いざ!水廉洞闘賊団、天界へ殴り込みだー!!
突如、天界から現れた閻魔天の出現に、
美猴王達は自らの力不足を実感する。
ついに、その日がやって来た…
地上界より、我らが水廉洞闘賊団が天界へと殴り込む約束の日だ。
塔の中心に俺様が立ち、その後ろには牛角魔王、蛟魔王、獅駝王、鵬魔王、六耳彌王が並び立つ。
この日のために俺様達は死に物狂いで修行をし直したのだ。
戦場で俺様の代わりに身を呈して骨覇魅神を封じてくれた砂塵魔王。俺様はその墓標となった結界の前で誓った後、各地の戦場も回った。
そして牛角魔王と共に修行を始めたのだ。
他には鵬魔王は単独で修行していたみたいだが、蛟魔王は獅駝王と六耳彌王を誘い修行したようだ。
蛟魔王「六耳彌王!お前の力はまだまだ伸びる!期限までに私が徹底的に仕込むからな?」
六耳彌王「姉御!お願いしますッチ!」
六耳彌王は雷を帯びた状態で、同じく雷を帯びた獅駝王を相手に実践稽古した。
そして、一年という短い期間で、皆の基礎値が跳ね上がった。
俺様達は横一列になって並ぶと、塔の前に揃った連中を見下ろす。
総勢…十五万!
天界を相手にするのだから半数は減ると予想していたが、逆に増えていて正直驚かされた。
だが…
こいつ達を全員連れて行く訳にはいかねぇ!
俺様達は腕を後ろに組むと、その前に一列に並ばせる。
美猴王「今より俺様達を殴れ!決して手を抜くなよ?これは選別だ!俺様達が直々認めたら、俺様達と共に天界へ殴り込む権利を与える!」
『これから先の戦いは生き抜くだけの力が無ければならないのだ!』
そして並んだ者達は拳を握り、順に俺様達を殴る。
美猴王「却下!不合格だ!」
この選抜に情けは無用。情けは戦場では無駄死にになるから…
すると今度は怪力魔王が俺様の前に出る。
怪力魔王「次は俺だな?」
振り上げる拳を見た俺様は、
美猴王「ちょちょちょ?お前は特待生!選抜は無し無し!お前に殴られたら俺様死んじゃうだろが!?」
怪力魔王「そうか?」
当然、次の剛力魔王もクリアした。更に、二人の兄である魔雲天が構える。
美猴王「!!」
闘気が異常だ?
コイツ、強い!?
美猴王「お前、合格!」
魔雲天「おっ?」
魔雲天、確か以前は万聖軍の豪快魔王って名乗っていたが、実は剛力魔王と怪力魔王と同じくゴリラ一族であり、実の兄らしい。
しかも短期間で剛力魔王と同格レベルまで実力を上げて来たのか?
マジに心強いのが仲間になったぜ!
さて、他には?
次々と選別が行われていく。元万聖軍の連中は強者ばかりだ…この反乱のために万聖竜王がスカウトして来た荒くれ者達。
確実に万聖軍の殆どが合格していく。
刀剣魔王「我、参る!」
刀剣魔王もまた牛角魔王に合格を得たようだ?
玉面魔王「妾に牛角様は殴れないですわ~」
牛角魔王「俺が受け止めてやる!安心してかかって来い!」
玉面魔王「受け…止めて…あぁ!解りましたわ~」
玉面魔王の鋭い拳が牛角魔王の顔面を捉えた。一瞬、ふらつくが体勢を立て直し持ちこたえた。
牛角魔王「良い拳だったぞ?熱く重い拳だった!」
そりゃ~熱く、重い…だろうな?
蚩尤「兄者…」
蚩尤もまた、牛角魔王の前に出る。
牛角魔王「蚩尤…俺に付いて来るか?」
蚩尤「と…当然だぁー!」
蚩尤の拳を受けた牛角魔王は言った。
牛角魔王「合格だ!」
そんな調子で、殴る方も殴られる方も限界を出しきってボロボロになりながらも選別をした。
そして、選抜に残りし天界進行軍が決まった。
数は、七万!!
およそ半分以下か?
だが、上等だ!!
俺様達は早速、天界へと進行……出来ませんでした。
俺様は勿論、牛角も蛟魔王、鵬魔王、六耳彌王も動けるような状態でなくボロボロだったので…
当然か?
三日後に、再び集まる事になった。
因みに残った連中には地上界を守らせるように命じた。俺様達がいない間に地上界を奪われたらどうしようもないからな?
そして中央の塔の魔法陣のある転送場所に入る。
美猴王「で?どうやって天界へ行くんだ?転送って術者がいなきゃ駄目じゃないのか?」
術者には三大仙達が任命された。
この転送術には五行の力を地上から注がないと駄目らしいのだ。
獅駝王「お前ら!俺俺楽しんで来るから任せたぞ?」
鹿大仙「お任せあれ!」
羊大仙「我ら、天界へ行かれないのは残念ですが、必ず皆様を送り届けます」
虎大仙「獅駝王様、御武運を!」
そして、
混ちゃん「皆さん…」
混ちゃんは、俺様のパシりだ。お茶の用意や雑用全般をやらせている。
が、やはり実力が残念だった。
今の今まで生き残れたのが不思議なくらいに…
牛角魔王「まぁ、間に合わなかったな?」
美猴王「仕方ねぇよ」
俺様は牛角魔王に混ちゃんに棍棒術を教えてやって欲しいと頼んでいたのだ。せめて天界へは間に合わなかったとしても、これから先に生き残れるようにな?
