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天上天下・美猴王伝説!  作者: 河童王子
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番外編肆~転生の門の秘密!!


蛇神を相手に那我羅と項将軍が同時に斬りかかる!


しかし、那我羅の感じた蛇神の反応は?


俺は那我羅…


蛇神討伐に出ている俺は今、武神になっていた。


あの討伐で生き残ったのは俺一人だった。それは討伐に出た武神も狩人も、そして討伐対象であった蛇神も生き残ってはいなかった。

あの日、唯一生き残った俺は後から駆け付けた武神達によって救助された。武神達が駆け付けた時、そこには辛うじて生き残った俺が倒れていた。その近くには武神達の将軍であった項将軍の亡骸と、真っ二つに一刀両断にされた蛇神の躯が残っていた。


その後、俺は蛇神討伐の功績が認められ、狩人から武神へと昇格出来たのだ。


念願だった武神。


しかし、何も変わっちゃいねぇ…


変わった事と言えば確かに暮らしは良くなった。それに神気を操る修行をさせられ、纏う鎧や武具は立派なもんになった。


だが、やっている仕事は狩人時代と同じ魔物討伐なのだ。


来る日も来る日も魔物討伐の日々。最初は戦いの毎日に血が騒ぎ、活気していたのだが、次第に俺は飽き始めていた。それもこれも俺が強すぎるから…


魔物討伐に出ても、一刀で決着がつく。大した魔物に出くわす事もない。好きに探したくとも上層部より与えられた討伐の魔物としか戦えないのだ。


このままでは腕が鈍る…


同じ武神でも、俺のいる階層には俺と交えられる程の武神がいなかった。



俺は強くなっていた…



それも、あの日を生き残れたからだ。


思い出すのは、あの日の蛇神討伐で出会った項将軍に、蛇神との血沸き肉躍るような命の削りあい。


あれ程の感情の震えはもう二度と味わえないのだろうか?


俺は手にした大皿で酒を飲み干すと、目の前の鏡に写る自分を見た。


「蛇神か…」



その馬鹿げた力に加えて知能も高く、更に残虐な蛇神は神族の天敵であり、最高討伐対象の化け物…


だが、その正体を…


あの日俺は知ってしまったのだ!




俺は思い出す。


俺が蛇神に向かって斬りかかったあの時、俺の背後から項将軍も同じく斬りかかって来たのだ!


項将軍と二人がかりなら、この化け物をぶっ倒せる!


そう思って俺が飛び掛かった時、蛇神の方は俺を見たまま動かないでいた?意味が解らなかった?しかし俺は躊躇せずに蛇神に向かって渾身の一刀を降り下ろしたのだ。生々しい感触が伝わる。このまま一刀両断にしてやる!


そう思った直後、俺は予想だにしなかった攻撃を受けたのだ?背中に強烈な衝撃を受け、俺は痛みで悶絶しそうになる。


那我羅「ウガガ!?」


何が起きたか解らなかったが、振り返る俺の背後には剣を降り下ろした項将軍が立っていた。


まさか、項将軍が俺を斬ったと言うのか?何故??


その直後、蛇神の尾が妖気を纏った槍の如く突き出された!だが、それは俺をすり抜け、青ざめて立っている項将軍の胸より上の頭部ごと一瞬で消し去った。



何が起きたんだ?


マジに?


項将軍の躯が倒れ、俺もまたその場に倒れる。


蛇神もまた傷付きながらも俺に近付いて来る。


俺を喰らうつもりか?


なら、喰らえ!


その代わり俺はお前の腹の中で腐って腹を壊してやるからな!



だが、蛇神は言った…


「お前、那我羅なのか?」


蛇神?


何故?俺の名を?


すると蛇神は傷付いた身体で俺を抱き締めると、突然叫んだのだ!?



「この者を生かせ!お前なら出来るはずだ!白蛇の巫女よ!!」



白蛇の巫女だと?


そこに、奥の祭壇から何者かが近付いて来た。


解る…


そいつも蛇神だ!!


しかも女型の蛇神だと?



