決着か?牛角魔王と祝融!
妖恐を倒したのも束の間、
牛角魔王と祝融の一騎打ちはまだ続いていた!
俺様は美猴王…
乱入して来た妖恐達を全て撃退した俺様達は見ていた…
牛角魔王と祝融の戦いを!
ここには俺様、六耳彌王、獅駝王、それに離れた場所には意識を失った玉面魔王の傍には蚩尤がいる。
祝融が勝ったとしても、牛角魔王が祝融を倒せたとしても、残った俺様達で祝融を倒すか、暴走している牛角魔王を俺様達で止めなければならない。
どのみち戦う準備はしておかなければならないな…
祝融と牛角魔王の戦いは壮絶な死闘が繰り広げられていた。二人は熔岩に足元を突っ込み、その中で祝融から発する炎の熱気!それだけで体力も集中力も奪われる。こんな状態で牛角魔王は祝融相手に戦闘を続けていた。
牛角魔王は六本の腕に漆黒の闘気で造られた黒剣を手に連撃を繰り出す。祝融は巨大な熔剣を軽々振り回し牛角魔王の剣を弾き返す。一見、力と数の戦いに見えるだろうが、その剣筋は致命傷を狙う程の剣捌き、一撃でも躱し損ねればそれで終わり。
それを全て捌きながら今の今まで戦っているのだ。
牛角魔王が飛び上がると祝融は上空に向けて、
『熔岩斬噴火!』
祝融の振り上げた熔剣から爆発するかのように熔岩が噴き出して牛角魔王を飲み込むが、牛角魔王も六本の腕から斬撃を繰り出し熔岩を斬り裂く!そして斬りかかる牛角を祝融が熔剣で受け止め牛角の横っ腹を蹴りで吹っ飛ばす!
祝融「………」
だが、祝融は何か不満な顔をしていた。
祝融「腑に落ちない。確かに桁違いの力とスピードだ…だが、それではまるで血に飢えた獣ではないか?だが、その程度では私には勿論、貴方の父である神農様には遠く及ばなかったはずだ!」
何だって?あれでまだ足りないと言うのか?
蚩尤「あ…兄者は…あんなもんじゃねぇ…」
えっ?
蚩尤は知っている。
かつて牛角魔王は父神である神農をその潜在的な力で圧倒し倒した事を!
祝融「………」
失われていた過去の記憶
そしてこの祝融もまた、あの現場にいたのだ!
牛角魔王は過去、父神である神農と戦争を起こした。そして一騎討ちの際、牛角魔王は神農の圧倒的な力に敗北した…
神農「お前には期待していたのだがな…」
が、その時?
牛角魔王の身体から黒いオーラが立ち込める。
神農「まさか?魔神の血を覚醒させたと言うのか?あはは…ははは!流石は私の息子だ!」
その時、魔神と変貌した牛角魔王が神農に襲い掛かる。だが、神農もまた魔神なのだ!神農も魔神と化し、牛角魔王と衝突したのだ!その力は拮抗し、神農の城が崩壊していく。その城の中を二人の戦いを止めるべく向かっている者がいた。
祝融だった!
祝融「あの二人が争うなんて止めねばならぬ!クッ!私が蚩尤の命を仕留め損ねたせいで…不覚だ…」
祝融は二人の戦っている部屋の扉を開いた。
祝融「こ…これは!?」
その壮絶な戦いは祝融をも震わせた。身動き出来ない状態で、二人が血を噴き出させ戦っている姿に固まっていたのだ。
既に止められる状況ではなかった。
その時、再びこの戦場の扉が開いたのだ?
蚩尤「兄者ぁあああ!」
それは牛角魔王を止めるためにやって来た蚩尤だった。蚩尤は二人の戦いに祝融と同じく固まってしまう。その姿を見た祝融は…
祝融「あやつさえいなければ…あやつさえ存在しなければ!」
祝融は炎の剣を抜くと、蚩尤に向かって駆け出したのだ!蚩尤を抹殺するために!
蚩尤「!!」
祝融が蚩尤に迫った時、祝融の剣が割り込んだ者により弾かれたのだ?
それは牛角魔王!
牛角魔王「テヲ…ダス…ナ!テヲ…ダス…ナ」
祝融「軒轅様!私は貴方のために!」
だが、牛角魔王はこの祝融の行為がキッカケとなり、目の前で更なる変化を見せたのだ!
