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天上天下・美猴王伝説!  作者: 河童王子
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地獄の門開放!?


一角鯨竜王が戦死


そして物語は新たな危機が迫っていた。


一角鯨竜王の戦死。


それは何を意味するのか?


場所は変わり、蛟魔王と六耳彌王は自分達のいる洞窟の地下で何か嫌な感じを察知していた。



六耳彌王「この地下からとても嫌な感じ…声がするッチ」


蛟魔王「確かに!さっきまで闇影魔王の異空間術の影響で気付けなかったが…確かに私達のいる地下より何か嫌な感じがするな」


蛟魔王は術札に念を籠めると、散らばりながら再び洞窟の中へと飛んで行った。


六耳彌王「何か解るッチか?」


蛟魔王「他に罠はないようだな?洞窟の奥に闇影魔王の物とは異質の結界がある。恐らくそこだな?」



二人は再び洞窟の中に入って行くと、その結界の前にまで来たのだ。


蛟魔王「何だ?これは?」


六耳彌王「早く結界を壊して中に入るッチよ!」


六耳彌王がその結界を壊そうとした時、蛟魔王が制止した。


蛟魔王「それに触るな!それは!!」


六耳彌王「?」


その結界は地獄への片道切符だった。



蛟魔王「こんな禁術を張るなんて…神は何処まで秩序を冒涜しているんだ!」


六耳彌王「姉御?」


蛟魔王「…これは禁忌なんだよ」



生きている者は必ず死ぬ。


それは世界の理。


では、死んだ者はどうなるのか?


肉体に損傷や病、死を迎えた者は霊界により選別されて地獄と呼ばれる世界へと魂が運ばれるのだ。


が、この結界の下にある禁忌の外法の下にあるのが、



地獄門!



それは現世と地獄を繋ぐ門。


稀に現世に地獄門が空間の歪により開く事があるという。


それを、強力な外法を用いて一定の場所に固定しているのだ!



この外法は地獄門から流れて来る死者の魂をエネルギーとして、戦場で戦っている大王鬼神達を再生し蘇らせているのだ。


それが何を意味しているのか?


死んだ魂は地獄により生前の罪の分の罰を与えられ、その後、天にある仏界にて浄化されて再び新たな生者として転生するのだ。


だが、その魂がこの禁忌の術で蘇らせるエネルギーに使われたら、その魂は再生の力を失い二度と転生出来なくなるのだ。



それは魂が無になる事なのだ!



蛟魔王「クソッタレ!誰がこのような外道な事を!」


六耳彌王「早くこの結界と、その気持ち悪い術法を壊しちゃいましょ?ちゃちゃっと?ねぇ?姉御!」


蛟魔王「ぅ…」


六耳彌王「どしたの?」


蛟魔王「これは私でも解けるか解らない…」


六耳彌王「えっ?地上界最高法の術師でもある姉御でもですか??」


蛟魔王「因みに竜神界でも最高位だったぞ?」


六耳彌王「あはは…流石ですね?それでも無理なんですか?」


蛟魔王「この結界を破壊すると、この地下にあるエネルギーが一気に暴発して何が起きるか想像が出来ないよ」


六耳彌王「爆発寸前に防御壁を張って抑え込むのは?俺ッチと姉御の二人がかりなら出来るん…じゃ?」


蛟魔王「試してみるか?地上界の四分の一が消し飛ぶ程だが?」


六耳彌王「…無理ッチ」



と、そこに背後から並々ならぬ妖気を感じたのだ!?



六耳彌王「まさか?また闇影魔王が??」


蛟魔王「違う!この妖気は!?」



二人の前に現れたのは洞窟全体を冷気で凍結させた。


間違いない!この冷気の主、一角鯨竜王を倒した凍結魔人であった。



蛟魔王「まさか、この状況で何てタイミングだ!」


六耳彌王「ウグゥ!あいつ滅茶苦茶強い妖気を感じるッチ!」


蛟魔王「だろうな?恐らく熔岩魔王と金剛魔王、或いは雷獣魔王より…少し上か?」


六耳彌王「この状況は帰りたくなるッチね?」


蛟魔王「前方に凍結魔人、後ろには結界か…どうしたもんか?とにもかくにも」


六耳彌王「殺るしかないッチ!」



二人は凍結魔人を相手に妖気を高めて構える。


が、一瞬にして二人は動けなくなった。


その二人の間を凍結魔人が近付き、そして…



横切ったのだ?



