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氷のパズル  作者: 天青石
1/3

Piece-0 異変

「ありがとうございました〜」



店員の声をバックに、アキラは買ったばかりの「目的の品」を持って店を出てきた。


彼が出てきたのは本屋で、かなり規模の大きな、どんな本でも置いてあると評判の店。


彼はそれを聞き、どうしても見つからなかった本を探すため、はるばる隣町からここへ来ている。







彼の名前は、氷室アキラ(ひむろ あきら)


専門学校の2年生。年は17歳。性格は物静かだが好奇心は強い。


運動・勉強ともに平均的で特徴なし、その性格も相まってかあまり目立たない存在。


友人曰く「かなり偏った無駄知識の宝庫。あと先駆者かつ努力家」


教師曰く「要領はいいが努力をしない奴。目立った特徴はないが何かを感じる」







本屋から出てきたアキラは、心なしか上機嫌なように見える。


少しでも早く読みたいと思っているのか、苦労が無駄にならずに嬉しいのか。


そのため彼は寄り道はせず、さっさと自転車に乗ってまっすぐ帰路についている。




―ふと上を見てみると、時刻はもう夕方なのだろうか、空が赤く染まっている。


(なかなかキレイだな、久し振りに見た気がする…)


夕陽を見てそう思ったアキラは、空を眺めながら走ることにした。




目に映るのは、見渡す限り続く緋色の空、橙色に染まった雲、赤い太陽。


長い間意識して見ることもなかった夕日の情景に、彼は見とれていた。


ただ事故を起こさないよう、ちゃんと前方には注意を向けている。




すると突然、空を横切るようにして黒い光が走った。


それはまるで黒い流れ星のようでもあって、そして鳥の影のようにも見えた。


アキラが赤い世界を横切る影を、眼で追っていると―








―パキッ、という音とともにアキラの視界に亀裂が走った。







「えっ?」


突然の事態に、アキラは思わず声を上げた。


反射的にブレーキをかけたため、乗っていた自転車が急停止する。




(な…なんだ?)


彼は最初、目の異常か何かだと思ったが、それは違ったようだ。


アキラの周りにいた人たちも、戸惑ったように周囲を見回している。





(ヒビ?なんで?)


どうやら空だけでなく"周辺の空間すべて"に亀裂が入っているようだった。


よく見てみると、この一帯を包み込むかのようにそのヒビが広がっていくのが分かる。





(いったい、なんなんだ?)


そう彼が戸惑っている間にも、亀裂は止むことなく広がり続けて、


ヒビは亀裂となり、空間自体を割れたブロック氷のように変貌させていく。


そして空間に作られた断層が、光をめちゃくちゃに屈折させ視界を奪う。





(ちょっと、待ってよ!)


考える時間を与えないほどの、急激かつ断続的な変化だ。


それに本能的な危険を感じて、アキラは無意識の内にこの異常な場所から逃げ出そうとしたが、彼を包囲するかのように入った亀裂がそれを阻み、それを許さない。


そうしているうちにも、断層のズレが大きくなっていき…





そして次の瞬間、何かを考えるよりも早く―










「わあっ!?」


ヒビに囲まれていた一帯が、まるごと音もなく砕け散った。










「ぐうっ!」


同時に、強烈な光、音、そして衝撃がアキラを襲った。


意識が飛びそうなほど、この事象に振り回されているなか


彼は視界の端に空間と一緒に砕かれる建物、車、人間を捉えた。


それを目の当たりにして、自分もこうなるのか…と彼は悟り、そのまま気を失ってしまった。




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