牛角魔王「グゥオオオオオオ!」
暴走する牛角魔王は祝融を覇気のみで弾き飛ばすと、蚩尤を守ったのだ。祝融は一撃で壁に埋もれて動けなくなる。
祝融「これ程とは…」
そして牛角魔王は祝融の目の前で、父である神農を倒した。その力を見た祝融は心が震えたのだ。それは恐怖?否!それは歓喜!
牛角魔王の計り知れぬ力に酔いしれ、ある意志を持ったのである。
そして牛角魔王が神農の命を絶とうとした時、祝融は火炎放射で目眩ましをし、神農の躯を担ぎ、その場から消えたのだ。
祝融「ふはははははは!ふふふ…ふはははははは!」
すると祝融の想いに神農の亡骸から魂が現れる。
祝融「し…神農様?」
神農《お前に託す…お前が軒轅を消すのだ!》
祝融「蚩尤ではなく軒轅様をですか?」
神農《祝融よ…お前に私の知るこの世界の理を教える時が来た…この偽りの世界の真実と、呪われた伝説を!》
祝融「!!」
祝融はその話を聞いた後、神農に代わり自らが神農のやり遂げられなかった事を継ぐ事を誓った。
神農《託すぞ!祝融…》
すると神農の魂は目の前から消え、その躯が燃え上がり祝融の身体を覆った。
そして炎から出て来た祝融は炎を纏う鎧姿。祝融は神農の力と役目を引き継いだのだ。
祝融「私が必ず神農様のやり残した事を成し遂げましょう」
だが、目の前で戦う牛角魔王は魔神化したにも関わらず自分にすら及ばぬ?
祝融「それが限界なら貴方には何も願えない!」
祝融の妖気が更に高まり大地を揺らす。それは地上が祝融の力に恐怖し脅えてるように感じられた。それほどの殺気と威圧感が祝融から発っせられているのだ!
祝融「貴方を神農様の後継者として育て上げた私の時間も無駄だったと言う事か…ならば、この私が神農様に代わり地上を支配するしかないようだな?」
祝融の圧力が牛角魔王に重圧をかける。足が地面に沈み、全身を締め付ける。
牛角魔王「ぐぅぅぅ!」
身動き取れない牛角に祝融が近付き、熔剣に覇気を籠める。
祝融「今の自我を失った貴方では、その呪縛からは逃れられまい?」
牛角魔王は力ずくで足掻くが余計に身体を締め付けられて膝を付く。
祝融「その首!この私の手で介錯させて頂きます!お覚悟!!」
祝融が牛角魔王の首目掛け熔剣を降り下ろす!
美猴王「牛角ぅうう!」
俺様の牛角魔王の名を呼ぶ声が響き渡る。蚩尤もまた、その状況に涙を流していた。
牛角魔王が…
祝融「!!」
祝融の降り下ろした熔剣を二本の腕で白羽取りで止めていたのだ。牛角魔王はゆっくりと見上げるように祝融を睨む。その目は?
暴走から意識を取り戻していたのだ!
牛角魔王「長い嫌な夢を見ていたようだ…」
そして、牛角魔王は押さえた熔剣を力でへし折ると、祝融に向かって指さしながら立ち上がり言った。
牛角魔王「おはよう!」
律儀な奴だ…
祝融「どうやら戻って来れたようだな?しかも意識を保ちながら魔神変化を保ち続けているとは面白い…」
牛角魔王「安心しろ?我が師、祝融よ!遅くなったが俺がお前を凌駕したと証明する時が来た!」
何だ?
あの牛角の自信は?
牛角魔王「何故なら俺は夢の中で十回はお前を倒したからだ!」
いや…それは夢だから…
この状況で天然さんか?
天然さんなのか?
牛角は…天然?
心当たりが幾つもある!
牛角魔王「教えてやろう。俺の魔神化は更に進化するのだ!」
牛角魔王の妖気?いや?魔神の闘気が高まっていく!漆黒の闘気が!!
すると牛角魔王の鎧が更に鬼の形相のような忌々しい形へと変わっていく。
牛角魔王「これが夢で見た魔神変化の真の姿だ!」
息吹き!