振り返る蛟魔王と六耳彌王に凍結魔人は言った。



「死にたくなければ早々に洞窟から出て行くのだな?」



蛟魔王と六耳彌王は警戒しながら言った。


蛟魔王「そういう訳にはいかないんだな?これが…ちょい、そこの結界に用があるんだよ?」


六耳彌王「力付くでも!」


すると凍結魔人は二人との境に凍結の氷壁を作り道を塞いだのだ。



凍結魔人「その氷壁はお前達の力では壊す事は出来ん」


六耳彌王「そんな事やってみなきゃ!」



が、次の凍結魔人の言葉に二人は困惑した。



凍結魔人「この結界は俺が破壊し封じる。巻き添えになりたくなければ早々に去れ!」


蛟魔王と六耳彌王は互いに顔を見合わすと、何も言わずに洞窟を出て行く。


六耳彌王「信じて良い…んですよね?」


蛟魔王「お前も解っただろ?アイツの目が…」


『本気だと!』



凍結魔人に何があったのかは解らない。心境の変化?お天気屋さん?そういう簡単な問題じゃないだろう。そう。


あの時、凍結魔人が一角鯨竜王を倒したあの時、


一角鯨竜王は自ら突き出した槍を凍結魔人の寸前で止めた。


それは?


一角鯨竜王の槍先の前にサクヤ竜王の魂が両手を広げて止めたからだ!



一角鯨竜王「サクヤ…なのか?本当に?」



サクヤ竜王は事もあろうに凍結魔人の身体から抜け出して来たのだ?


するとサクヤ竜王は頷きながら一角鯨竜王の中へと入って行く。それは一角鯨竜王を包み込み同化するようだった。一角鯨竜王はその瞬間涙を流し頷くと、その身体は氷の棺の中へと凍結し粉々となって消えたのだ。


凍結魔人はそれを見届けた後、その場を離れて行く。


そして、再び思い出す。


あの日、凍結魔人がサクヤ竜王を殺した日の事を…


凍結魔人とサクヤ竜王の一騎討ちの時、サクヤ竜王は戦う事を止めた。


その理由…


サクヤ竜王は竜神界の巫女であった。剣術、策士としての才能だけでなく生まれながらの特殊な力を持っていた。自らの魂を同調させる事で心を読み、その過去と未来を見る予知の力をも持っていたのだ。


そしてサクヤ竜王は凍結魔人の過去を知った。同時に自らの運命を知ったのだ。自らが今命を落とす事が、産まれたばかりになる妹の命を守る事になるのだと…


そして無防備となったサクヤ竜王は凍結魔人の氷の棺の中に閉じ込められ、命が絶えた。


凍結魔人の氷術は魂をも凍結させるのだ!


が、サクヤ竜王の魂は凍結魔人に凍らされる直前に肉体を捨て、凍結魔人の魂へと移していた。



その後、凍結魔人は地上界の三魔王によって討伐され、地下牢獄に投獄された。


凍結魔人はその後、自らの魂の中に入り込んだサクヤ竜王の声に悩まされる事になる。絶対無敵に思われた凍結魔人でも、自らの魂に入り込んだサクヤ竜王には手を出す事が出来なかったのである。


サクヤ竜王は凍結魔人の繰り返す殺戮衝動を中から抑えていたのだ。


凍結魔人「いい加減に俺の中より消え去れ!竜族の女!」


凍結魔人は地下牢獄に幽閉された後、地上界の魔王である闇影魔王と契約をしたのだ。


この地下牢獄には死者の魂が封じられていると言う。地下牢獄に投獄された犯罪妖怪は闇影魔王の申し出に従うか否かで、死ぬまで地上界反乱分子の討伐に使われ駆り出されるか?命を奪われ地獄に落とされ魂をエネルギーとされるのである。


当然、凍結魔人は断り死ぬ事を選んだが、凍結魔人の計り知れない力を惜しく思った闇影魔王の次の言葉に考えを変えた。


闇影魔王「お前の妻と子供の魂を私が手に入れてあると言ってもか?」


凍結魔人「!!」


闇影魔王「もし俺に従うならお前の妻と子供の魂をお前に返すだけでなく、肉体をも与えて蘇らせてやっても良いのだぞ?」


凍結魔人「そんな事が本当に出来るのか?」


闇影魔王「当然だ!私は神だからな?」


凍結魔人が狂った原因は人間達に無惨に殺された妻子だった。それが蘇らせる事が出来るなら?


