魂の繋がり?愛する者のために!
凍結魔人、サクヤ竜王、一角鯨竜王!
その結末は?
サクヤ竜王が見せる真実とは?
それは過去?
凍結魔人は見ていた。
昔の自分と、妻子の姿を!
凍結魔人は叫び妻子の名を呼ぶが、それは過去の映像であり聞こえるはずもなかった。
落胆する凍結魔人にサクヤ竜王は告げる。
サクヤ竜王「今より真実を知る覚悟はお有りですか?」
凍結魔人「真実だと?」
サクヤ竜王「貴方の過去の真実。そして今から起きる結末を!」
凍結魔人は頷くと、再び場面が変わった。
人間達が集まっていた?
そこに人間の神官が村人達を集めて何かを訴えていたのだ。それは?
神官「我々人間は長きに渡り妖怪に支配されていた。しかし今こそその支配から解き放たれたのは全て全能なる神による慈悲の他ならない!」
ざわめく人間達を前にして神官は言った。
神官「だが、今もなお妖怪達が跋扈している。人間達が再び妖怪に支配される事は火を見るより明らか!妖怪達が力を付ける前に根絶やしにせねばならないのではないか?いや!そうするべきだ!」
その標的の妖怪が…
事もあろうに、人間達を解放させた半妖の凍結魔人の家族と、その仲間達だったのだ!半数の人間達はそれに抵抗こそあったが、妖怪の恐怖と疑心暗鬼から賛同した。
人間達は仲間達に薬を混ぜた酒を飲ませ、眠った所を槍で突き刺し火をつけた。
更に、凍結魔人が仲間の安否を気にして出た所を狙い、その家族を殺した。
凍結魔人だけを残して…
それは全てが仕組まれていたのだ!
その時、
人間達を暴挙に導いた神官の影のみが離れていき、人の姿となる。同時に神官は自分がした事の全ての記憶が消えていた。そして影の存在は間違いなく、闇影魔王だったのだ!
それは、どういう意味?
闇影魔王の目的は二つあった。
一つは自暴自棄となって破壊行為を続ける凍結魔人を自らの手駒として使う事。
そして、もう一つ…
地獄門の結界には大量の魂の力が必要だった。その必要な魂を得るために、凍結魔人を狂わせ人間や妖怪を大量に殺させた。そして、それには凍結魔人の妻や子供の魂も使われていた。いや!今もなお使われているのだ! 死んでも魂は救われる事もなく、永遠にエネルギーとして使われるのである。
天界にとって人間も妖怪も虫けら以下の道具に過ぎないのだ!
その全てを知った凍結魔人は信じられない顔で身動き出来ないでいた。
凍結魔人「嘘だ…こんな事があって…」
サクヤ竜王「全てが真実です。貴方は神の掌で使われていたの…」
凍結魔人「なら、俺は今まで何をして来たというのだ?うっ…うぅう…うわぁああああ!」
サクヤ竜王「嘆いている暇は有りません!」
凍結魔人「何だと?」
サクヤ竜王「闇影魔王が先頃死にました。それが引き金となって地獄門の結界が消えて解放されてしまうのです!」
それが何を意味しているかと言うと、地上界に解放されたエネルギーは生きた生命を飲み込みながら増殖し壊滅させるのだ。そしてエネルギーと化した魂は二度と転生出来ずに消滅する。
凍結魔人「くぅ…どうしたら…どうしたら良い…俺は世界なんかどうでも良い…だが、妻や子供達、仲間達の魂をそのような事に使われてたまるかぁ!」
サクヤ竜王「一つだけ手があります…」
凍結魔人「それは?」
サクヤ竜王は凍結魔人にその手段を伝える。
そして、一角鯨竜王にもサクヤ竜王は語ったのだ。
一角鯨竜王「もう…二度と出会えぬと思っていた…サクヤ!」
一角鯨竜王はサクヤ竜王を抱き締める。そして涙を流し、言った。
一角鯨竜王「俺は何をすれば良い?」
サクヤ竜王「一角鯨…」
サクヤ竜王が告げるのは今までの事。自らが死に、その魂を凍結魔人に移し、闇影魔王によって今まで闇に閉じ込められていた事…
今、地獄門が開かれたら未来が完全に消え失せてしまう。
それを回避する手段…
そしてサクヤ竜王が見た未来のビジョンを?
