二郎神君伝説・梅山六兄弟!?
美猴王率いる妖怪軍団に対抗するのは天界が誇る英雄神!
その一神、二郎神君の物語。
美猴王率いる水廉洞闘賊団の討伐を指揮を取る事になったのは、顕聖二郎神君。
その英雄談がある。
天界最下層に凶悪な盗賊が領地を占領して、幾度と天界の城と争いを起こしていると言うのだ。盗賊と言えど、それは武神崩れの義兄弟であった。だが、その実力は全員将軍級であり数々の武神達が討伐に出たが全て返り討ちにあった。
その者達は、康・張・姚・李・郭申・直健の梅山六兄弟と呼ばれた。
そんなおり、既に名高い二郎神君が梅山六兄弟討伐に命じられたのだ。
二郎神君「ふぅ…まさか楊善が捕らわれるなんてな…一体、何があったのだ?」
先に楊善が梅山六兄弟討伐の任務にあたり、既に出向していたのだ。
だが、連絡が途絶えた?
捕らえられたのか?
それとも…
二郎神君「楊善に限って万が一なんて事はないと思うが…」
だが、連絡がない事はやはり心配になった。
二郎神君は数名の武神を配下に引き連れ、下級層にある梅山へと出兵した。
先ずは情報収集に、連れて来た数名の部下に調べさせる。そして二郎神君は残った部下と現在攻められている城へと向かった。
聞くと梅山六兄弟以外の他の盗賊はたいしたことがないらしい。
だが、梅山六兄弟は本来最上層の将軍だったらしく、下級層の将軍達では相手にならないと言うのだ。
二郎神君「成る程…」
だが、二郎神君には腑に落ちない疑問があった。その梅山六兄弟は天界最上層の将軍になれる器だと言うのに何故このような事を?
将軍になれば栄誉も与えられ、相当の身分を得られるはず?それなのに盗賊に成り下がるなんて?
二郎神君「何か要求とかはなかったのか?」
すると城を守護している冊宝将軍が答える。
冊宝将軍「要求も何も奴等は近辺の村から平民達、女子供関係なく拉致して回っているのです!」
二郎神君「拉致して何をしているのだ?」
聞くに、この最下層に少し前から化け物が現れると噂になっていると言う。
二郎神君「化け物?そんな情報は聞いていないが?」
冊宝将軍「私も見てはいませんが、その化け物が天界人を喰らっていると報告があったのです。恐らく盗賊の連中の目的は…」
二郎神君「民を浚って化け物の餌にしていると?」
冊宝将軍は頷いた。
二郎神君は配下達に指示を与える。
それは配下達に攻めさせている間に、単身潜入する陽動作戦だった。
二郎神君は大木に同化するように姿を消す。そして仲間達が戦っている隙に梅山六兄弟が根城にしている洞窟を目指した。
二郎神君は変化を得意としていた。イモリや蜂、大小関係なく様々な生き物に変化しながら洞窟の入口を見付けたのだ。
二郎神君「どうやら、あの中のようだな?」
二郎神君は洞窟の入口を警戒しながら覗く。
「!!」
瞬間、背後に気配を感じて、二郎神君は蝶の姿から元の姿へと戻る。そして背後に迫った敵に対して術で煙を出して煙幕の中を移動する。
二郎神君「やれやれ…どうやら優秀な探知使いがいるようだな?」
二郎神君の予想通り洞窟の上に一人、洞窟全域の幅広い範囲に結界を張り、二郎神君の侵入に気付いた者がいたのだ。
張「右、奥、前方を真っ直ぐ!」
梅山六兄弟の一人である張は二郎神君の逃げる先を仲間に念派で伝える。
張「僕からは逃げら…」
二郎神君「逃げないよ?」
張は背後に振り返ると二郎神君が立っていたのだ?