凍結魔人が心を揺らしたその時、自分の中からサクヤ竜王が止めたのだ。それは凍結魔人の胸を苦しめたが、それに気付いた闇影魔王が気付く。


闇影魔王「渇!」


闇影魔王の掌から放たれた影が凍結魔人の胸に入って行く?


凍結魔人「何を!?」


闇影魔王「案ずる事はない。お前の中に嫌な気配を感じたのでな?私の術印で葬ったに過ぎない。お前には害どころか嫌な耳障りが消えたと思うが?」


凍結魔人「えっ?」


確かに頭の中に聞こえていたサクヤ竜王の声がそれを期に聴こえなくなった。


サクヤ竜王の魂は闇影魔王の影に飲み込まれて消えたのだ。



凍結魔人「煩わしかった所だ。助かる。で、先の話は本当だろうな?」


闇影魔王「神は嘘はつかん」


凍結魔人「妻と子供は本当に蘇らせられるのだな?」


闇影魔王「なんなら死んだお前の仲間も一緒に蘇らせてやろう?」


凍結魔人「!!」



そして凍結魔人は忠義を誓い隠密な仕事をする。地上界を乱す一桁クラスに匹敵する魔王を専門に討伐する。更に現存の一桁クラスの魔王が反逆しないための抑止力として存在した。


が、


闇影魔王が蛟魔王と六耳彌王により倒された事と、凍結魔人の前に現れた一角鯨竜王の魂からの叫びが呼び起こしたのだ!


凍結魔人の中に封じられていたサクヤ竜王の魂を!


サクヤ竜王の魂は影の呪縛から解放され、一角鯨竜王の声に導かれて再び表世界に現れたのだ。


そして、凍結魔人と一角鯨竜王の一騎討ちの前に姿を現し、二人に真実を告げた。



サクヤ竜王《今、貴方達に真実をお見せします。そして貴方達が成すべき未来を!》



すると凍結魔人と一角鯨竜王にサクヤ竜王の記憶と映像が流れ込んだ。


凍結魔人「!!」


それは闇影魔人との記憶。



闇影魔人「ふっ…いくら神でも死者を蘇らせる事は禁忌。それを容易く出来るものか?しかも穢らわしい妖怪を蘇らせなど出来たとしてもやるものか?あはははは!それに、既に奴の血縁も仲間達の魂も結界のエネルギーに使わせて貰ったからな?本当に馬鹿な奴だ!」



凍結魔人「!!」



騙され怒りが込み上げる凍結魔人。そして、一角鯨竜王には…


一角鯨竜王「ほ…本当にサクヤなのか?」


サクヤ竜王「お願い…私に力を貸して?一角鯨…」


一角鯨竜王「もう二度と出会えぬと思っていた…あぁ!お前の頼みなら、この命をかけられよう!」



サクヤ竜王は言った。


闇影魔王は自らが死んだ場合に備え、罠を施していたのだ。そう。自らが死んだならば、あの地獄の門が結界をぶち破り、地上界を崩壊させる程の爆発を起こすと!



凍結魔人「全てが無になるなら願ってもない…」


が、そんな凍結魔人にサクヤ竜王は言った。


サクヤ竜王「あの結界のエネルギーに貴方の愛する方々の魂が使われるとしても?」


凍結魔人「それもまた…世界を滅ぼす恨みを叶えられるなら…そうする事で妻も子供達の…無念も晴らせると言うもの!」


サクヤ竜王「貴方は解ってはいない…見せてあげるわ!貴方の…」



その直後、凍結魔人の視界が暗闇に吸い込まれ、再び光が見えた時…


そこは過去の凍結魔人が住んでいた故郷であった。



《ここは?》


《今から真実をお見せします》


《俺に何を見せると言うのだ!?》




サクヤ竜王が見せる真実とは?



次回予告


真実を知った凍結魔人の取る行動は?


そして、なかなかブックマークが増えずに涙する者がいた。


誰か読んでる人がいるのだろうか?


それは、誰も知らない物語であった。


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