トラウマの始まり?壊滅の序曲!?
獅駝王の前に現れたのは、別の地へと討伐に出ていたナタクであった。
しかも、ナタクから仲間達の血の匂いが?
話を戻すとしよう。
美猴王と六義兄弟達が中央神殿と四聖獣の塔破壊に攻めこんでいる最中、実は別動隊が動いていたのだ。
風雲魔王率いる主要メンバーが帝釈天の住まう善見城の麓に進行していた。美猴王達が暴れているため、城は完全に手薄になっていた。
怪力魔王「ここまではスムーズに来れたな?」
風雲魔王「手筈通りだ。後は美猴王達が四聖獣の塔を破壊し結界を消してくれれば、我等が一気に善見城へと総攻撃するのだ!」
怪力魔王「それまでは天界の武神に見付からないように待機だな?」
この配置には他に剛力魔王と怪力魔王、玉面魔王に刀剣魔王。他には蚩尤の義兄弟の氷狼と炎狼、砲丸魔王と亜騎馬魔王の主戦力に三千の軍だった。
蚩尤「これが最後の戦いになりそうだな」
炎狼「兄貴?俺達、この戦いで勝てば英雄だよな?なぁ?」
氷狼「英雄なんてもんじゃないぜ?伝説に語り継がれちまうよ!当然、俺の名前も残るよな?そしたら俺のガキ達に鼻高々で胸を張れるってもんよ~」
氷狼には二人の子供がいたのだ。こいつは修行期間に女を作って子作りしていたのだ。しかも女を作った事で自信が付いたのか?真面目に修行していた炎狼と互角の実力になっていた。
何て奴だ!!
刀剣魔王は砲丸魔王と亜騎馬魔王を呼ぶと打ち合わせをしていた。そこに剛力魔王が横切るのを見て呼び止める。
刀剣魔王「剛力さん!では我、行って参ります」
剛力魔王「頼む」
刀剣魔王「剛力さ~ん!我、頼まれます~」
剛力魔王に抱きつこうとする刀剣魔王は剛力魔王に殴られ目を回す。
刀剣魔王「いたた…では、行きますね?」
刀剣魔王が出て行こうと振り返った時、
『!!』
剛力魔王「待っ…」
剛力魔王は刀剣魔王の背に何かを感じたが、それ以上何も言わずに行かせた。
そして刀剣魔王は砲丸魔王、亜騎馬魔王に三千の兵を率いて結界を出て行く。彼らは外部から邪魔されないように見張りを厳重にするためだった。
砲丸魔王「何だかんだで、とうとうこんな所にまで来ちまったんだなぁ~」
刀剣魔王「ん?」
砲丸魔王「俺はよ?魔王でも中堅でも下の下程度の魔王だったんだ。俺の城も腐れたようなそんな主だったんだぜ?美猴王様の噂を聞いて旅に出て、自分なりに修行をしながら戦場に出ては、辛うじて生き抜いて来た。それが今じゃ天界に進行してしまうんだもんな?それも全て刀剣兄貴が俺なんからを導いてくれたからだよ~」
刀剣魔王「我も美猴王とは敵対する軍にいたのに今では信頼を得て軍を率いている。誠に数奇な運命よ」
亜騎馬魔王「私も似たり寄ったりだよ。あはは」
砲丸魔王「皆はこの戦いが終わったらどうするんだ?やっぱり魔王復権か?」
刀剣魔王「我はこの戦いが終わったら…」
亜騎馬魔王「皆まで言わないでください?刀剣兄貴は剛力魔王様だろ?」
刀剣魔王「うむ。我は剛力さんと結婚するんだぁ~」
砲丸魔王「あはは!」
亜騎馬魔王「ふふふ!」
一端ふざけた刀剣魔王だったが、真面目な顔付きになると言い直す。
刀剣魔王「だが、その前に…我は旅に出るつもりだ」
亜騎馬魔王「旅?」
刀剣魔王「うむ。我が刀剣一族を滅ぼした奴を見つけ出し、我の手で仇を討つ!」
刀剣魔王の一族はその異端な能力[その身が死すと魂が魔剣となる]により、何者かによって虐殺された。
生き残ったのは旅に出ていた刀剣魔王のみであった。
砲丸魔王「じゃあ、俺も一緒に行こうかな…」
亜騎馬魔王「私も行こう!刀剣兄貴には世話になった。その恩義を返したい!」
刀剣魔王「お前ら…」
刀剣兄貴は二人の言葉に涙目になる。
が、その時!!
その場にいた全員が寒気を感じる。凍てつくような殺気に息が詰まった。
刀剣魔王「一体、何が!?何かが猛スピードで近付いて来ている?」
刀剣魔王の指示で警戒する中、その者達は現れた。
雷鳴が鳴り、雷が天より刀剣魔王達の目の前に落下して来たのだ!!
刀剣魔王「油断するな?雷の中に誰かいるぞ!!」
雷が消え、そこに二人の武神が現れた。突如、一帯に緊張が走るが、仲間達は歴戦の猛者達。武器を手に少しずつ囲みながら距離を縮める。
が、再び雷が拡散した?
