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2015/12
鏡に映るのは私の顔ではない。映るのは知らない男。それは毎晩夢見る男の顔。彼はとても端正な顔立ちをしている。その顔は、いつの日だったか私のものになった。私は私ではない顔が映る鏡に指を滑らせる。冷たい板が、唇を押しつぶす。初めて触れたあなたの唇は、あまりに冷たい。
私は私を思う。あなたがそこにいたことをまだ知っている。だがまた一つ知っている。あなたがいたことを教えてくれる言の葉は、夢のように泡となることを。愛している、唯一あなたにだけ伝えたその言葉すら忘れてしまうのが私は恐ろしい。戻ってきてください、私があなたをまだ愛している内に。




