魔手!それは四竜姫の無念??
蛟魔王は因縁深き闇影魔王と戦いの最中、
闇影魔王の背後に現れた影から出て来た八本の腕を見て衝撃を受けた。
私は蛟魔王
私は今、影を使う闇影魔王と交戦中だ!先に戦っていた六耳彌王は異空間へと飛ばされたまま…
早めに倒して、異次元空間に飛ばされた六耳彌王を私の空間転移術で呼び戻すつもりだったが…
闇影魔王の背後に現れた八つの影から、女の腕のようなモノが出て来たのだ。しかも私の竜鞭を触れただけで消滅させるなんて、そんな事が出来るのは?
『再生負荷の力!?』
それは一桁ナンバー第四魔王で有り、私と同じく竜神族からの逃亡者…
万聖竜王の持つ特殊能力だった。その能力は本来、自己再生の力なのだが、強力な再生を集中させ負荷を与える事で触れた対象を逆に消滅させる能力だ。
この能力には金剛魔王ですら恐怖していたとか…
だが、何故闇影魔王がその再生負荷の力を使えるのだ?
それは影から姿を現した八本の腕が理由。
心当たりがある。
万聖竜王には子供のように育てた四人の半竜人の娘達がいた。その四人の娘達に自らの再生負荷の力を分け与えていたのだ。
つまり…
蛟魔王「キサマ!あの四人に何をしたぁ!」
私の怒りに闇影魔王は口元に笑みを見せて答えた。
闇影魔王「気付いたようだな?察しの通り。この腕はあの獣の腕に間違いないさ?」
蛟魔王「!!」
闇影魔王「私もいたのだよ!お前が万聖竜王を始末してくれたあの日、あの現場に!」
蛟魔王「何のために?」
闇影魔王「無論、裏切者の万聖竜王の始末のためさ?あの者は密かに反乱軍を作り、この地上界に反旗を翻す意思があった。そう。あの者は私の正体も魔王システムの実態も突き止めていたのだ!」
闇影魔王は以前より万聖竜王の始末を試みていた。
が、
影に潜み、寝込みを襲おうとしても万聖竜王に隙はなかった。万聖竜王は地上界の魔王でも異端であった。天界の討伐指示にも従わず、討伐ではなく自らの配下として使っていたのだ。
黙認…
せざるしかなかった。それだけ万聖竜王の実力は天界ですら手を出せなかったのだ。
闇影魔王「それをお前が代わり始末してくれたのだからな?有難い事だ!あははは!」
蛟魔王「それで、何故四人を殺したのだ?」
私の目は冷静に見えたが、沸き上がる殺意が感じられていた。
闇影魔王「そうだったな?この腕は…」
私が万聖竜王との因縁に決着が付いた後、城を出る私の前に万聖竜王の率いていた軍隊が道を塞いだ。
その者達は天界から討伐命令のあった者達が数多くいた。魔王クラスの実力者も数え切れない。そこに、万聖竜王の死を知ったリーダーらしき者が前に出る。
蛟魔王「………」
鯨竜王「儂の名は一角鯨竜王。万聖竜王様により後の軍を任されておる」
蛟魔王「それで私に何のようだ?」
私は既に力を使い果たしていた。この状態でこの数の猛者を相手にする事はなぶり殺しにされるしかなかった。だが、一角鯨竜王は驚くべき事を申し出て来たのだ。
鯨竜王「私達、総勢一万の万聖軍は今より蛟魔王様の配下になりましょう。それが万聖竜王様からの遺言でございます」
蛟魔王「!!」
万聖竜王は自らが私との戦いで死ぬ事と察していた。そこで、せめて自らが育て上げた軍隊を私に残してくれていたのだ。
私のために…
蛟魔王「有り難う」
私は自らに従う万聖軍を配下にした。
だが、それと別に万聖竜王直属の四竜姫達は別行動を取ると伝えて来た。
花竜姫「私達は…例え万聖様の命令だとて、お前の下で働く事は出来ない」
蛟魔王「………」
だが、四竜姫達には万聖竜王により特別な任務があったのだ。
それは竜神界に出向き、この件[蛟魔王の神器強奪の真相]の全てを八大竜王に報告する任務だった。
四竜姫達は私が水廉洞闘賊団に合流するために出向いた後、
鳥竜姫「行ったようね?」
月竜姫「私達も急ぎましょう」
風竜姫「そうね」
四竜姫達も竜神界へと出向こうとした時、
風竜姫「待って!」
四竜姫達は本能的に鳥肌が立ち周りを見渡し警戒する。そこで自分達に向かって伸びて来ている影に気付いたのだ。咄嗟に飛び上がると、影から腕が伸びて来る!
『再生負荷!』
四竜姫達は再生負荷の力で向かって来る影を消し去り、着地と同時に背中を合わせる。
風竜姫「何者ぉ!」
月竜姫「まさか中央の?いや?天界からの刺客か!」
四竜姫達は既に万聖竜王から知らされていた。中央には、天界より降りて来た武神が魔王に化けて成り代わり、実質地上界を支配している事を!地上界の魔王達は掌で踊らされているに過ぎない事を!
万聖竜王は魔王として天界の指示に従うふりをして、その真意を調べ、反乱勢力を組織していたのだ。
そして、その天界から地上界を影ながら動かしているのが、闇影魔王だとも突き止めていた。
闇影魔王「穢らわしい竜の民よ!お前達を竜神界に向かわせる訳にはいかない」
花竜姫「クッ!」
四竜姫達が万聖竜王によって与えられた任務は蛟魔王の事件の真相を告げる事。だが真の任務は地上界の万聖軍と美猴王の水廉洞闘賊団と手を組ませ、更に竜神界にいる竜神族との共同にて天界へ攻め混む事!