その直後、仲間達が一人一人倒れていく?しかも皆、雷が貫き確実に命が絶たれていた。
亜騎馬魔王「こうなれば私が!!」
亜騎馬魔王は妖気を集中させると目の前に昆虫騎馬が出現する。
「騎馬出陣!!」
魔王は武器を手に昆虫騎馬に乗って、突如現れた武神に向かって突っ込む!
亜騎馬魔王「せぇー!」
亜騎馬魔王が剣を振るった直後、昆虫騎馬はゆっくりと歩き始めた?
刀剣魔王「!!」
刀剣魔王は見た。昆虫騎馬に乗っていた亜騎馬魔王の首が無くなり、血が噴き出しているのを!
亜騎馬魔王の首は現れた武神の足下に転がっていた。まさか斬られたのか?あの一瞬で?しかも亜騎馬魔王程の手練れが先に攻撃したにも関わらず、あの一瞬で首をはねたと言うのか?
その様を見て怒りを感じたのは古くより共に戦っていた砲丸魔王だった。
砲丸魔王は妖気を籠めた砲丸を武神に向け投げつけると、今度は大柄の武神が盾となり砲丸の壁となった。
完全に直撃した!!
が、砲丸は大柄の武神の身体に当たり、そのまま地面に落下した。まさか何も効いてないというのか?武神は砲丸が当たった身体を掻いて何事もなかったかのように立っている。
砲丸魔王「この!化け物がぁああ!亜騎馬の仇だぁああ!」
砲丸魔王は新たな砲丸を手に、妖気と覇気を混ぜこみ渾身の力で投げ付ける!
『豪速砲丸!』
しかし砲丸魔王の砲丸は片手で止められた…
そして、投げ返されたのだ。
刀剣魔王「あっ…」
刀剣魔王は隣にいた砲丸魔王を見ると、その身体に風穴が空いていた。
刀剣魔王「砲丸魔…?」
砲丸魔王は立ったまま命が尽きていた。
刀剣魔王「クッ!二人とも…」
砲丸魔王も亜騎馬魔王も刀剣魔王が目を付け、美猴王に合わせた。二人には刀剣兄貴が遠投から剣術まで教え込み、下級魔王から上級魔王にまで育て上げたのだ。
それを!!
刀剣魔王は怒りがこみ上がる。その間、仲間達は最初の武神の剣に一人一人命を絶たれていた。大柄の武神は動かずにもう一人の武神のみが戦っていた。
その動きは舞のように湖の上を跳ねるかのように静かに仲間達を斬り倒す。誰も捕らえる事は勿論、その動きに目を奪われ、気付いた時には命を絶たれていた。
数千の仲間達が一人の武神の前に虐殺?
刀剣魔王「これ以上はさせん!これでは…」
その時、刀剣魔王は鳥肌が立った。
そして目の前の状況が余りにも似ていたのだ。
一族を斬殺した状況…
それだけじゃない!
目の前にいる若い方の少年神が、仇の斬殺者に?
刀剣魔王の一族を斬殺した者は優れた剣術を使い、剣の手練れだった刀剣一族をたった一人の幼い少年によって全滅させられたのだ。
目の前にいる武神は確かにまだ若い武神であった。
だが面影が確かに似ている?あの時の仇の幼い少年に、
刀剣魔王「お前カァアア!」
刀剣魔王が駆け出した!
が、同時に寒気が走る。
刀剣魔王の間合いに、その少年神が入ったのだ!
刀剣魔王「クッ!」
刀剣魔王は手にした剣を武神の少年に向かって抜刀する。
刀剣魔王「!!」
が、刀剣魔王の剣が地面に落下した。しかも刀剣魔王の手首ごと?
刀剣魔王「こっ……」
刀剣魔王の視界がゆっくりと降りていく?
刀剣魔王の胴から首が地面に落下し、そして視界が闇の中に消えた。
少年「ん?」
すると刀剣魔王の身体は光輝き、少年の目の前で魔剣となって突き刺さっていた。武神の少年は魔剣を手に取ると、自らの宝貝へと閉まう。
少年の武神に、大柄の武神が近付く。
「他は一掃しました。その妖怪は魔剣の一族だったようですね?まさか生き残りがいたなんて」
少年「そっか…」
少年は覚えてはいなかった。
過去に自らが討伐した魔物なんて記憶に残していなかったのだ。
二人の武神は一体?
それは別の地に討伐に出ていた巨霊神と、
少年でありながら元帥の称号を持つ
中壇元帥ナタクであった!
天界大戦に闘神・ナタクが今より参戦したのだ。
ナタクは巨霊神を率いて近くにいる他の妖気を感知していた。
そこには今、
この状況を知らぬ蚩尤達がいた。
次回予告
刀剣魔王達を始末したナタクと巨霊神が次に向かったのは?
そこには何も知らない蚩尤達がいた。




