでいた。俺は下級層では出世株で、一軍の隊長を任される程であった。そんな俺に貴族の連中は良い顔をしなかった…


貴族連中は天界でも優秀種で、名家に産まれ育ち、苦労なく生きて武神としての英才教育を受けていた。


そんな連中にとって、俺みたいな下級層育ちの、しかも狩人から成り上がった者を快く思わないのも当然だろう。そもそも俺のオヤジは将軍だったので本来貴族出身なのだが、蛇神に変貌したオヤジの件もあるので俺の身の上は隠していた。


それでも少なからず俺に近付く連中もいた。金を持った貴族が俺に目を付け、武神のボディーガード[護神]として使いたいと何度も誘いがあった。内容は旅の護衛や暗殺者から身を守る。それは魔物もいれば、同じ天界人の権力争いにより放たれた刺客諸々。


俺は強敵の匂いがする面白そうな内容の件だけ引き受けた。俺は強い者と戦えればそれで良かったのだ!


そんな時に俺の取り巻き連中が話している内容に俺は興味を抱いた。


内容は…


今、地上世界が騒がしく、地上界を支配した妖怪が仲間達を引き連れ、天界に攻め混んで来ると言うのだ。


那我羅「地上界を支配した魔物か…」


神兵「しかし、所詮は地上界の妖怪。例え軍勢であっても天界の武神達の前では虫けらも同然ですよ」



だが、何か俺の中で疼いた。地上界を支配したって言葉が俺の興味を抱かせたのだ。どれ程の者か気になった。


それから時が経つ。そんな時はかからなかった。


天界は荒れ始めていた。


例の地上界から攻め混んで来た妖怪の軍が次々と天界を荒らし始めたのだ。既に下級層の隊長級は半数以上落とされ、現在将軍を任されている魏将軍までが倒されたのだ。


当然、俺のいる区域にも妖怪連中は攻め混んで来た。


俺は妖怪の軍を斬り伏せていく。


地上界の妖怪って奴等は何か違った。奴等からは生を感じるのだ!天界の武神のような規律で決められた生き方でなく、個人として、生きるために己の信念のために戦っている。その思いの強さ、今日まで磨きあげた己をぶつけ合う事で命の駆け引きが出来る。


俺の性分は恐らくこいつ達に近いと感じた…


そして奴等の隊長格と一騎討ちとなった。強かった。天界とは違った戦術や剣術。その中で感じる。目の前の敵は泥にまみれた場所から成り上がり、軍を任されている。今の俺と変わらないのだと!


そして地上妖怪の隊長と戦って勝った時に、倒れているソイツは言った。


「不思議だ…お前からは…俺達と似た…臭いを、感じた…天界にも、いるんだな?お前…みたいな奴が…」


奴も気付いていたのだ。


「お前が、天界の糞野郎でなければ、スカウトしたかった…ぜ?お前みたいな強い奴と戦い敗れた事は、俺の最期の…救いだ。だが、死ぬ前に教えてくれないか?お前の剣からは迷いを感じた…お前は何のために戦っている?」



それは図星だった。そしてらしくなく答えた。


那我羅「お前も強かったぜ?俺は強い奴と戦いたいだけだ!それだけだ!」



そして、死にゆく魔物は面白い事を言った。



「なら、地上界には俺よりも、もっと遥かに強い六人の魔王様がいる!もし強き者を望むなら、戦ってみるがよい…その命と引き換えに…な…」



そこで、息耐えた。


六人の魔王?


そいつ達なら今の俺を滾らせてくれるのか?


俺の渇望を満たしてくれるのか?


俺の目に再び活気が満ちた。目的が出来たのだ!


六人の魔王ってのと戦ってみたいと!




だが、天界の武神である俺には自由に戦場を決める事が出来ない。地上界から来た妖怪軍の本陣は既に俺がいる階層の更に上の階層へと向かったと聞いた。


下級層の俺が奴等を追いかけるには、上階層への通行手形が必要なのだ。


なら、どうする?


考えても拉致があかねぇ!


せっかくの獲物が近くにいるんだ。やり合わないなんて出来るかぁ!


俺は上層界へと登る転送装置がある中央神殿へと向かった。そこは既に妖怪軍に占領され、武神達は入る事は出来なかった。


俺は武装し、大剣を握り締める。俺は特攻をかけて転送装置から上界を目指しながら六大魔王を追うと決めたのだ。独断で!


