ナタク英雄譚と巨霊神の忠義?
二郎神君の英雄譚
そして、今話の英雄譚は?
ナタク…
齢、誕生間もなく…
その力を覚醒させた。
まだ喋る事も自由に動く事も出来ない赤子。
既に天界と竜神界との戦争は始まっていた。
ナタクは天界でも最高権力者である託塔李天王の三男。その赤子を拉致し人質にしようと竜神界の元東海竜王・剛竜王が九体の竜神を率いて侵入したのだ。
剛竜王「赤子を拉致するなど容易い仕事だ!さしもの託塔李天王も我が子を捕らわれたら手出しも出来まい?」
竜神族の侵入は直ぐに託塔李天王の耳に入った。
そして軍隊を率いて急ぎ我が子のいる城へと向かったのだ。
だが、城には既に竜神族の侵入を許していた。
既に城を守っていた門番は全て倒され、城内はもぬけの殻であった。
残されたのは?
眠っている赤子…
既に守る者は誰一人いなかった。このまま赤子は竜族の手に拉致られてしまうのだろうか?
竜族の一人が眠っている赤子に手を伸ばす。
その時、
見開いたのだ!!
眠っていた赤子が!それは本能的な危機的感知なのだろうか?しかし確かに見開いたのだ!だが、赤子に何が出来る?竜族の男は構わずに赤子に手を伸ばす…
が、その場に赤子の姿が消えていたのだ!?
竜神「!!」
仲間達が叫ぶ。赤子は上だと?だが、見上げた時に竜族の男はその場に潰されたのだ??
それは赤子から発する強烈な神気の重圧だった。
他の竜族の兵士達は赤子に対して、敵意を示す。この赤子は拉致出来る者ではない!後々竜族にとって必ず災い招く大きな敵となると!
竜神族は武器を手に赤子に斬りかかる。竜神族は一人一人が並々ならぬ力を持った戦闘神族!赤子に何が出来るものか?
だが、赤子は更なる神圧で竜神族達をその場に身動き出来なくした。
これが赤子の力なのか?
竜神族は竜気を籠めた槍を投げ付けるが、赤子を中心に防御壁が発生し、飛んできた槍はへし折れ落下していく。竜神族は竜気を高めると剣が激しく光る。
防御壁事、赤子を真っ二つにするつもりなのだ。だが、今度は赤子を中心に雷が降りあれ、竜神達を貫いていく。仲間達の断末魔の中で東海竜王・剛竜王のみは雷を覇気で弾き返す。
剛竜王「まさか屈強な竜神族の兵が赤子如きに…」
剛竜王は赤子を既に赤子と見ていなかった。あれは赤子の姿をした化け物だと!
剛竜王「時間もない事だ…俺も本気でいかせてもらおう!」
『竜王変化唯我独尊!』
剛竜王の姿は強固な鱗を持つ大型の竜へと変化したのだ。
口を開け、赤子に向かって襲い掛かった時…
入り口の扉が同時に開き、託塔李天王が武神兵を引き連れ入って来たのだ。
だが、そこで託塔李天王が目の当たりにしたのは!?
赤子の身で、竜と化した剛竜王の首を切り落とした後だった。
一体、何が起きたと言うのか?
その時、託塔李天王は赤子に駆け付けると、その理由を知る事になった。
その日を境に託塔李天王はナタクを避ける事になる。
幼少期の自我を持った後のナタクは、時が経つ事に力の暴走に苦しめられた。
驚異的な怪力と、神気の暴走、誰も止められる者はいなかった。
そんなナタクの暴走を止めるために特別な側近が託塔李天王より送り込まれた。
その者は天界一の怪力を誇る武神であった。
名を巨霊神
ナタクは魔物討伐中、危機になる度に有り余る力を自我を忘れて暴走させた。そんな暴れまくるナタクを巨霊神は抱きしめ止めたのだ。どれだけ身体を傷付けられようと巨霊神はナタクを離さなかった。自我を取り戻したナタクは気を失いざま涙を流して言った。
「後…どれだけ殺せば…お父様は…僕を…認めてくれるの…」
巨霊神「!!」
それ以降、ナタクの側近には巨霊神が付いた。
それから再び、時は流れる。
巨霊神「ナタク様?私が行きましょうか?」
ナタク「無用だ!」
成長したナタクと巨霊神の前には見上げる程の山のような魔物が二人を見下ろし、今にも襲い掛かろうとしていた。
ナタク「ナタク参る!」
その斬撃は雷撃!
その一閃は閃光!
後にナタクは天界より元帥の称号を与えられる。
中壇元帥ナタク!
これは天界の英雄神の物語。
話を返そう。
巨霊神
巨霊神もまた旧神の一人であったが、新たにこの世界に現れた天と呼ばれる神々に追いやられたのだ。
その後、武神達により討伐対象となった。数千の討伐隊に追われた巨霊神は全て返り討ちにし、誰も止められはしなかった。
幾重にも結界の縄で身動きを止められるも、その力は結界の縄をも力付くで引き千切る。怪力無双の巨霊神が暴れると大地は揺れ、地割れが起きた。
だが、長い逃亡の末に疲れきった巨霊神は一万の武神の軍によって捕らわれ、厳重な結界の中に封じ込められたのだ。
そこに現れたのが託塔李天王であった。
託塔李天王は巨霊神に条件付きで解放すると申し出たのだ。
巨霊神「どういうつもりだ?何か企みがあるのか?」
託塔李天王「企みなどはない。ただお前に一つ仕事を任せたいだけだ」
巨霊神「仕事だと?」
託塔李天王「そうだ」
巨霊神「条件とは何だ?魔物の討伐か?それも俺を使うのだから厄介な魔物なのだろうな?」
託塔李天王「討伐ではない。ただ俺の子供の側近として仕えて貰いたいだけだ」
巨霊神「何を馬鹿な?俺に子守りをしろと?しかもお前の赤子?」
託塔李天王「そうだ。但し魔物討伐よりも骨が折れるだろうし、命懸けになるとは思うがな?」
巨霊神「?」
巨霊神は自由を奪われ閉じ込められた現状より、子守りのがマシだと考えたのだ。それに解放された後に再び逃亡すれば良い話であった。だが…
後に巨霊神は託塔李天王に言われた少年を前にして無意識に身体が震えた…
あの少年…
ナタクに心奮えたのだ!
巨霊神「あの少年は」
「後…どれだけ殺せば…お父様は…僕を…認めてくれるの…」
巨霊神は少年が口にした言葉に胸を打たれた。父に認められるために幼い身で戦う少年に対し…
そして託塔李天王が自分の前に現れた時の言葉に怒りを感じた。
巨霊神「俺に子守りとは天界の王も親バカなのだな?」
巨霊神の問いに託塔李天王は言った。
「ふっ…」
『随時、奴の行動を俺に伝えよ?そして俺が指示した場合は、お前の手で始末せよ!』
巨霊神「!!」
巨霊神は父子の亀裂に胸を痛めた。もし託塔李天王より命じられた時、己はナタクを手にかけられるのだろうか?
だが、今は考えまい…
それがナタクの側近、巨霊神であった。
成長したナタクは口数の少ない端麗な少年となった。だが、その力量は天界でも指折り、あの二郎神君と同じく英雄神と称えられるようにまでなった。
そして、
地上界より妖怪の軍を率いて天界を侵略に来た邪悪の根元、美猴王の討伐にナタクと巨霊神が参戦するのであった。
次回予告
『唯我蓮華~破壊神と呼ばれた少年~』
その序章となる物語。