その直後、牛角魔王を中心に漆黒のオーラが渦を巻き始め、祝融の熔岩を漆黒の竜巻の中に飲み込んで上空へと上昇させる。そして本体の二本を残した他の四本の腕が同時に印を結ぶ。
牛角魔王「フゥオオオ!」
牛角魔王の力が格段と膨れ上がる。
祝融「あ…あはは…それだ!その姿だ!我が主君である神農様を…あの日、死へと追いやった…」
その姿を見ていた蚩尤もまた震えながら言った。
しゆう「あ…あの時の…兄者だ…父上を降した…兄者の真の…」
が、牛角魔王の闘気が急激に消え去り魔神化が解けたのである?
只、一本の剣を残して?
祝融「なっ?何故、魔神化を解いたのだ?この私の力を愚弄しているのか!」
牛角魔王「………」
蚩尤「あ…兄者?貴方は何を考えて?」
その場にいた全ての者が牛角魔王の行為に理解が出来ないでいた。
俺様意外は…
俺様には解る!
牛角魔王は…
超ド級の天然さんなんだぁー!!
牛角魔王「ふぅ…何か思い違いしてはいないか?」
祝融「?」
牛角魔王「この俺がお前から得たのは剣術だ!魔神化ではない。俺がお前に上回るためには、俺がお前に剣技で勝たねば意味がないのだ!」
祝融「戯けた事を!今すぐに再び魔神化するが良い?そのくらいは待ってやろう」
牛角魔王「くどい!俺は俺の持つ力でお前に勝つ!それだけだ!」
祝融「貴方は昔から強情でした…だが、この命の駆け引きの最中に、そのような言い分が通ると思うたか!」
牛角魔王「二言はない!」
祝融「敗北した言い訳にする気か?貴方には期待していたのだがな?なら、私もまた剣技で引導を与えてやろう!」
牛角魔王「来い!祝融!」
祝融の掌に炎が噴き出して新たな溶剣が出現する。しかも、その妖気で大地が震え上がり、吹き起こる妖気の渦は天にまで上昇し天を貫く!これが地上界を統べる魔王の力なのか!?
うって変わって牛角魔王は瞼を閉じて唯一残った漆黒の剣に妖気を集中させていた。その妖気は静かに荒れ狂う祝融の妖気を受け流していた。
正に『動』と『静』の戦いだった。
祝融「もし生き足掻くなら、この状況下でどう抗くか俺に見せるが良い!」
牛角魔王「無論、そのつもりだ!」
二人は同時に動い…
いや?牛角魔王は動かずに立ち止まったままだった。
その牛角魔王に向かって祝融が溶剣を降り下ろす!
恐らく、誰から見ても牛角魔王に勝ち目はないように思えた。祝融の一息で消えてもおかしくない牛角魔王の魂の灯火!
だが、牛角魔王の瞳だけは強く輝いていた!その瞳には戦う意思が消えてはいないのだ!
牛角魔王
『乱鬼流奥義・鬼一閃!』
牛角魔王は漆黒の剣を横一閃に振り払った…
が、直後祝融の妖気が一帯を噴火の如く爆発させたのだ!それは中心にいた牛角魔王の身体を斬り刻み、血を噴き出した状態でその場に立ち尽くしていた。既に牛角魔王は意識が無いように思えた。
祝融「立ったまま逝ったか?見事な最期!」
が、祝融は気付く?
己の身体が動かない事に?
まるで世界が時が止まってしまったかのような静けさだけが辺りを覆う?
だが、この沈黙は祝融の本能に強烈な危機感を与える。
まるで…
まるで、これは…
嵐の前の静けさ!?
祝融「!!」
気付くと自分の降り下ろしたはずの腕は振り上げたままでいた?
祝融「まさか!」
祝融の見たのは己のイメージ…極限状態の集中力が見せた世界!
そして、まだ祝融自身は未だ身体が動けないままなのだ?にも関わらず、牛角魔王の一閃は動き、祝融の身体を斬り裂く。
祝融「うぐっ!」
その瞬間、時が動き出したのだ!
まるで止まっていた時間が嘘のように、今までの静けさが無かったかのように、牛角魔王を中心に妖気の竜巻が爆発し祝融を斬り裂きながら宙に放り上げたのだ!竜巻?いや?これは暴風?これは、まさに!
『嵐』
まるで流れるか吸い込まれるように、
上昇気流は祝融を飲み込みながら巻き上げられ天高くまで上昇していく!しかも身動きが叶わないまま身体中を無数の斬撃に斬り裂かれ、そして勢いを増しながら地上へと隕石の如く落下した!
次回予告
牛角魔王と祝融の因縁の決着!
だが、戦争はまだ終わってはいない!




