1、知らない森
・・・眩しい。
ゆっくりと目を開くと、目に太陽の光が突き刺さった。思わず目を抑えてうずくまる。
光になれ、痛みが軽減され始めたので手を外し、今度はゆっくりと目を開けてみる。
「うわぁ」
そこは、森だった。私の周りだけは短い草が生え、そのまわりでは大きな木が生えている。草の中には所々小さな花が咲いており、広がる緑のなかで鮮やかに咲く花がより、この風景を美しく幻想的にしている。
「あれ?」
しかし、少しおかしいことに気がついた。どうしてなのかは分からない。綺麗な花、力強く育った木、鮮やかな草なのに元気が無いように見えるのだ。
花をじーっと見つめる。するとその思いは、ますます強くなった。
ー泣いている・・・なぜ?元気を出して。
すると、辺りの木々が、草が、花がキラキラと輝き出した。木はガサガサと体を揺らした。花と草は大きくなった。そして、確かに聞こえたのだ。『ありがとう』と。
分からない。何が起きたのか、どういうことなのか。でも嬉しかった。『ありがとう』が。心にしみる、とても温かい言葉だった。
ふと、強い風が吹いた。とても冷たい風だ。そこで自分が何も着ていないことに気がついた。
『私をお使い。私で服を編みなさい』
『私で火を起こしなさい。貴方ならばできるはず』
『私で家を作りなさい。私の上ならば安全よ」
『私は何もできません。貴方を美しくすることしか』
「ありがとう」
『ふふふっ』
驚きの中返した返事はとても小さかった。でも、きちんと声を拾ってもらえたみたいだ。
それからは色々と早かった。木々の葉と草をもらい、服を編んだ。分からないことは草が教えてくれた。木を少し登ったいい所に、小さな家を作った。草と葉、枝で出来た小さな家。分からないところは木に教えてもらった。
探索をして、川を見つけ魚をとった。魚はとっても美味しく、お腹いっぱいになるまで食べた。
気がつくと、いつの間にか辺りは薄暗くなっていた。今日はよく分からないことだらけだったが心は温かい。
誰かに教えてもらいながら、話しながら何かをするというのは久しぶりだった。女神候補の時は、最初の10年くらいからは才能がないとほって置かれた。嫌味ぐらいしか言われなかった。こんなに穏やかな日々は本当に久しぶりだった。
こんな日々が続けばいいな・・・
ここがどういうところなのか詳しい事は分からない。たしか魔物や魔獣がいるはずだけど、今のところ見かけていない。ここは安全なのか・・・分からない・・・
いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。