2016/3
石を蹴りました。痛いから止めてくれと言われました。石を蹴りました。泣き声が聞こえました。石を蹴りました。何も言われませんでした。石を蹴るのを止めました。代わりに水の中に沈めました。煩かったです。石を蹴りました。すすり泣きが聞こえました。安心しました。
私は喉に虫を飼っています。喉元を擦り、私の声帯を食い散らかそうとその全身をくねらせています。体液を私の口内に吐き出し、私を内側から消してしまおうとするのです。それは私の喉を締め上げます。喉が虫で詰まり、声がでなくなります。虫が食べたんです。ほら、私は喉に虫を飼っているんです。
視界を過ぎる建物。私は走る箱の中に閉じ籠り、それらを眺めている。頭上で次の駅を告げるアナウンスが流れた。“私の目的地はそこではない”私は固く拳を握った。己の道も見つけ出せぬまま、私はどこへ走っているのだろう(「迷い駅」第一章抜粋(嘘))
ここで待ってる、と友人が言った。私はそれを断った。私には私の道があるからだ。だが、その先に彼らはいた。彼らは驚いた表情を浮かべた。どこへも行く必要などなかった。私はここへ行くべきだったのだ。(「迷い駅」最終章抜粋(嘘))
胃の中でくるくると何かが這っています。それは人でしょうか。私でしょうか。次第にそれは私の腹部を食い破って私を丸呑みしようとするのです。それは私になろうとしています。それは私を得ています。ならば、私を得たそれは私になるのでしょうか。私はどこへ行くのでしょうか。




