開かれる地獄門?地獄の王、登場!!
ついに地上権制覇をした美猴王と水廉洞闘賊団の仲間達!
激戦続きで疲労した身体を癒すために再び重症を負いながらも、
まだ戦いは終わってはいなかった。
俺様は美猴王!
俺様は今、修行をしていた。何故に修行?
確かに托塔李天王との戦いで己の力不足を痛いほど実感した。
が、まだ甘い考えもあった。
例の温泉の件で?完全回復した俺様達は武器を揃え次の戦争の準備をしていた。地上を制覇した事で、この中央に戦争不参加だった者や腕自慢の妖怪達が集まって来た。
水廉洞闘賊団に入隊するためである。
およそ十万の軍隊!
しかし、
この戦争で地上界の妖怪の敵味方合わせても八割以上が戦死した。
それほど大きな戦争だったのだ。
そして集結した妖怪軍を率いて、俺様達は中央の塔に集まった。何故なら、この中央の塔より天界へと転送出来るのだから!
蛟魔王「理論上は私の術札を使った空間転移と同じだよ?だが、この塔の転送装置は究極だよ!何せ地上界と天上界は飛行雲で飛んだら数百年はかかるからね?因みに私の空間転移術ではそんな遠くにまでは飛べないよ?」
牛角魔王「だから俺達に占領された後も、天界の連中は塔を破壊する事はしないのだな?」
蛟魔王「その通りだよ」
美猴王「ちんぷんかんぷんだ…」
そして俺様達は塔に集結すると、蛟魔王に操作を任せて天界に進軍を試み…
る、はずだった!
『!!』
その場にいる力のある者達は同時に塔の遥か上方を見上げた。だが、同時に鳥肌がたって金縛りにかかった状態になった。
牛角魔王「なぁ…何だ?この桁違いの力は!?」
美猴王「まさか托塔李天王の奴が再び現れたのか?」
蛟魔王「違う!托塔李天王とは違う…だが、同等?それ以上の神圧だ!」
塔の上空より感じた力は凄まじい勢いで地上に向かって急降下して来たのだ!
が、寸前で軌道転換して別方向へと飛んで行く??
何がなんだか解らないが追い掛けるしかない!
俺様達は金斗雲を呼ぶと、落下して来た者を追った。
俺様の後には牛角魔王と蛟魔王、獅駝王、鵬魔王と六耳彌王、それに蚩尤と玉面魔王が付いて来ている。
他の仲間は蛟魔王の指示で、また塔から新たに降りて来ないかを見張らせた。
美猴王「マジに何者だ?かなり離されてはいるが、寒気がしやがる…」
蛟魔王「奴が何者かは解らないが、向かっている場所に心当たりがある…」
六耳彌王「…闇影魔王の洞窟ッチね?」
それは蛟魔王と六耳彌王が闇影魔王と戦った洞窟の事であった。
場所が解っているなら!
蛟魔王は俺様達に術札を配ると、印を結び唱える。
『空間転移!』
瞬間、俺様達は蛟魔王の術で洞窟のあった場所へと転移し先回りしたのだ。
俺様達は到着と同時に向かって来る来訪者に警戒する。
でも、解る…
そいつは強い!!
そして、ソイツは俺様達の前に現れたのだ!
何者??
ソイツは到着すると同時に無言でこちらに向かって歩いて来る。
ソイツは漆黒の鎧を纏った天界の武神であった。
俺様達は硬直しているかのように身動きが出来なかった。
ただ冷たい汗だけが流れる。
その時、鵬魔王が動いたのだ!
鵬魔王「お前、何者だぁー!!」
それは己の恐怖を否定する叫びだった!両掌に凝縮させた炎を来訪者に向かって放たれたのだ!
鵬魔王「まさか!?」
鵬魔王の炎は来訪者の鎧から噴き出した漆黒の炎によって喰われて消えたのだ。
だが、同時に鵬魔王は気付いたのである。
敵の?この漆黒の鎧の武神の正体に!
鵬魔王「今のは間違いなく地獄の黒炎だ…だが、天界の神が地獄炎を使えるなんてのは有り得ない…だけど、唯一人、噂には聞いた事があるよ!」
美猴王「知っている奴か?」
鵬魔王「地獄の炎は禁忌の炎!僕ほどの天才でも地獄の炎を使うには大きな代償が付く…だけど他に地獄の炎を…ましてや天界で使える奴は一人しかいないはず!」
それは托塔李天王と同じく天の称号を持ち、神界だけでなく仏界、更には地獄にまで行き来する最高神!
『地獄の王・閻魔天!』
その力、十二天の最高神である雷帝インドラ、破壊神シヴァとも最強を三分する実力者だと言われていた。
美猴王「その閻魔天が何をしに地上界に?」
六耳彌王「まさか托塔李天王に代わって俺ッチ達を討伐に来たをじゃ?」
牛角魔王「馬鹿者!例えそうだとしても俺達が退くわけにはいかん!」
蚩尤「だけど、足が震えて動かねぇよ…化け物だ…」
玉面魔王「妾は牛角様を命を代えてでも守りますわ」
だが、玉面魔王の身体も震えていた。
すると閻魔天の前を遮る者がいた。
蛟魔王だ!
蛟魔王「閻魔天!お前、この洞窟に何をしに来た?話によっては止めさせて貰う!」
蛟魔王の言葉に閻魔天は立ち止まると、平然と答えたのだ。
閻魔天「ん?何だ?お前ら?俺はこの先の洞窟に用事があるんだ。悪いが退いてはくれないか?」
つまり、俺様達を討伐に来た訳ではないんだな?