地獄門が解放されたならば、その間近にいるサクヤ竜王の妹が巻き込まれて死ぬ。
サクヤ竜王の妹は、この世界を変える救世主と廻り合い、そこで道を示す役目を持っている定め。
それは世界の命運を左右する大切な出会いとなると…
サクヤ竜王「今、妹を死なせる訳にはいかない…妹が私達からバトンを受けて未来を繋げてくれるの…」
一角鯨竜王「妹だと?」
サクヤ竜王「うん。私は戦争に出ていたから一度も会えなかったけど、妹がいる…どんな娘に育って、どう生きて来たか解らないけど…」
すると一角鯨竜王は察したのだ。
一角鯨竜王「そうだな…強く、凛としたお前に似た才を持った優れた戦士だったぞ?」
サクヤ竜王「会ったの?」
一角鯨竜王「友より話は聞いていた。それに、この戦場に出向く際に会ったよ。まさかサクヤの妹とはな?」
サクヤ竜王「私に似て美人だったでしょ?」
一角鯨竜王「ふっ…まあな。だが、俺は…」
『お前だけしか見えない』
そして再び二人は抱き締めあった。
これが最後の抱擁であり、これから二人は…
再び場所は洞窟。
六耳彌王「どうするッチ?」
蛟魔王「この結界は特殊でな?結界の中から張られている。私が結界の中に入って結界を新たに張ってくるまでた!」
六耳彌王「でも、それで姉御は無事なんですか?」
蛟魔王「このまま手を子招いていたら、どちみち私だけでなく仲間達も全滅だよ。なら、私がやらねばなるまい?」
六耳彌王「そんな…だったら俺ッチが!俺ッチは一度死んだ身、怖くない!」
蛟魔王「馬鹿を言うな!お前は生かされたのだぞ?生かしてくれた者のためにもお前は命を粗末にするな?それより、直ぐにこの場所からなるべく遠くへ離れるんだ!」
と、その時!
二人に近付く者が?
それは凍結魔人だった。警戒する蛟魔王と六耳彌王だったが、凍結魔人は自らが結界を張ると言って結界に向かって行ったのだ。
凍結魔人は一人になると、
凍結魔人「俺はどうしたら良い?」
すると凍結魔人の中からサクヤ竜王の声が。
サクヤ竜王《今より私達が中から結界を破壊し解放させます。そして溢れ出た力を貴方の凍魂の力で再び結界を張り直すのです》
凍結魔人「お前達は敵であった俺を信じられるのか?」
サクヤ竜王《安心しています。なにせ私は人を見る目は確かですから》
すると凍結魔人の身体から光が抜け出して来て、その光は人の姿となる。その姿は間違いなく、サクヤ竜王の姿であった。正確にはサクヤ竜王の霊魂であった。
結解の中には死者しか入れないのだ!