それを阻止するために必ず現れるだろうと思われていたのが闇影魔王であった。
そのために万聖竜王は四竜姫達に再生負荷の力を与えていたのだ。
生き残るために…
その覚悟はしていた。
四竜姫達は闇影魔王を相手に戦った。四竜姫達の再生負荷は闇影魔王の使う影術も消し去り、更に竜の気配感知能力で空間移動も先読み出来た。
そして、四竜姫は唱えたのだ!
『竜神変化唯我独尊!』
四竜姫達は驚く事に竜神の鎧を纏った戦士と変化したのだ。それは蛟魔王には見せなかった四人の本気!
闇影魔王「流石の私も度肝を抜かれたよ?まさかそんな隠し玉を用意していたとはね?最後の最後まで万聖竜王は曲者だったよ…しかし!」
『たかが竜族の害虫が足掻こうが気高き私に敵うと思ったか!』
闇影魔王の影が掌に集中すると影玉が幾つも出現し宙に浮かぶ。そして四竜姫と闇影魔王が死闘を繰り広げた。
蛟魔王「それで…」
闇影魔王「害虫が相手でも、あの再生負荷の能力は脅威的かつ魅力的でね?」
闇影魔王の影は傷付いた四竜姫達を追い詰め、次々と腕を影に飲み込ませ…
闇影魔王「奪ったのだよ!腕事、ごっそりとな!」
再生負荷の能力を他者より奪い使う事は不可能。しかし能力を発する引き金となる四人の腕を奪い、その記憶を元に能力を使う事を可能としたのだ。その為、自らの影の中より奪った腕からのみ再生負荷の力を使う事が出来るのである。
闇影魔王「都合良いですよ?このような気持ち悪い物を直接触るのは吐き気がしますけどね?さぁ?お前とは因縁のある能力だろ?再び食らうがよい!この力…」
『八手の再生負荷を!』
八つの影から飛び出ている腕が私に向かって飛んでくる。遠距離から自在に操る浮遊再生負荷の力だと?
あの手に触れたら、一瞬にして身体が消滅する。掴まれたら最期だ…
まるで幽霊の白い手のように向かって来ては、触れた物を全て消し去る。
私は印を結び駆けながら唱えた。
『竜神変化唯我独尊!』
竜神の鎧を纏い蛟の盾を使い、白い手を弾かせる。私の蛟の盾は竜神族三種の神器の絶対防御!この再生負荷の能力でも受け返す事が出来る。これは本家万聖竜王との戦いの中で実証済みだった。しかし影は何処からともかく出現し、再生負荷の手が伸びて来る。
防戦一方では不利だな…
四竜姫達の無念、四人を生かすために与えた能力を奪われた万聖竜王の代わりにも、天界の神だか知らないが、この外道には私の手で必ず引導を与えてやる!
だが、躱す事で精一杯だ…何か策を考えろ?
策を…
闇影魔王「さて、追い込まれたようだぞ?」
私は壁際まで追い込まれ、その周りに白い八つの手が迫り逃げ場を塞いでいた。
蛟魔王「………」
闇影魔王「お遊びはこれまでだ!お前達にはもう逃げ場はない。袋のネズミ…いや?袋の竜だな?」
蛟魔王「何を戯けた事を?気付かなかったか?誘き寄せられたのはお前の方だよ?」
闇影魔王「何だと?」
見ると、闇影魔王の足下には光る玉が転がっていたのだ?
それは雷玉?
それは六耳彌王の雷玉?
その時、雷玉が発光しその光の中から六耳彌王が飛び出して来たのだ!
六耳彌王「ジャジャーン!六耳彌王、ただいまッチ!」
六耳彌王は飛び出して来たと同時に、闇影魔王の身体に雷の放電を放つ!
闇影魔王「うぎゃあああ!」
そして一回転して私の隣に着地した。
六耳彌王「只今、戻りましたッチ!」
蛟魔王「遅かったな?」
六耳彌王「姉御、無茶ぶり!俺ッチも死に物狂いで戻って来たんだッチよ!」
蛟魔王「で、手筈は?」
六耳彌王「バッチリ!」
すると、闇影魔王が立ち上がり発狂する。何故なら影術を使えなくなっていたから?
何故?
しかもどうやって六耳彌王は影の中から抜け出して来たのか?
六耳彌王が先に投げ付けた雷玉。
そして私は先に六耳彌王に自分の術札を渡し、ある術を仕込んでいた。
それは…
六耳彌王は敢えて闇影魔王の影に飲み込まれ、異空間へと身を任せた。そこで六耳彌王は渡されていた術札をそこら中に散りばめる。術札は闇影魔王の使う異空間の中で発動し、その空間を中から破壊したのだ。
破壊された空間は徐々に狭まり、消えていく…
その中で、六耳彌王は私が教えた術を行ったのだ。
空間転移の術!
六耳彌王が先に散らばせた雷玉は、六耳彌王の転移術に使う触媒。私が術札を、闇影魔王は影を使い空間転移術を行うのに対し、六耳彌王は雷玉を使って空間転移術を行うのだ。
しかし…
予想以上に時間がかかったようだな?
だが、無事に闇影魔王の異空間から抜け出し、更に破壊した事でもう…
蛟魔王「お前はもう影を使えない!」
それは同時に八手の再生負荷の力も使えないと言う事!
床に四竜姫達の腕が落下し、消滅した。
闇影魔王「お…おのれ…」
正に逆転!
完全攻略の策による大逆転劇だった。
次回予告
蛟魔王と六耳彌王の策がはまり、闇影魔王を追い詰める・・
はずが?