そいつは見た事もない白装束[着物]を身に纏った白髪長髪の、仮面で面を隠した女だった。


白蛇の巫女「…どういうつもりだ?加具王?」


加具王?


加具羅はオヤジの名前だ…


なら、やはり?


加具王「俺の息子を救ってやってくれ?お前なら出来るのだろ!」


白蛇の巫女「無論、容易い事…しかし理解不能。そのような無駄な事を私が行う義理はない。それよりもお前にはやって貰う役目があるだろ?」


加具王「………」


沈黙の後、加具王は驚くべき事を言った。


加具王「我ら蛇神の…大蛇の王の復活だな」


大蛇…


大蛇の王の復活だと??



白蛇の巫女「もうじき我らの王がお目覚めになる。お前には王を目覚めさせる運命だと私の予言に出た。お前には死んで貰っては困る」


加具王「予言か…大蛇王様に仕える姫巫女…白蛇姫」


白蛇姫?


どうやら蛇神の女の名前のようだな?



白蛇の巫女「よって今よりお前を生かす術を行う。その者は捨ておくが良い?」


加具王「そうはいかん!その者は俺の息子だ!命を救ってくれなければ俺はお前に従わん!」


白蛇の巫女「大蛇の王の目覚めに協力を拒むと言うのか?」


加具王「そうは言わん…」


白蛇の巫女「?」


白蛇の巫女「俺の息子が大蛇の王の目覚めに協力してくれるはずだ…」


白蛇姫「どういう意味だ?」



なぁ?何だと??


俺が協力だと?


俺は傷付いた身体を起こして、薄れる意識の中で会話に割り込む。



那我羅「馬鹿言う…んじゃねぇ!お…俺が…協力だと?ふざけるな!」



すると加具王[オヤジ]は俺に向かって言った。


加具王「お前が生き抜くためには…天界の真実を知り、その上でお前自身が強く有らねばならん。こんな所で死んではならん!!」


那我羅「そ…それは…どういう意味だ?」



オヤジは再び白蛇の巫女に向かって頷く。


白蛇の巫女「………」


白蛇の巫女が右掌に妖気を籠めると紫水晶が出現し、光を放つ!その光は俺の頭の中に記憶が流れ込んで来たのだ?その記憶とは…オヤジと項将軍の記憶だった。



記憶は見せた…



俺のオヤジの加具は狩人だった。しかしそれは仮初めの姿であった。オヤジの本職は武神だったのだ!しかも下級層の守護を任された将軍だった。


将軍であるオヤジは下級層の狩人達が生きるために力無くとも魔物と戦い、散っていく現状を見過ごせずに、素性を隠して狩人達をまとめ魔物狩りをしていたのだ。


実の息子にすら素性を隠して…


そんなある日、天界上層部より将軍として極秘任務が与えられたのだ。


それは…


蛇神因子の根絶だった。



蛇神因子とは?


それは天界でも限られた者にしか知らされていない極秘事項であった。


天界で罪を犯した者は天界の最下層にある牢獄へと幽閉され、そこで魂の浄化を行い再び転生される。その場所は限られた者しか入れず、その場所は天界の上層部が決めた者にのみ管理を任されていたのだ。


その場所を転生の門と言った。


転生の門で転生された罪人は生前の記憶を全て消去され、新たな生をおくるのだ。ある者は再び天界人として、だが、その罪が重く魂が浄化が出来なかった者は獣へと姿を変えられて地上界へと落とされるのだ。


だが、その獣へと転じて落とされた者の中には、その濁った魂の力が消えずに…


獣と天界人の融合した化け物へと…妖怪へと姿を変えて転じてしまうのだ!



それが神堕ち[妖怪]の始まりであった。


そしてオヤジの役目とは転生の門の浄化の最中に化け物へと転じた罪人を処刑する事であった。


罪人達が入って来て転生の門で浄化されていく。記憶を失い浄化される者、獣に転じて地上界へと運ばれる者。そして1割の確率で目の前で化け物に転じる者!


その直後、オヤジ率いる直属の武神達が化け物となった天界人を斬っていく。



加具羅「天界の平和のためと解っていても、何と酷い…」


その時、オヤジは見たのだ!?


