11/14
2016/10
喉が渇いた。喉奥が焼けついた皮のように伸ばされている。舌を伸ばし、彼の肌を這うと一際飢えを訴えた。私はまだ人だろうか。胃袋は獣が如く、その瞬間を乞うている。グルグルと、私の歯と歯の隙間から獣の唸り声が私の口を抉じ開けた。彼の瞳に映った獣は、どんな姿をしているのだろう。
無数の水が天井から降ってくる。水が弾ける。私の呼吸が消える。私という色が水に溶けて、落ちていく。白い衣が口から飛んでいって、自分が息をしていることを思い出す。また誰かが水を蹴って、私の呼吸を踏みつける。平らな地面の上で、私だけが雨の中に溺れていた。
触れる、話す、目を合わす。それは私を生かす。誰かが私を見ている。それは私の足が地についていることを証明している。だがある日、言葉を貰わなくなった。喉元から喋りたがりの蛇が這い出て私の言葉を奪った。耳から湿ったなめくじが耳たぶから滑り落ちて私の音を零した。私は、何も見えない。