魂が疼く…


強者を求める俺の渇望が背中を押し、この結論を導き出した。



那我羅「待っていろよ?今に行くからなぁ!」



俺は特攻した。突然の襲撃に転送装置がある城を警護していた妖怪軍も隙をつかれていた。まさかの襲撃?しかも一人で?それは無謀とも思えた。少なくとも数千はいる妖怪軍の中に一人で何が出来ると?相手になるはずがなった。当然、俺も全員を相手にするはずはなかった。転送装置がある門に向かって一直線に、邪魔する連中のみ斬り倒して突っ込んだ。


「奴の狙いは転送装置だ!!」


妖怪軍の一人が目的に気付いた時には遅かった。俺は転送装置に神気を籠めると門に向かって飛び込んだのである。


一瞬の襲撃、出来事だった。だが、たった一人が上層界へ向かったとして、上層界は更に激しい戦場の場。戦場に足を踏み込んで早死にするだけだろうと、そこまで深追いする事もなく見逃された。


その後も俺は上界層目指し転送装置がある門をくぐり抜けていく。戦場でのどさくさもあり、俺の動向は天界には知られる事はなかった。


そこで俺は噂を耳にする。


六人の魔王達の地上界で起こした戦争の数々、今も繰り広げられている天界での戦いの噂を!


地上界を支配した金色の石猿妖怪に、漆黒の鎧を纏う牛神。竜神族の女魔王に獅子の顔をした魔王。不死鳥一族の魔王に耳が六つある猿神の魔王の噂を!更に六人の魔王の下にも数名の魔王が軍を率いていると…


あはは…


血沸き肉躍る!


早く追い付き、手合わせたい!命の駆け引きをしたい!魂が渇望し疼く!


俺は理解した…


未来がどうなるとか、先行きを考えるなんて俺には無用だったのだ。俺の生きる目的は、俺を満足させる戦いを求め、強者を望む事だけ!そして今、俺の欲求を満足させられるであろう連中に追い付こうとしているのだ!


六大妖魔王!!


俺は既に最上界層にまで辿り着いていた。様々な戦場下で、天界の城はことごとく魔王達に占領され、落とされていた。


俺は魔王達の情報を元に追いかけていたが、その途中、俺は目撃してしまったのだ。


天界の武神達の一隊の行列が戦場とは真逆の地に向かっている事に?


俺には関係ない…


そう思って見過ごそうとした時、その行列の中心に捕らえられていた化け物を見て足を止めた。


その化け物は間違いなく蛇神だったのだ!


蛇神は身体中に拘束の槍を突き付けられ、妖気が消えかけるほど弱っていた。


そして、俺は耳に意識を高めて離れた場所にいる連中の会話を盗んだ。



「中央の地は今も戦争が行われているんだろ?良いのか?俺達は向かわなくて?」


「先にこの化け物を西の宮殿に移送するのが先決だ!これは極秘任務なのだ」


「でも、蛇神が凶悪な化け物だってのは解る。ならば今、ここで始末すれば良い事ではないのか?これだけ弱っていれば容易かろう?何故、生かして運ぶ必要があるのだ?」


「…それはな?」



そこで俺の身にも関わる言葉を聞いてしまった。



「この蛇神は蛇神因子を見付け出すための特別な石を造るための材料らしい」


「!!」



その言葉を聞いた直後、俺の意識に白蛇の巫女の声が入って来たのだ。


白蛇の巫女「あの石は蛇神を封じ込み、その仲間を引き寄せる力を使って蛇神因子を覚醒させる物。私もまた天界の者に捕らわれ石に封じられていたのだ。それをお前が解放してくれた」


那我羅「って、待てよ?お前は石を破壊する前に既にオヤジの前にいただろ?」


白蛇の巫女「私は捕らわれた時に霊体を飛ばしていたから免れていたのだ。肉体は石に封じられていたままだったのだ」


那我羅「器用だな?」


それで蛇神の石が覚醒させたオヤジを使い、自らの身体の解放ではなく、逆に蛇神因子を見付け出す石を逆手に取って大蛇の王の覚醒を計画していたのか。


那我羅「で?お前はあの蛇神を助けろと俺に言うつもりか?」


白蛇巫女「否。あの蛇神は敢えて石になって貰い、その石を天界の者から奪い、石を使って大蛇の王を呼び覚ますのに使わせて貰おうか」


那我羅「仲間とかないんだな?」


蛇神の巫女「全ては大蛇の王が目覚める事が先決。お前には働いて貰うぞ?」


那我羅「ふざけるな!俺はお前に従うなんて一言も言ってないぞ!俺は俺のやりたいようにやる!俺は地上界の魔王を追い、戦う!」


白蛇の巫女は言った。



「従わねば、お前の命を奪うまでよ」



那我羅「ヤれるもんなら、やってみやが…あっ?あぁあああ…」


俺は突然胸を抑えながらうずくまる。


那我羅「お…俺にな…何をしやがっ…た?」



白蛇の巫女「お前を甦らせた時に、私の手駒として使うために魂と肉体の繋ぎめに細工をさせて貰った」


那我羅「なぁ?何だと?」


俺は…


なすすべなく従う事になってしまった。


次回予告


天界の軍が極秘に行っている蛇神の移送先に那我羅は仕方なく侵入する事になる。


そこで何かが起きる!?

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