不覚にも安堵してしまった。完全に尻込みしてしまったのだ。
だが、閻魔天の目的に俺様達は驚愕する。
閻魔天「俺はこの先にある地獄門を開きに来ただけだ!」
蛟魔王「何だと!?」
蛟魔王の嫌な予感が当たってしまった。この洞窟の中には地獄門がある。そこには今、凍結魔人が命を使って凍てつく結界で封じ込めてあるのだ。
だが、その結界が再び開かれると、地上界は地獄の障気に犯され生きとし生ける全ての生者が滅びてしまうのだ。つまり?
地獄門を開いて反逆する俺様共々、地上界を一掃するつもりなのか??
それを聞いた俺様達は戦う決意を決めた!
閻魔天「何だ?お前達?俺の道を邪魔するつもりだったのか?」
俺様達の殺気を感じた閻魔天は頭を掻きながら、
閻魔天「俺の道を塞ぐ者は何者であろうと殴る!」
へっ?
その瞬間、閻魔天の姿が消えて、一人一人倒れる音がした?
牛角魔王、六耳彌王、鵬魔王に玉面魔王、更に頑丈な獅駝王ですら一撃の拳で意識を飛ばされ倒れていく。
そして俺様の間合いに入った瞬間、
えっ?
俺様は何か不思議な感覚になったのだ?
何だ?この感覚?
まるで、懐かしいような?
それでいて…
「あっ…」
俺様のミゾに攻撃を食らい一撃で意識を飛ばされたのだ。
閻魔天「………」
閻魔天もまた倒れる俺様を見下ろし、俺様に似た感覚を覚えたのだ。
閻魔天「不思議な奴だ…」
だが、唯一残った蛟魔王が洞窟に近付かせないように道を塞ぐが、視界から消えた閻魔天が背後に出現して首筋に打撃を当てられ倒れた。
閻魔天「俺は女には手を出すのは心ひけるんだよな?まぁ、違う意味で手を出すのは嫌いじゃないんだがよ?何てな!」
閻魔天は一人、洞窟の中へと入って行く。
洞窟の中は氷で閉ざされていた。
閻魔天「ここだな?微かに地獄の匂いがする。上手く結界で閉ざしてはいるが、まぁ~以て二百年くらいが限度だな?」
すると閻魔天は印を結び真言を唱え始める。
『ナウマク・サマンダ・ボダナン・エンマヤ・ソワカ!』
閻魔天の身体から炎が噴き出して、周りの氷を溶かし始める。そして地下の地獄へと繋がる結界も蒸発し始めたのだ。
そして、ついに…
地獄門の扉が完全に開かれたのだ!同時に障気が地獄の底から地上に向かって押し上がって来たのだ!
閻魔天「さてと仕事は終わったな?」
が、閻魔天は再び印を結び直す。
閻魔天「な~んて訳にはいかないよな?やっぱ?」
そして先程とは別の真言を唱え始める。
『オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ!』
すると、今度は白い浄化の炎が閻魔天の身体を中心に地下の地獄門へと渦を巻いて放たれたのだ!浄化の炎は地獄の障気を消し去り、しかも地獄の門が歪み、門を閉ざしたのだ!
見ると閻魔天の姿は白い袈裟を纏った仏神の姿へと変貌している。
すると閻魔天は何者かと対話する?
閻魔天「そうか?お前達が地獄門を抑えていてくれたのだな?」
閻魔天の前には幾つもの霊魂が浮いていた。
その中には、凍結魔人とその妻子が?
そして一角鯨竜王とサクヤ竜王の霊魂も?
閻魔天「俺が地獄門の発生地点に気付けなかったために、本当にすまなかった。
しかも天界のどこぞの馬鹿者が故意に開いたのだからな?
俺が尻を拭く事になったんだが、そのためにお前達が犠牲になった…
せめて、その魂は俺の手で救ってやろう」
その真言は魂を救う優しき導き、閻魔天を中心に霊魂達が浄化され消えて逝く。
閻魔天を止めようと追って来て、その様子を隠れて見ていた蛟魔王の前に、
蛟魔王「!!」
見知らぬ竜神の女の霊が現れ、そして何かを言い残し消えた。誰かも解らぬ女の霊魂は蛟魔王に囁いた。
「私は貴女をいつまでも見ている」
蛟魔王の目から溢れ出す涙は無意識に流れた。
胸が熱くなり、心が締め付けられた。
閻魔天は言った。
閻魔天「今、気付いたんだが?お前達が天界に喧嘩を売った連中だな?」
蛟魔王「なら、どうする?地獄門を閉じてくれた事や結界に縛られた魂を解放してくれた事には礼を言う」
閻魔天「なら、礼だけ貰おうか?竜神界のベッピン姉ちゃん?俺には興味ないしな!あはははは!」
そして閻魔天は攻撃を仕掛けて来る事もなく立ち去ったのだった。
残された俺様達は、
改めて力不足を感じた。
そして一年間の期間を決めて修行を始めたのだ。
牛角魔王「美猴王!行くぞ!」
俺様は牛角魔王と、蛟魔王は獅駝王と六耳彌王と、鵬魔王は独自に修行を始めた。そして他の連中も散り散りになって修行を始めたのだ。
一年後!
俺様達は改めて天界へ殴り込むために!
次回予告
ついに天界へと殴りこむ美猴達だったが、
まだ、やるべき事があった。