有り得ない…


転生の門に列べられていたのは、罪人ではなく拐われて行方不明だった天界人であった。しかも操られているかのように転生の門に入って行く。


加具羅「…一体、何が起きているのだ?何故、罪のない者達が転生の門に?」


一人一人入って行く中で罪のない者達は記憶のみ消されて再び天界へ戻されていく。


加具羅「罪人でないのだ…問題はない…」


安堵したのも束の間、突然起きたのだ?罪人でないはずの民が苦しみ出して化け物へと転じて暴れ出したのだ!!


武神達が刃を向けて化け物となった者に斬りかかる。


加具羅「待てぇえ!その者は罪人ではないぞー!!」


だが、他の武神達は無慈悲に化け物となった民を斬殺したのだ。だが、その後も他の罪のない者が化け物へと転じて暴れ出す。


加具羅「一体、何が起きていると言うのだ…」


そこに、オヤジに仕える副将軍だった項が言った。項は先にこの転生の門で仕事をしていた。


項「将軍の気持ちを察します。しかし、これが天界の隠された闇なのです」


加具羅「闇だと?」


そこで語られたのは正しく天界の闇であった。


この転生の門とは振るい分けなのだ。それは魂の選別。この天界に住む神族の魂には、古の神族の魂が僅ながらに残っていると言う。その魂の覚醒遺伝は稀に残虐性を表し、古の力を覚醒してしまう恐れがあると言うのだ。


その古の神族こそ神族の天敵であり、厄災の根元。蛇神族なのだと!


そして天界は覚醒遺伝の蛇神因子の根絶を目的として、この転生の門を使って選別していたのだ。



加具羅「馬鹿な!天界がそんな非道な真似をするな…んて…」



確かに蛇神の因子を選別する事は出来る。しかし罪のない者達はどうなる?因子を持っていたという理由だけで始末される。放っておけば因子が覚醒するなんて事も無いかもしれないのに…。それに蛇神因子を持っていなくとも、この転生の門によって魂に変異が起きて妖怪に転じる事のリスクのが高いのだ!



加具羅「こんな事は辞めさせねばならぬ…」


項「それは成りませぬ!天界に叛けば貴方まで討伐されますよ!将軍!」


加具羅「それでも!」


項「息子さんがどうなるのですか?将軍が討伐されたら、息子さんだって生きてはいけませんよ!」


加具羅「ウググ…」



オヤジは拳を握りしめ、感情を堪えたのだ。


その後もオヤジは役目を果たしていた。感情を圧し殺し、この神とも思えぬ所業に目をつぶりながら…



それから時が流れる。


オヤジは一人、転生の門の前にいた。


加具羅「やはり私には無理だ…例え私の身がどうなろうと、この門は破壊せねばならん!」


心残りは残してきた息子[幼い頃の俺]であった。


それでも己の意思に嘘はつけなかった。オヤジは見上げるほどの転生の門の真下にて神気を高めていた。狙うは門の中心にある神玉であった。それが天界人の魂の中にある邪念より、化け物へと転じさせ、更に蛇神因子を呼び起こして見分けるのだ。



加具羅「一撃で、あの神玉を破壊する!」


だが、神気を高めていたオヤジの背後から気配を感じたのだ?それは?


頃「あれほど止めたのに…貴方という方は…どれだけ己を偽れないのだ!」


加具羅「やはり気付いていたか…頃!」


頃将軍はオヤジの一番弟子であった。


しかし、天界への忠義という正義とオヤジの正義は相反してしまったのだ。


頃「仕方ありません。私は貴方を謀叛の罪で討伐せねばなりません。お覚悟!」


すると頃の背後から、頃直属の配下の武神が姿を現してオヤジを囲む。


加具羅「私とて無駄死にするつもりはない!」


オヤジは向かって来る武神達を相手に剣を抜く。その強さは武神達を寄せ付けなかった。仮にも将軍級の強さを持つオヤジを相手に項には秘策があった。


それは…


隠れていた武神が眠っている子供を拘束し、オヤジに向かって叫んだ。


「お前の子供の命が惜しければ剣を捨て、投降せよ!」


その子供とは正しく俺の事であった。俺はあの日、その現場にいたのか??


