プロローグ
はじめまして、よろしくお願いします。
広い、広い、無限に続くかのような空間に大小様々な天秤が、ユラユラと揺れながらひしめく様に置かれ、あるはずの向こう側の壁も見えないほど。
『ここが天秤の間ですかー』
置かれた天秤の数は百数十億にもおよぶ。
天秤の間と名付けられたその空間は、部屋というにはあまりに広かった。
『はー、いつかは僕もここの管理者になれる様頑張りますー』
巨大な扉からヒョコリと顔をだした彼は、遠くまで見渡す様に伸び上がった。
『管理者になるどころか、入る許可をもらえるまでに何千年と修行が必要だな』
彼の後ろに立っていた上司らしき者が、ため息まじりに呟く。
『おい、覗くだけだぞ、入るなよ』
『分かってますーって。でも入るだけで数千年は言い過ぎですよー、きっと僕だって頑張れば三百年くらいで、っとっとっ 』
『お、おいっ』
伸び上がり過ぎて前方につんのめった彼に驚き、とっさに捕まえようと伸ばした上司の手は空を切った。
『わっとっとっ』
入るなと言われたばかりの空間に飛び出し、よろめくこと数歩。
ガシャーーーーン
目にした光景が信じられずに呆然と口もきけない上司の前で、彼はコントの様に足を縺れさせ、並ぶ天秤に頭から突っ込んだ。
本文からは一話五千文字前後となります。