意外と真面目な奴で、ヒョロヒョロの身体で毎日毎日欠かさずに牛角魔王の教え通り、棍棒を振っていたのを何度も見た。
さて、進行軍は俺様と義兄弟の五人。そして玉面魔王、剛力魔王、蚩尤、万聖軍から三名を選抜し将軍に任命して一軍を任せた。
起動装置にまで来た場所で蛟魔王が壁にある穴を指差して言った。
蛟魔王「美猴王?魔王玉は持っているか?」
美猴王「魔王玉?あぁ、持って来たぜ?」
俺様は前以て用意するように言われていた魔王玉を蛟魔王に渡すと、蛟魔王は壁の穴に魔王玉を一つ一つ埋め込んでいく。穴は魔王の数と同じ数だけあった。埋め込まれた魔王玉は光輝く。残りは俺様達の魔王玉のみとなった。
玉面魔王と刀剣魔王が自分の魔王玉を嵌め込み、そして六耳彌王、鵬魔王、獅駝王が嵌め込む。
美猴王「それにしても魔王玉が天界への転送の鍵だったなんてな?」
蛟魔王「二、三人くらいなら必要ないが、これだけの大軍を一度に転送するために必要なのさ?」
牛角魔王「つまり天界へ反旗を翻し大軍を送らせないために鍵を魔王達に分けたのだな?」
蛟魔王「しかも魔王玉を奪われたら意識を奪われ自由を奪われ支配されると誤った情報を広めてな?」
美猴王「えっ?」
蛟魔王「魔王玉に魔王を支配するような効果がないって事だよ?」
美猴王「マジか?」
蛟魔王「やはり気付いてなかったようだな?今までは疑心暗鬼になって魔王玉を隠したり、奪われないようにしていただろうし、ましては奪い合い試した魔王はいなかったからな?」
牛角魔王「知らなかった」
美猴王「つまり騙されていた訳だ?」
蛟魔王「そういう事だ!あの眼力魔王だって魔王玉でなく暗示を使っていただろ?」
美猴王「確かに!!」
蛟魔王が魔王玉を嵌め込み、最後に俺様が壁に近付く。
そして今一度魔王玉を見る。
この魔王玉は独角鬼王から手に入れたんだったな?
独角鬼王…
俺様を庇い、俺様に聖天大聖の称号と夢を託し、眼力魔王の罠にかかり命を落とした。
美猴王「お前との約束は果たすぜ?」
そして最後の自分の魔王玉を嵌め込んだのだ。
そして壁全体が光輝き、塔を中心に光の道が天界へ向けて伸びて行った!
いよいよだな?
美猴王『野郎共!これより天界へ乗り込むぞー!』
俺様の掛け声に仲間達の雄叫び、そして光の道へと飛び込んだのだ!
光は俺様達水廉洞闘賊団を天界へ飛ばして行く…
進軍する仲間達が全員光の中へと消えた時、上空より何かが光った?
えっ?
それは思いがけない天界からの攻撃だったのだ!!
それは高熱の光線!
光線は地上に残った仲間達に降り注ぎ消滅させていく。
その攻撃に気付いた俺様達は助けに、
蛟魔王「駄目だ!そこから出たら二度と入れないぞ!」
美猴王「でも、仲間達が!」
その時、絶体絶命の地上軍に向かって、光の道から何者かが抜け出し飛び出したのだ!
剛力魔王「兄者!」
それは剛力魔王と怪力魔王の兄である魔吽天だった。
魔吽天「剛力!怪力!俺は天界へは行かぬ。お前達は必ず生きて戻って来い!」
怪力魔王「解った!」
すると落下しながら魔吽天は唱えたのだ!
『獣神変化唯我独尊!』
魔吽天の身体に漆黒のゴリラの鎧を纏い、着地と同時に上空から降ってくる天界からの光弾から仲間達を守るために防御壁を張る!
だが、天界からの攻撃は魔吽天の防御壁を貫いた。魔吽天の勇姿に生き残った仲間達も腕を伸ばして防御壁を作り出す。
魔吽天「地上は俺に任せろー!!」
その声は俺様達にまで聞こえた。
美猴王「頼むぜ?必ず戻って来て、俺様の武勇伝を聞かせてやるからな!」
そして天界進行軍が完全に見えなくなった。
天界からの攻撃もおさまり地上には傷付き生き残った仲間達が上空を見上げていた。生き残ったのは一割程度といって良いだろう…
それでも魔吽天の活躍がなかったら、全滅していたに違いない。
妖怪「魔吽天様?美猴王様方は無事に行かれたようです」
魔吽天「そうか…なら、残った者は怪我の治癒、そして天界から戻って来る仲間達を迎えるために立て直すのだ!」
妖怪「はい!」
魔吽天は残った仲間達に指示をした後、自室のテントに入って行く。そこに混ちゃんが茶を持って入る。
混ちゃん「魔吽天様、お疲れでしょう?お茶を用意致しま……」
そこで混ちゃんは御茶碗を落下させて割ってしまった。
そして涙ぐみながら膝をついたのだ。
混ちゃん「お…お疲れ…様…でした…貴方に代わり、必ず私達が美猴王様達のお帰りをお待ち…しますから」
そこには血だらけの魔吽天が椅子に座った状態で生き絶えていた。
次回予告
天界へと突入した水廉洞闘賊団!
新たな戦いが始まる!
美猴王伝説・天上編 開幕!