加具羅「卑怯な!それが天界の武神たる者の行いかぁ!」



オヤジは無念と自らの剣を捨てた。


剣を捨てた無抵抗なオヤジに武神達は一斉に剣を突き付ける。串刺しにされ、吐血し、意識が消える中で、オヤジは最後の力を振り絞り飛び上がったのだ!



項「!!」


オヤジが飛び上がった先には門の中心に嵌められた神玉だった。

そして、神気を神玉に向けて放ったのだ!

静寂の後、神玉はひび割れて砕け散り、強烈な閃光が辺り一帯を覆った。同時に転生の門が崩れ始める。



項「何て馬鹿な真似を!!」


だが、それだけで済まなかったのだ。神玉が放った光は、その場にいた者達に浴びせられ、突然苦しみ出したのだ。


項「なぁ?何が起きているのだ?まさか!!」


神玉の光は転生の門の源。その光を浴びた者は、純潔な魂なら記憶が消えるのみで済むが、穢れた魂を持つ者は化け物[妖怪]へと転じてしまうのだ。


この場にいた者達は、転生の門の秘密を知り、心を捨てた者達。その者達は…


化け物に転じた!


運良く光を遮り助かった者達に化け物となった武神達が襲い掛かる。


項「コノォ!」


項は、剣を振り払い化け物達を薙ぎ倒す。だが、そこで気付いたのだ?


オヤジの姿が消えている事に?


その時、仲間の悲鳴があがった?それは幼少の俺を掴まえていた者だった。項が振り返った時、そこには惨殺された仲間、それに…


項「そんな馬鹿な事が…」



狼狽する項の前には、化け物へと姿を変えたオヤジが立っていた。


しかも、その姿は正しく…


蛇神!!


項「…何が起きてしまったのだ?まさか加具羅将軍が蛇神になるなんて!!」



蛇神となったオヤジは変わり果てた我が身を見て、決意した。



『この私が蛇神か…そうか…それも良いかもしれんな…。もう天界にはうんざりしていた!これから先、俺は伝説通り神を喰らい滅ぼす蛇神として生きるのも面白い!』



その瞬間、オヤジは視界に映る脅えた武神だけでなく、変貌した化け物をも八つ裂きにしたのだ。


そして、残されたのは…


幼少の俺と、傷付いた項のみとなった。



項「し…将軍…」


するとオヤジは倒れている俺を拾い上げ、項を殺さずに残して目の前から消えたのだった。



項「私に…情けを?しかし…私は天界の武神として、貴方を放っては…」



それがオヤジが蛇神となった経緯であり、項将軍との因縁であった。


そして意識を失っていた俺は村に残され、この日を境にオヤジの消息が消えた。後に項将軍の隠蔽によりオヤジは英雄として死んだと村に噂された。それは師であったオヤジへの恩義でもあったのかもしれない。


俺は全ての経緯を聞いて茫然となっていた。余りにも現実離れして信じられぬ真実に言葉は出なかった。



そこに白蛇の巫女が言葉を発した。


白蛇の巫女「大蛇王様を導きし者の最期の言葉を信じよう。この神族の者に道標の役目を受け継いで貰おうか…それもまた預言」


白蛇の巫女は俺に向かって掌を向ける?


すると白い光が俺を包み込み、みるみる身体の傷が塞がっていく。


同時にオヤジの身体が干からび始め、崩れ始めたのだ?


那我羅「オヤジィ!!」


オヤジは俺に視線を向けると、遺言を託した。


加具羅「那我羅よ…よくぞ今の今まで生きていてくれた…さぞ、苦しい歩みだっただろうな?だが、それもこれから起こるお前の道に比べれば些細なもの…」


那我羅「それは、どういう意味だ?」


加具羅「大蛇の王を呼び覚ませ!それがお前の運命だ!!」



その言葉を発したと同時に俺の目の前で、オヤジの身体は力尽き、ボロボロと身体が崩れ息絶えたのだった。


次回予告


天界を滅ぼすと言われている大蛇の王!


その王を呼び覚ます宿命を持った天界の武神となった那我羅の運命は?



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