凍結魔人「だが、本当に二人で出来るのか?」
サクヤ竜王《出来るかどうかと言えば、出来ないとダメです。それに私達は二人じゃない…》
すると別の光が人の姿となってサクヤ竜王の隣に現れる。
それは凍結魔人によって殺されたはずの…
一角鯨竜王《三人だ!》
凍結魔人「お前…」
一角鯨竜王《何も言うな。俺が決めた事》
サクヤ竜王《結界の中に入る事が出来るのは死者のみ。私は当然としても、私だけでは力不足でした》
一角鯨竜王《だから俺の力が必要なのだ!》
サクヤ竜王《そして凍結魔人、貴方がいて》
『五分五分!』
凍結魔人「良かろう。足りない分は俺がそれ以上の働きをする」
一角鯨竜王《ふん!少なくとも一戦交えた以上、お前の力は誰よりも俺が信じている》
サクヤ竜王《あら?男の友情?ちょっとジェラシー》
一角鯨竜王《茶化すな!》
凍結魔人「これから大仕事をするのに騒がしいな?」
先頃まで死闘を演じた凍結魔人と一角鯨竜王は思った。
出会うキッカケが違っていれば、共に酒を飲み交わせる友になれていたかもしれないと・・・
その時、大地が揺れ始めたのだ!しかも大地から障気が大量に噴き出して来たのである。
サクヤ竜王《時間が来たようです!二人共、お願いします!》
一角鯨竜王《うむ!》
凍結魔人「承知!」
サクヤ竜王と一角鯨竜王は共に印を結ぶと、二匹の光の竜となって結界の中へと飛び込んで行った。
結界の中へ一度でも入ってしまえば二度と出る事は出来ない。自我を失い、その魂はエネルギーのみとなるのだ。結界の中は障気と怨念が渦巻いていた。
サクヤ竜王《この中で意識を保てられるのは、以て一分!》
一角鯨竜王《あぁ…俺の全てを出しきる!》
二人の仕事は地下より溢れ出す力を押し戻す事。そして魂を拘束しエネルギー化している根源の結界術印を破壊する事だった。
二人は結界に向かって互いの竜気を高め始める。既に魂が己の解放に形を維持出来なくなっていた。が、そこにサクヤ竜王が一角鯨竜王に寄り添うと、互いの力は混ざりあって…
爆発した!
爆発は闇の中を光に変えていく。だが、その中で黒く濁った影で覆われた勾玉が浮いていた。それこそ死者の魂を逃がさない呪縛!
サクヤ竜王《あれのようね!》
一角鯨竜王《サクヤ…共に逝こう!》
サクヤ竜王
二人は残った力を勾玉に向けて放つと、勾玉は粉々となって砕け散った。
その直後、結界は崩壊し地上をも巻き込む程の衝撃波が上昇して行く。瘴気の濁流はサクヤ竜王と一角鯨竜王の魂をも飲み込み、ついに洞窟のある結界を破壊した。
凍結魔人「どうやら上手くいったようだな…後は俺が命をかけよう!」
サクヤ竜王と一角鯨竜王は結界の中の呪縛を解き放つ。それにより縛られていた魂を解放させる。これが凍結魔人との約束だった。
凍結魔人「これで妻も子供達も魂が解放されるに違いない…有難う」
そして地下より溢れ出て来て来たのは怨念を破壊エネルギーとした障気。
凍結魔人「俺の氷結の剣は魂をも凍らす!障気もまた然り!」
凍結魔人より冷気が立ち込め洞窟がみるみると凍り付く。そして、
凍結魔人『恩はこの命を使い、役目を果たす!』
『ウォオオオオ!!』
それは溢れ出て来た障気を凍結させていく。
が、その勢いは更に増して氷がひび割れて、再び漏れだす。
凍結魔人「俺は…諦めん!」
更に冷気で障気を凍結させていく。
サクヤ竜王、一角鯨竜王が怨念の力を分散してくれた。地上を壊滅させる程の力を抑えるには、それでも足りない…
が、凍結魔人の魂が何かに支えられたのだ。
凍結魔人「!!」
凍結魔人は幾つもの手に支えられていた。
それは…
かつて死んだ仲間達だった。そして、隣には鎧を纏った女と幼き子供達が氷の術を補助している。それは、凍結魔人の死んだ妻と子供達だった。
凍結魔人「お前達…」
女「貴方…」
仲間達の魂の声が聞こえて来た。仲間達は信じている。
凍結魔人は仲間達にとって、
今でも世界を守る勇者!!
凍結魔人に再び力が溢れ上がっていく。
『そうか…解ったよ?俺は…お前達のためにも、世界を守るための勇者であろう!』
魂の爆発!!
思いの力!
それは地上に溢れ出た障気を全て封じ込めたのだった。
凍てつく凍結した洞窟の中心に、
凍結魔人の身体は氷と化してひび割れて砕け散った。
竜と氷の愛編
終幕
次回予告
ついに一番の危機は去った!
残るは中央の塔を目差すのみ!




