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2015/10
2015/10
涙を流したのです。それは痛いものでしたから。どこへとも行けないものでしたから。だから私を溺れさせようと全身を浸らせるのです。酸素を求めて浮かぼうとすると、私もまた、どこへも行けないことに気づくのです。
今の日々が夢のようだと彼女は言う。僕の隣で、僕の手を握って目を細めている。僕は彼女の明るい瞳を見つめ返す。彼女の栗色の髪が風に撫でられる度に香る花の香りが好きだ。柔らかく握ってくれる小さな手が好きだ。僕にだけ向けられる安心した笑みが好きだ。目蓋を上げる。そこには僕が一人しかいない
#世界の終わりに君は いなかった。僕の夢中の君。僕の世界を一杯に照らしてくれる君という存在は映画の中にいる登場人物のようだ。「ねぇ、起きてる?」誰かの声が聞こえる。「起きてるよ」声を返す。「ずっと眠ってて、ずっと」その言葉に、僕は世界を閉ざす。君の声は、僕の声に似ていた。




