生存本能と闘争本能!
獅駝王の登場間もなく妖恐ギガノの前に敗れ去ったかに思われたが、
倒れた獅駝王が叫んだのは?
俺様は美猴王
ギガノを相手に戦う獅駝王だったが、獣神変化の持続時間が切れて解けてしまった。反撃空しく敗れ去る獅駝王の助けに入る俺様と六耳彌王も既に連戦続きで体力が無く勝負にならない。
そんな時、意識を失っている獅駝王が叫んだのだ!
『聖獣変化唯我独尊!』
その直後、妖気を纏った雷が倒れている獅駝王に落ちたのだ。
徐々に獅駝王が立ち上がって来ると、その背後に二つの雷の塊が形を成していく?それは獅子と大虎の雷獣!その雷獣二体は重なり合い人型となると、獅駝王の中へと吸い込まれていく。
そして再び鎧を纏った獅駝王がそこにいた。
だが、その姿は先の獅子の獣神変化とは異なる雷を帯びた獅子と大虎の鎧を纏っていた。
美猴王「あれは…」
俺様は獅駝王の中に入った雷の妖気に心当たりがあった。あいつは間違いない!
雷獣王・雷我!!
雷我は獅駝王との戦いに敗れ死んだ後、その身は獅駝王に従う聖獣と化したのだ。そもそも雷我は二体の聖獣の王が合体した魔王だった。聖獣は主たる者と契約を果たすと驚異的な力を与えてくれると言う。俺様と鵬魔王との聖獣変化と同じである。
だが、性格に難ある雷我は誰を主とせずに自らが王となる事を選んだ。しかし自分を倒した獅駝王を主と認め、力を与えたのだ!だが、その力は強大で獅駝王を今の今まで昏睡状態にしていたのである。
だが、ついに目覚めた今!
獅駝王「俺俺、再戦!蜥蜴!もう一度喧嘩しよーぜ!」
雷で全身を纏った獅駝王がギガノに突進する。俺様と六耳彌王は気付くと同時に飛び退いた。巻き込まれる事を避けたのだ。
ギガノ「!!」
ギガノは突然の獅駝王の攻撃に殴り飛ばされる。が、直ぐに立ち上がり口から流れる血を腕で拭い、舐める。
ギガノ「今のは少し効いたぞ?今の世の強き者よ!だが、俺はお前を喰らって更に強くなろう!」
獅駝王「俺俺と喧嘩祭りだぁー!」
再びギガノと獅駝王の激しいバトルが始まった。
マジかよ?
獅駝王と、あの妖魔王一桁ナンバー最強とも言われた雷我との合体だと?
何処まで強くなるつもりなんだ?
雷の拳がギガノに直撃する。ふらつくギガノも恐気を纏った拳で殴り返す。互いにぶっ倒れるも直ぐに立ち上がり衝突する!頭を擦り付け、互いをにらみ合い、獲物から目を離さない。
一歩でも退いたら、命が狩られるような緊張感の中で、この戦いを楽しんでいた。
獅駝王「雷我にお前、本当に世界には強い奴が沢山いるよな?美猴王兄貴に付いて来て本当に良かった~」
獅駝王の掌に妖気の籠った雷が集中していく。
獅駝王「雷覇獣!」
獅駝王の放った雷撃は獅子と大虎となって、ギガノに向かって襲い掛かる!
ギガノ「!!」
雷の獅子はギガノの右腕に噛み付き、雷の大虎は左腿に噛み付いた。強烈な雷がギガノの全身に衝撃を与える。
ギガノ「グォオオオ!」
流石のギガノも膝を付き衝撃に白目をむく。
あれはあの雷我の雷だ!雷には耐性のある俺様でも、あの雷には耐えられなかったのだからな?
ギガノ「コノ…コノ…下等種ガァアアアア!」
ギガノは強引に雷の獅子と大虎をひっぺかえし、地面に叩き付けたのだ。
ギガノ「変なトリックを使いやがる…だが、効かぬ!この俺は生物最強の王者!真の支配者なのだからな!」
獅駝王「何を言ってるんだ?お前はただの餌だぞ?」
ギガノ「ナァ?」
流石にギガノも頭に来た。捕食者である自らを獲物として見る目の前の獅駝王に自らを照らし合わせる。
ギガノ「良いだろう…勝った方が、真の捕食者だ!」
獅駝王「最初からそう言ってるだろ?お前は餌だって?お前みたいな奴は極上の飯だとな!」
互いに尋常じゃない動きで衝突する。激しい攻撃が互いの肉を削り、血が噴き出す。だが、互いに削り合っているのは相手の魂!