張「そんな馬鹿な?奴は確かに?」
すると目の前の二郎神君は言った。
二郎神君「お前は間違ってはいない?俺はお前の隙を作っただけさ」
張「えっ?」
目の前の二郎神君の姿が消える。それは分身だった。それに気付いた時、今度は本物の二郎神君の接近を許したのだ。
当て身をされ倒れる張を助けに入ったのは梅山六兄弟の康と郭申だった。二人は大柄の体格で大刀を振り回して来た。
二郎神君「おっと?挨拶はなしかい?」
二郎神君は腰から抜いた剣で二人の大刀を捌く。
康「何て腕だ!」
郭申「だが、我らの太刀の前では長くは持つまい!」
その言葉は油断からではなかった。確かに二人の刀捌きは天界でも達人級であった。
にも関わらず…
二人は二郎神君の剣術の前に刀を弾かれ、その場に倒れたのだった。
二郎神君「残るは三人か?後は洞窟の中のようだな?」
二郎神君は足早に洞窟に潜入すると、そこで道を塞がれたのだ?それは防御結界であった。結界が中へ入れなくしてあるのだ。
二郎神君「これは強力だな?余程才のある者の造った結界だ」
にも関わらず二郎神君は結界に腕を押し当てると、結界解除を始める。すると目の前の結界が歪み始め、弾けて消えたのだ。
二郎神君「思ったより手がかかったな…お前が造ったのか?」
二郎神君の前に武神とは思えぬ者がいた。それは梅山六兄弟の一人、姚であった。姚は慌てて洞窟の中へと逃げて行く。すると奥から気功弾が飛んで来たのだ。二郎神君は気功弾を片腕で弾くと、瞬時に間合いに入り、二郎神君の伸ばした腕を掴んで投げられたのだ。
二郎神君「クッ!体術か?」
二郎神君は壁に叩き付けられるが、直ぐに眼前に拳が迫る。二郎神君は紙一重で躱すと、掌打で相手を攻撃する。相手は蹴りで返すが今度は二郎神君が受け止め壁に叩き付けたのだ。
二郎神君「良い腕だ!だが、俺はお前の更に上にいるぞ?」
相手は梅山六兄弟の李であった。
李「確かに腕が立つようだな?だが、負けるわけにはいかない!」
李は二郎神君に右蹴りから回転し左手刀、右拳突きを繰り出すが二郎神君は両手で挟み、李の軸を崩して倒したのだ。
李「うぐぐ!」
そこに二郎神君は突き上げる掌打を李の下顎に命中させたのだ。
意識を失った李を残して二郎神君は先に進む。
二郎神君「残るは一人だな?それにしても楊善は何処だ?確かに腕がたつ者達だが…楊善が遅れをとるようには思えないが?」
そして二郎神君が洞窟の奥に進んだ先には?
二郎神君「これは!?」
二郎神君は見た。
洞窟の奥には村があったのだ?しかも拉致されていると思われる民が全員無事に住んでいたのだ?
二郎神君「これはどういう?」
「でしょ?驚きますよね?」
背後に突然聞き慣れた声がして、二郎神君は振り向きもせずに答える。
二郎神君「で?お前はそれを知って同行しているわけか?楊善」
楊善「まぁね?」
それは討伐から戻らなかった楊善であった。
楊善「全てを話すよ。そのために彼らを無傷に残して来たんだよね?」
見ると、洞窟の中に倒した梅山六兄弟の四人が慌てて入って来たのだ。
楊善「皆!安心して欲しい。彼は味方だよ!」
楊善の言葉に顔を見合せ、彼等は手にした武器を鞘に入れた。
楊善に連れて来られた場所は洞窟の中にある梅山六兄弟の寝床だった。
そこには梅山六兄弟最後の一人である直健が怪我を負い床に伏していた。
直健「貴方は?」
楊善「僕の友達だよ。信じて大丈夫さ?」
直健「そうですか…楊善殿が言うのであれば信じられます」
そこで二郎神君は全ての真実を知る事になる。
全ての元凶は…
天界に蔓延る闇であった。
下級層の神殿の地下には魔物がいて、神殿を守る城主が魔物を飼っているのだ。
しかも、その餌が…
天界の民であったのだ!
城主は上層界には知られずに、この所業を何年も続けていた。それを偶然知った直健は証拠を突き止めたのだが、逆に襲われ怪我を負い、仲間共々反逆者として追われる身となったのだ。
直健は仲間達と餌にされるために拉致される神民を救い出し、この洞窟へと避難させていた。それを期に直健と同じ志を持つ仲間達と義兄弟の契りを結び梅山六兄弟となったのだ。
二郎神君「成る程な?つまり本当の敵は…」
楊善「同行します」
二人を見ていた梅山六兄弟は互いに頷き合うと、
直健「私達も同行お願い致します。二郎神君殿!」
二郎神君「身体は大丈夫か?」
直健「この結末に立ち合えなければ、私は一生悔やまされます」
二郎神君「なら、俺と共に来い!」
二郎神君が手を伸ばすと直健はその手を握る。
その後、二郎神君達は元凶である魔物と、その主を討伐した。
そして、天界にその全てを報告したのだ。
更に無実釈放された梅山六兄弟を自らの軍に招き入れた。
直健「我ら梅山六兄弟!これより二郎神君殿の剣となり盾となりましょう。永遠の誓いを!」
すると二郎神君は、
二郎神君「俺はお前達のような己を顧みず義を重んじる武神を尊敬している」
直健「勿体無いお言葉!」
二郎神君「あんまりかしこまるなよ?そうだな?なら、俺も今日から義兄弟にしてくれよ?」
直健「!!」
この後、二郎神君率いる梅山六兄弟は様々な武勲を増やしていった。
その全てが義を重んじる戦いばかりであった。
次回予告
ナタク・・・
その過去!!