先に心折れた方が…
喰われるのだからな!
その時、同時に突き出した手刀が互いの胸に突き刺さったのだ!
ギガノ「ゴッ…ゴゴ…」
獅駝王「ウグゥルル…」
互いに相手の心臓を掴んでいた。だが、互いに握り潰す力が出ないでいた。
ギガノ「握り…潰…し…」
獅駝王「勝つ!勝つ!勝つ!」
両者の目に光が走った!
このまま握り潰せば互いに死ぬだけだ…
ギガノ「俺は支配者!絶対に負け…」
獅駝王「喰らうぞぉおお!」
それが勝因を決めた。
ギガノは獅駝王を蹴り上げると心臓を握る手が離れ胸から手刀が抜ける。それは生きる事を優先したギガノの本能的な行動だった。
ギガノ「俺は負けん!こんな所でお前と一緒に死ぬわけにはいかんのだ!」
獅駝王「そうか…残念だったな?」
ギガノ「?」
だが、そこでギガノは青ざめた。何故なら獅駝王の手には肉の塊が握られていたから?
ギガノ「そ…それは?ま…まさか?」
間違いなく、それはギガノの心臓だった。ギガノは相手を倒す事よりも生きる事を優先し蹴りを与えて生存を選んだ。だが、獅駝王は自らの生存よりも目の前にいる強者に勝つ事を優先し心臓を握る手に力を籠めたのだ。
実力は互角だった。
生存本能と闘争本能がその判断の差が勝敗を決めたのだ。
つまり後先考えない馬鹿が勝ったのだ!
ギガノ「か…返せ…俺の…俺の…」
ギガノは口から血を吐きながら獅駝王に腕を伸ばす。
だが、獅駝王はギガノの心臓をつまみながら口を開けて喰らったのだ。
獅駝王「おぅ!これは絶品グルメだぞ?お前は美味い!自信持って残りも喰われろよ?」
ギガノは悟る。目の前にいる獅駝王は…
間違いなく捕食者だと!
そして自分が狩られた獲物。
ただそれだけだと…
ギガノ「…良いか?俺を残すんじゃ…ねぇぞ?」
獅駝王「約束しよう!俺俺はお前を一片残らず平らげると!」
そこで最後の妖恐ギガノは息絶えたのだった。
ふぅ…
何とか勝ったみたいだな?
美猴王「そうだ!!」
俺様は振り向く。
どうなった?
今、どうなっている?
牛角魔王と祝融との戦いは!?
そこでは、まだ変貌した牛角魔王と祝融が戦っていた。これもまた激しい戦いを繰り広げていた。
獅駝王「あれ?牛角兄貴か?それに相手の奴も強そうだな?」
美猴王「まさか戦いたいのか?」
獅駝王「う~~」
美猴王「どうした?」
獅駝王「あれは俺俺、やっちゃダメな喧嘩みたいだ…あれは牛角兄貴の喧嘩だからな?だろ?」
…こいつ!!
馬鹿なクセに空気を読めるのか?見直したぞ!
ん?
ムシャムシャムシャ…
見ると獅駝王は真面目な顔をしてギガノの屍を喰っていたのだ。
ダメだ…
やはり空気は読めてない…
さっきのはマグレだったようだ。
とにかく俺様達は牛角魔王の勝利を信じて見守るしかない!
牛角魔王は漆黒の肌に六本の角、更に六本の腕が生えた異形の鬼神の姿へと変貌している。その力は獣神変化より桁違いの力を持った…
『獣王無神変化』
それは俺様達が妖気を獣の血に流し込み獣神変化するのに対して、魔神族の末裔である牛角魔王は更に魔神の血と妖気を全身に廻らせ変化するのだ。
だが、この力は諸刃の剣!
このままでは牛角の奴は自我を保てず元に戻って来れなくなる。
だけどよ?
牛角魔王は俺様が錬体魔王に身体を奪われた時も身を呈して引き戻してくれた。
今度は俺様が!
美猴王「どんな事があろうと俺様が必ず引き戻してやるからな!」
…だから、お前はお前の戦いに決着を付けるんだぜ?
次回予告
再び戦いは牛角魔王と祝融との一騎討ち!
暴走した牛角魔王は妖魔王最強の祝融に勝てるのか?




